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魔法使いフェイ  作者: 川木
トウデイ街
154/202

153 お小遣い制

「むむむ」


 お小遣い制が導入された翌日、フェイは値札とにらめっこしていた。ポケットの中で昨夜両替した1000R分のお金だけが入った、リナから渡された財布をちらと開いてみるが、当然金額は変わらない。

 

 リナは魔法使いの国と呼ばれる、マーギナル国への経路を調べるため、地図を買いにいった。暇なのでフェイもこうして出てきた。


 夜とはまた違い、屋台は布がかけられ人がいなくなっているが、変わりに普通に商店が開かれていて、飲食以外のお店も多く目につく。

 そこでフェイの目に止まったのは雑貨店。開けられた窓越しに、虎を模して綺麗に着色された石像につられて店に入った。


 りりんと涼しげなドアベルと気だるげな主人の声に迎えられ、フェイはきょろきょろと店内を見て回り、異国情緒溢れる品々に購買意欲が刺激されたフェイは悩んでいた。


「うーむ」


 陶器製の壺なんかは細工は見事だが、買おうとは思わないのでスルー。その他綺麗なタペストリーや、可愛らしい持ち手のフォーク、髪留めや、布製の小物入れをしげしげと持ち上げてみたりして。

 そうして値段が1000を越えてしまうのは仕方ないから諦める。


 赤くてリボンのついた帽子は可愛いけど所持金の3倍でも足りない。それに帽子は場所を取る。

 購入可能なのは、布製の小物入れだ。手のひらサイズの小さくてぺったんこなつくりなのだが、口を開くと、口元に金属製の何かがはいっているようで、手を離すと勝手に口が閉じるのだ。


 普通に紐でとじる小物入れならこのサイズはもっとずっと安いが、そうした仕組みがあるからだろうが800Rとちょっといい値段だ。でも小銭入れにちょうどよさそうだ。柄も海をイメージしていて涼しげでいい。


 だけどもうひとつ、気になるのがある。

 紐なのだけど、赤い綺麗な紐が細かく編み込まれて、小さな花のようになっている。ただの飾りなのだろうけど、とても可愛い。作りが細かくて見てると何だかわくわくする。お値段びっくり1000R。ただの紐なのに。


