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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第一部 魔王討伐編

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単独行動

 教会でのミサを終えたヴィル達は魔物のクロを先頭にトマスの捜索を始めた。

 太陽は高く昇っており世間一般的には仕事に繰り出していて良い時間ではある。

 ここ数日、仕事も取らず街で過ごしているが気分的にはあまり良い物では無い、なんだかプータローになってしまった錯覚に囚われる。

 冒険者ギルドに顔も見せず、自分の魔物達もほったらかしなテイマーのトマスは一体どこに行ったのか。

 当て所なくヘレハウンドのクロが赴くままブリムフォードの街を歩くヴィル達は

「本当にお前、トマスの匂い追えてるのか?」

「ワンッ!」

 ヴィルの疑問にクロが元気良く答える。尻尾を振ってアリーナに寄り添ってるのを見るに、誰がテイマーなのか分からなくなる。

街中をトマスの匂いを頼りにあっちにフラフラこっちにフラフラしていたクロは、いつの間にか街外れの東口の出口まで来てしまっていた。

 この先は牧草地帯と畜産業を営んでいる何件もの農家とその先の草原に続いているだけだ。

(トマスの奴、街の外に行っちまったんじゃ……?)

 ほぼ街の外と言っていい場所に一人でノコノコ出て行く向こう見ずとは……考えられなくも無い。

「あいつ、一人で何しにこんなトコ来たってのよ〜!」

 クロが、匂いを辿って両サイドに柵が立てられている農道を歩いている後を追いながらエルフィルがヴィルにボヤいてくる。

「……俺が知るかよ」

 トマスには最低限の報酬は払っているからわざわざバイトをする程の金コマでは無い。

 しかし、わざわざ農地まで来てトマスが何をしたのかなどヴィルに心当たりがあるはずも無い。少し歩くと羊飼いらしき一人の老人が農道に立っているのが見えてきた。

「おや、お前さん方も助けに来てくれたんかのぅ?」

 何の話か分からないヴィル達だが、そんな老人にエルフィルが

「何の話? あたしらは人探してるだけなんだけど?」

 首を傾げながら彼に聞き返している。

「そうなんじゃ……。あの子達だけで大丈夫かのぅ……」

 エルフィルの反応に老人は落胆した様子を見せる。

「あの……何かあったのですか?」

 老人の様子が気になった様でクロ達にじゃれつかれているアリーナが尋ねる。

「ついさっき、ゴブリンがでてきおってのう。追い払おうとしとったら冒険者の子達が通りがかってくれてな」

 老人は農道の先を見ながら事の顛末を語る。彼が言うには、羊を牧草地に移動させている最中にゴブリンに襲われたというのだ。

 そんな彼が牧羊犬と一緒にゴブリンを追い払おうとしていたところ、冒険者らしいパーティーが手伝ってくれたというのだ。

 その後、なんとかゴブリンを追い払ったものの、その冒険者達はゴブリン達を追って街の外へ行ってしまったらしい。

 ここまで聞いて、目当てのトマスとは関係なさそうだと考えていたヴィルだが

「なぁ、爺さん? こんな感じの……」

 冒険者パーティーと聞いた時点でトマスは関係ないだろうと踏んでいたが、念のためトマスが関係していないか老人に彼の特徴を尋ねてみる事にした。すると

「おお、その子は確か勇者パーティーの一員だと言うとったな。なんだか皆に頼りにされていた様じゃが……」

老人の話はイマイチ腑に落ちないがトマスが単独では無く、どこかの冒険者パーティーと行動を共にしているらしい事が分かった。そして、彼等が逃げるゴブリンを追っていったらしいという事も。

「アリーナ、エルフィル。急いで後を追うぞ! アリーナ、クロにトマスの匂いを追わせてくれ!」

 トマスの行動に背筋の凍るものを感じたヴィルは半ば焦りながら、アリーナとエルフィルの二人に声を掛ける。そんな慌てかけているヴィルに

「どーしたのよ、たかがゴブリンじゃない。そんなの初心者でもじゅーぶんでしょ?」

 エルフィルは呑気に手をピラピラと振りながら大した事無いとアピールしている。

 確かにゴブリンは取るに足らない弱小モンスターかもしれない。だが、ヴィルの気掛かりはそこでは無い。

(もし、まかり間違ってトマスがレベルアップしちまったら……俺が詰む!)

 現在のトマスの経験値は65534。経験値一つでレベルアップするというのはヴィルの予測でしかない。

 ただの杞憂であれば良いのだが、実際にレベルアップした場合の取り返しがつかなさ過ぎる。

【全種族絶対隷属】

 これが今のトマスが王手を掛けているスキルなのだ。

 これをトマスに取得されたら、彼からヘイトを溜めまくっているヴィルがどうなるかなど説明の必要は無いだろう。

「ヴィルさん、こっちです! 急ぎましょう!」

 クロの様子を見て行き先を皆に伝えるアリーナの声からも緊迫感が伝わってくる。

 どうやらヴィルが焦っている事を汲んでトマスの身にが危険が迫っていると感じているのかもしれない。

「全く……ゴブリン相手に何を慌てて……」

 二人の後を駆けるエルフィルだったが温度差を感じながらも

「クロ、付いてきなさい! あんたの主人はこっちで良いんでしょうね?」

 斥候としてパーティーの目となるべくクロを従えて先頭に躍り出た。

「アリーナは二匹をはぐれないように見ててやってくれ!」

 急がなければならない今のこの時にペン太とモン吉……特にペン太の足の遅さは致命的だった。

 ヴィルはアリーナに指示を出しつつエルフィルとクロの後を追い農道からの平原を駆けるのだった。

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