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魔法使いフェイ  作者: 川木
ムーリア村
81/202

80 薬草摘み

 そのまま抱き締めあいながら眠り、翌朝目が覚めた。母屋に顔を出すと朝ごはんを用意してくれた。

 昨夜のおかげか、今までたまっていたものがなくなり、比較的落ち着いて接することができた。


「リナ、ほら昼飯だ。フェイ君と一緒に食べなさい」

「うん、ありがとう。お父さん。……元気でね」

「おう」


 旅をすることは伝えている。となればなおさら、ここに帰ることは難しくなるだろう。それでも父は、リナがこの村を出るときと同じく、あっさりと、笑顔で見送ってくれた。

 それもリナを思ってのことだと、今日は素直に受け取れた。


「じゃーねー!」

「元気でなー」


 他数人、昨日夕食を共にした友人にも見送られ、二人は村を出た。


 しばらく歩いてから、歩くとやはり時間がかかる。空を飛びたいが、どうすれば迷わずに飛べるか。昼頃まであーだこーだと言いながら歩き続け、昼食をとりながら話をまとめた。

 リナの父がつくったお弁当は、美味しかった。

 それだけは確実に変わらない、いや、今まで以上に、美味しかった。変わらず、けれど時間の経過も感じられ、リナは微笑んだ。もう、昔のままではない。少なくともリナには、フェイがいる。


「さて! それじゃあさっさと、ベルカ領へ行きましょうか」

「うむ!」


 空を飛ぶにあたり、フェイの全力ではもはや地面が見えない。低い場所を高速で飛ぶと鳥なんかにぶつかる可能性もあり危険なので、高い所を飛ぶことになるので尚更だ。しかし道に迷わないためにはやはり、道なりに進むのが一番だ。

  と言うわけで、スピードはほどほどにして、足下5センチほど浮いた状態で進むことにする。これなら少なくとも道を見失うことはない。端から見たらかなり異様だが、魔法を使うことに慣れているリナにはもはや自然に思えた。もともとフェイの魔法のすごさも別に隠しているわけでもない。

 あまり見せびらかしてまわって、ドラゴンの時のように騒がれ過ぎてもやっかいだとは二人とも思っているが、どちらかと言えばフェイの凄さは見せびらかすのが目的でもある。なので躊躇はない。

 手に手をとって浮かび上がり、スピードをあげていく。

 

「わっ、地面が近すぎるのも何だか、変な感じね」

「そうかの?」


 足のすぐしたを流れていく地面は、何となく触れそうな気がして、リナは足をひいて空中に座り込む。空中にいるのも慣れてきて、もはやバランスをとるのも容易い。今なら逆立ちもできる。やらないが。


「もう少しスピードをあげてもいいかの?」

「いいわよ。前に全力で走った時程度ならオッケーでしょ」

「そうじゃな」


 スピードを出しすぎて迷ってしまっては本末転倒で、逆に時間がかかってしまう。早くつくためには遅いかもと思うくらいでいいだろう。と言うのが二人の結論だ。

 もちろん、身体強化された二人の全力は馬が全力で走るよりも早い。さらにそれが休憩を挟んだり疲れたりすることもなく魔法でのんびりした心地のままのスピードなのだから、尋常ではない。


 そんなことまで考えず、基本的にのんびりやの二人はほやほやとのんびり日向ぼっこ気分で移動した。

 後日、遠目や通りすがりに二人を目撃した者から、二人組の幽霊が物凄いスピードで彷徨いていると噂になったが、すでに通りすぎたフェイとリナにはかかわりあいのないことだった。









「おっと、村が見えてきたわ。危ないからそろそろスピード落としてね」

「うむ、わかっておる」


 途中、人とすれ違う時は余分に大回りして避けたが、村が見えてきたと言うことは、人がいるということだ。茂みから人がでてきてぶつかりでもしたら大変なので、スピードは落とした。2時間足らずでシーラン村の隣へついた。徒歩で1日かかる距離だ。リナには地元なので早さがよくわかって、改めて呆れた。


「まぁ、ここは普通にスルーして、この調子なら、1日あれば元のルートに戻れるわね」

「そうか、では思ったより外れてはいなかったのかのぉ?」

「いや、普通なら結構……まあでもそうね、あのスピードにしてはそれほどじゃないわね。フェイ、まっすぐじゃなくてめちゃくちゃに飛んでたんじゃない?」

「うーむ、ルート通りに進んだはずなんじゃがの」


 道は見えなかったので完全にフェイの感覚で、頭の中にあるうすぼんやりしたルート全体図に従って進んだので、一応ちゃんと進んだのだ。後退しなかっただけ、まだましだと評価してほしい。