「むぅん」


 昨日までなら余裕で両方買っていたし、特に高いとも思わなかっただろう。しかし今となっては高い。半額になってくれたら両方買えるのに。どちらを買おうか。


「……うーむ、むぅ、むぅ」

「おーい、坊っちゃん。いつまで悩んでんだ?」


 一角で頭を抱えるフェイに、カウンターにいた店主がいつのまにかはたきを持って隣に来ていた。


「む。すまぬ。邪魔だったか?」

「そこまでは言わんが。なんだ、彼女へのプレゼントか?」

「む? ……ふむ。なるほど。それもよいの」


 自分がどっちが欲しいかとなればどちらも欲しい。しかしリナにどちらをあげるか、ならまた選ぶポイントは違う。


 リナにあげるならば、実用性が重要だ。つまり小物入れ一択。フェイは小物入れを手に取り直した。


「うむ。そうじゃ。彼女へのプレゼントにするんじゃ。これにしよう。包んでくれ」

「それかぁ? お前さんの年齢なら、もっと可愛らしいものにすりゃいいんじゃねーか?」

「むぅ? そうか? ではどれがよいかのぅ?」

「そりゃ、こう言う花柄とか」

「うーむ。そうじゃなぁ……」


 他に客はなく、よほど暇らしく店主とあーだこーだ言いながら他の小物入れの布の柄を見比べた。

 最終的には白地に黄色の花が刺繍された小物入れを選んだ。刺繍の分、お値段がちょっぴりオーバーしたがおまけしてくれた。ひげ面なのにいい店主だった。


 フェイはご機嫌で財布を空っぽにして宿に帰った。雑貨店に入るまでにも時間をかけていたので、すぐに帰ったがすでにリナは戻っていた。


「お帰りなさい」

「うむ。ただいま。リナもおかえり」

「ん? ふふ。ただいま」


 フェイの返しに、リナは一瞬きょんとんしてから微笑んだ。机の上に地図を広げていて、何やらメモも置いてある。


「経路かの?」

「ええ。一応、後からフェイにも見てもらってから決めるつもりだけど。今説明してもいい?」

「うむ。頼む」


 向かい合って椅子に座って、リナが地図上で指を走らせながらする説明にふんふんと頷く。

 マーギナル国は思っていた以上に距離がある。ここは国の端にあたるが、そこから王都を越えて反対側の向こうにある国だ。


 そうは言っても、フェイの飛行が使えるのだ。半月かからずに着くだろうと予想をたてて、立ち寄る街、ルートを指し示していく。


「で、マーギナル国、と言う感じね。せっかくだから、ここからもう少し進んだ、王都まで行こうかと思うんだけど、どう?」

「うむ。その方が、より魔法が盛んじゃろうし、よいと思うぞ」

「よね。ルートはどう?」

「問題ない」


 即答するフェイにリナは苦笑する。本当に考えて返事をしてるんだか。


 リナはさらに王都までのルートもざっと見積もる。と言ってもとりあえず国に入るまでのルートは確定しているし、そちらは急ぐこともない。


 とりあえず、このあと昼食をとって、午後からさっそく出発することになった。

 二人の旅の利点は、馬車などを使わなくてももっと早い移動手段を自由にできる点だ。なので馬車がでる日時にあわせなくていい。

 逆に言うと、のんびりする空き時間は意図的に作らない限りないが、のんびりしすぎる船旅の後なのでちょうどいいくらいだ。


「では、食べ納めとして、新鮮な魚料理を食べておくとするか」

「私は牛肉がいいわ。船ではずっと鳥だったし」

「それを言うなら、野菜も少なかったの。サラダも食べたいところじゃ」

「! そ、そうね。サラダもね」


 頭の中ではお肉一色だった肉食獣リナは慌てたように相槌をうつ。危ない。危うく乙女であることを忘れるところだった。


「む、そうじゃった。リナ、これを」

「ん? え、なになに?」


 席を立ったところでフェイがポケットから小さな袋を取りだし、地図を丸めていたリナはそれを見て、地図を放り出して瞳を輝かせて、差し出された小袋を受けとる。


「うむ。プレゼントじゃ」


 得意気なフェイにお礼を言いながら中身を取り出す。力をくわえるとぱかぱかと口が開く小物入れだ。可愛いらしい。


「へえ、どういう仕組みなのかしら。ありがとう、フェイ。でも、急にどうしたの?」

「うむ。」


 にこにこ笑顔のリナに、フェイは笑顔で経緯を説明する。2つ欲しくて迷ったけど、リナならこっちがいいかな、なんて。みたいな。


「そうだったの」


 相槌をうちながら、しかしリナは内心あれと首をかしげていた。

 要するにフェイは最初自分が欲しくて買いたかったのに、買うものを決めるが為にリナへのプレゼントとしたのだ。

 それって途中から買うと言う行為そのものが目的にすりかわっているのではないか。何と言うか、究極的に無駄遣いなのでは。


「……フェイ、プレゼントしてくれて、ほんとにほんとに、嬉しいんだけど、その、無理して買わなくてもいいのよ?」


 プレゼント自体は本当に嬉しいし、ある意味自分が欲しいと言う気持ちより、リナにプレゼントしたいと言う気持ちが勝ったとも言える。

 でも何というか、お小遣い制にした翌日から使いきらなくてもいいのに。


 無駄遣いに関しての認識は、まだまだこれから気持ちを切り替えていってくれればいいのだし、怒るようなことでもないのだけど、ちょっぴり心配になる。

 これ、リナが止めなければ、どんどん散財していってたのではないだろうか。


「む? 別に無理などしておらんぞ? リナに喜んでもらえれば、それより嬉しいことはない」

「フェイ……ありがとう。本当に嬉しいわ。ええ、嬉しいんだけど、お願いだから、これからも迷ったときはとりあえずプレゼント、みたいにむやみやたらと買ってくるのはやめてね」


 気持ちは本当に嬉しいが、単純なフェイら釘を刺しておかないと、プレゼントだけで大荷物になるほど買ってきてしまうかも知れない。


「む? うむ。わかっておるよ。荷物になるようなものは買わんよ」


 リナの心配をわかっているのかいないのか、フェイはうんうんと頷いた。


 より不安を誘うが、しかしあまりくどく言うと、まるでプレゼントが迷惑みたいだ。けしてそうではないし、とりあえずこの辺でやめておくことにした。


「お願いね。でも、この小物入れはありがたく使わせてもらうわね。ほんとに、ありがとう」


 リナがはにかんで、本当に嬉しそうに言うので、フェイはリナの念押しにも、プレゼントを嫌がられてるのかななんてネガティブな発想に至ることはなく、嬉しそうな顔で応えた。


「うむ。では、そろそろ食事にしようではないか」

「そうね」


 そうして改めて、昼食となった。

 食堂へ向かうと、お昼近い時間なので、混雑しだしている。


 ちょっと慌て目に食事を終えて、荷物をささっとまとめて宿を出た。


 フェイが頼んだサラダを慌てたように、リナがつついていたがそれはどうでもいいので省略する。


「こっちじゃったな」

「そうよ」


 門から少し離れたところで手を繋ぐ。すでに魔法使いがいる地域なので、飛んでも問題ないだろうが、人が多いところでは万が一ぶつかっても危ない。

 安全を期して、少し離れた地点から空へ浮かんだ。それでもやはり、まだ魔法使いが珍しいのか、通りすがりの馬車から人が乗り出すようにフェイたちを見ているのが、上空から見えた。


「思ったより注目を浴びてるみたいね」


 向こうの大陸ではおとなしく、人の目がなくなるまで自重していたが、こちらでも大して変わらないようだ。リナは頬をかきながらフェイをみやる。


「うむ。そのようじゃな。まあ、進めば進むほど、魔法を使うんじゃろうし、問題ないじゃろ」


 フェイは気にせず、リナの手をつかむ力を強くして、ぐんと前へ進む為に魔力を込めた。









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