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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第一部 魔王討伐編

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新人再訓練

 サラマンダーを呼び出し得意気にドヤ顔を披露していたシルヴェリスだったが、果実酒を飲んでいたエルフィルから

「あなた……精霊召喚に詠唱しないの?」

「へ?」

 エルフィルからの指摘にシルヴェリスは間の抜けた声を上げる。

「いや、ダークエルフは知らないけど……呼び掛けないでよく来てくれると思ってね」

 エルフィルはダークエルフだから嫌味として言ったのっは無く単純に疑問に感じただけの様だ。そんな彼女にシルヴェリスは

「サラマンダーさんとは付き合い長いんですよ〜、だからすぐに来てくれる……みたいな? は、あはは……」

 頭を掻きながら誤魔化しに入っている。しかし、精霊魔法を使えるあたり冒険者登録はしていなくとも実力はあるのだろう。

「分かった。訓練所には俺も行くが訓練はシルヴェリスさんに任せる」

 自分でトマスに訓練しては先日の二の舞になってしまいかねない以上、ヴィルはシルヴェリスにお願いせざるを得なかった。

 ヴィルの話が一通り終わると話題が途絶えてしまったが、そんな折

「あの〜、ヴィルさん。俺達にも戦い方の訓練してもらえないでしょうか?」

 そんな事を言い出してきたのは新人冒険者パーティーの戦士ハーマンだった。

「俺にか? 別に暇だから構わないが……」

 勇者が毎日プータローしているのは外聞が悪いが後進の育成に励むのは悪い話では無い。件のゴブリンの洞窟の件もある。

 即戦力は多いに越した事はない。

「じゃあ私もお願いします!」

 続いて挙手してきたのは格闘家のメイリンだった。ヴィルは格闘戦には詳しくは無いが模擬戦の立ち回りなら相手になれるかもしれない。

「別に良いが、俺は剣士だから木剣くらいは使わせてくれよ?」

 そんなヴィルの発言に

「あらぁ〜勇者様は女の子相手に鈍器を使うつもりでいらっしゃいますわよ〜? あなた、遠慮なくブチのめしちゃって良いからね?」

 すでに酔っ払いと化していたエルフィルがメイリンにダル絡みしながら、彼女を元気付けていた。

「私は……訓練所で的当てでもするか」

 そう話すのは新人冒険者パーティーの魔術師カッツだ。残念ながら今の勇者パーティーは魔術師不在な為、彼の訓練を手伝える者が居ない。

「アリーナさん、私達に後衛の立ち回り方を教えて下さい!」

 次に挙手してきたのは神官のベルナデッタだ。彼女はカッツの腕を取りながらアリーナに話し掛けている。

「私では……それほど参考にならないかもしれませんよ? それでも宜しければ……」

 訓練所での新人への手ほどきなど未経験なアリーナは戸惑いながらも、後輩に真っすぐ見つめられては受け入れざるを得なかった様だ。

 こうして明日の予定が続々と決まっていくと面白くないのは斥候のエルフィルだった。

 先輩面をしようにも新人がもう居ない。また、斥候技術の需要も無い。

「こんなんじゃ明日、私に何してろって言うのよ」

 明日のフリーが確定しかけている現実にエルフィルがヴィルに尋ねる。そんな彼女にヴィルは

「冒険者ギルドに待機してたらどうだ? 今日のゴブリン洞窟の討伐隊組まれるかもしれねーし」

 干し肉をつまみに果実酒を飲みながら若干テキトーに答えるると、そんな態度が癇に障ったのか

「アンタ、馬鹿でしょ? こんな見目麗しいエルフ様がゴブリンの洞窟なんかに行ったら犯されちゃうじゃないのよ!」

「……ゴブリンにも選ぶ権利が」


ーバギィッ!ー


「んがっ!」

 ボソッと感想を口にしたヴィルに待っていたのはエルフィルからの鉄拳制裁だった。あまりの勢いに椅子ごと後ろに倒されたヴィルを横目に

「さ、アリーナ。こんな馬鹿ほっといてもう寝ましょ? 新人ちゃん達もダークエルフも来る?」

 アリーナと新人冒険者の女性陣、シルヴェリスを誘って上階の寝室スペースへと上っていくのだった。



「いててて……エルフがグーバンすんなよな」

 飛んでいた意識が戻ったヴィルが起きると女性陣の姿は無く、男性陣が気まずそうに静かに席に着いていた。

 ヴィルがふとギルドの時計を見ると時刻は既に零時を過ぎている。

「お前等もに階に上がって休んだらどうだ?」

 パーティーのリーダーな手前、散らかったテーブルをそのままにして寝るわけにはいかない。

 これをギルドの職員に見咎められてしまえば、下手すれば出禁だけでなく深夜の飲食禁止など新たな規則が作られる原因となる。

 そうなれば他の冒険者達から恨まれてしまう事になるのは想像に難くない。

 馬鹿をやる者が出る度に規則が増えていくのは、何も現実世界だけの話では無いのだ。

「それじゃ、お先に失礼しま〜す」

「すいません、失礼します」

「…………」

 新人冒険者のハーマンとカッツ、そしてトマスの三人はそれぞれ二階へと上がっていき、ヴィルはただその姿を見送るのみであった。



 自分以外誰も居なくなった一階のホールでヴィルは出来るだけテーブルの上を片付けると、椅子に寄り掛かって今後の先行きに思いを巡らせていた。

「ミリジアとミノさんの二人が…帰ってくるまで早くてもあと三日……か」

 最大の懸念材料だった四魔将も、今の時点ではやる気が無さそうではある。

 少なくともヴィルが相対したグリンブルスティとトーデスエンゲルの二人は熱心に世界をどうこうしようという意志が感じられなかった。

 残る四魔将のリリスがどんな相手かは分からないが、今の状態ならミリジア達と合流次第、魔王城に突撃して迅速に魔王を倒してしまった方が良い様な気がしてきた。

 下手に魔王達に時間を与えるよりこのまま一気に攻めきってしまった方が良い。

 明日にはこの事をエルフィルとアリーナの二人に伝えて、納得して貰おうとヴィルは一人予定を立てるのだった。

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