「はいはい、別にいいわよ。舵をとるのはあなただもの」

「ううむ、まぁ、任せよ。もう同じ失敗はせんからな」


 村を出て、少し歩いてからすぐにまた飛行する。

 そうしていくつかの村を越えて、今度こそまっすぐに目的地へと進んでいった。


 夕方頃には予定地だった街へ到着した。さすがにずっと周りの様子に集中していたからか、目が疲れた。フェイは目を擦った。

 小さめではあるが街であるだけはあり、複数の見張りとそれなりの往来があった。おかげでごく普通に二人が飛んでいたのは見られて奇異の目で見られたが、別に気にすることもない。門をくぐるときには尋ねられたが、普通に魔法で飛んでいたと答えて50ランクのカードを見せたら納得された。


「あら、眠い?」

「うーむ」

「この移動だと、私も道見てるとは言っても、ほとんどフェイ頼りだものね。しんどいなら、おぶりましょうか?」

「いや、そう言うのではない。体は疲れとらんし。慣れておらんから、ちと目が疲れただけじゃ」

「そう?」

「うむ……まぁ、どうしてもと言うなら……い、一緒の布団で寝るとか、したら、わしの疲れもとれるやも知れん」

「……まぁ、いいけど」


 フェイは別に非常識なことを言ってるのではない。年齢と性別を考えれば、とても無邪気で微笑ましいではないか。昨日の人恋しいと言ったのもあながち言い訳ではなく、本音も入っていたのだろう。

 問題があるとするなら、リナがドキドキして寝付けないかと言う心配だけだ。なので全く問題ない。


 宿を決めて夕食を終えて、部屋に行って体を清めて、ベッドに入る。さっそくとばかりにフェイはリナと共に布団に入った。


「リナ、抱きついてもよいか?」

「……許可とらなくたっていいわよ。まだまだ、たまってるでしょ?」


 いいよ、と許可を出すのには照れがあって、そんな可愛いげのないことを言ってしまったが、フェイは意に介さず嬉しそうに抱きついてきた。

 フェイにとってリナはいつでも美人で可愛いので、多少回りくどい言い方をした程度では全く気にならないのだ。


 抱きついてくるフェイに、気持ちを改めて認めたリナとしてはやはりどきっとしてしまう。

 フェイはその反応に、昨夜は話すことに緊張しているのだろうと思った。今日は勢いよく抱きついたから、体がびっくりしたのだろうと思った。基本的にリナに疑問を持つことはない。


 そしてそのまま、揺りかごの中の赤子のように安心した顔で眠りについた。それを見届けると、その可愛らしい顔に、やっぱりフェイは可愛いなぁととろける笑みをリナは浮かべる。


 フェイは可愛い。格好よくて好きで堪らなくて恋しているけど、可愛くて好きで堪らなくて愛してる。フェイの可愛さを見ていれば、どきどきよりも母性愛が優って、リナも穏やかな気持ちで眠りについた。









「そろそろお腹すいてきたわね。次の村でお昼にしましょうか」

「うむ、そうじゃな」


 順調に進んでいた。この調子ならもう一週間でつくだろう。急ぐ旅でもないが、のんびりする理由もない。特筆することのない村々の地域なので、適当に食べて次にいこうと思いながら、スピードをゆるめてから地面へ降りた。


「さて、確かここはムーリア村じゃったな」

「せーかい」


 リナはよしよしとフェイの頭を撫でる。ついさっきも話していたので、馬鹿にしているとすら思える簡単な問題だが、フェイは素直に胸を張った。


 村では珍しくないが、よそ見をしていた見張りは特に二人に飛んでいたことを問いただすこともなく通した。面倒がなくていい。


「すみません、食事したいんですけど、食堂ってどこですか?」

「ああ、それなら」

「待ちなさい!」


 見張りに道を尋ねると、その返答を受けるより早く怒鳴り付けられ、フェイはびくりと振り向きながらぎゅっとリナの手を握った。

 村の中から走ってくる子供と、それを追いかける大人がいた。


「エイダ! 待ちなさい!」


 エイダと呼ばれた少女は少しの躊躇もすることなく、村の外へと駆け出そうとするが、そうはいかない。見張りがすくいあげるようにして、エイダを抱き上げた。

 脇の下を掴みあげられ、エイダはばたばたと手足を動かして抵抗する。追い付いた男性は膝に手をついて大きく息をつく。


「はあっ、はぁ、あ、ありがとう、クラーク」

「いんや。で、どしたんだ?」

「離してよクラーク! 私! 今すぐ薬を取りに行かなきゃいけないんだから!」

「薬ぃ? 何だか知らんが、子供が外に出るには危ないぞ。そうそう、ちょうど冒険者がきたとこだ。薬草つみくらい依頼したらどうだ?」


 話をふられて、フェイとリナは顔を見合わせた。









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