136 いちゃいちゃする ※
性的な描写がありますので苦手な方はご注意ください。
脱がす、と言われてフェイは困惑する。共に入浴するのは珍しいことではないし、着替えだって気にせずしているが、この状態で肌をさらす意味がわからないし、唐突すぎて恥ずかしい。
「な、なにゆえ……?」
「えっ、いや、そう言う、ものだし。もうっ。恥ずかしいんだから、突っ込まないでよ」
「う、うむ。すまぬ」
恥ずかしいし、理由はわからないが、しかしリナがそう言うならそうしよう。この件に関して話し合ったことはないが、いつもリナは色々なことを知っていた。これについても、知っていると言うなら先達に従うのに是非はない。
「じゃあ……」
「う、うむ」
リナがそっとフェイの衣服に手をかけて、上半身があっさりと裸になっていく。せめてもの抵抗に視線をそらすフェイに構わず、リナは黙って手を伸ばす。正確に言うと、声をかける余裕がないのだ。
自分がされるのだって、どきどきして思考回路がショートしそうだった。しかし自分から動かなければならないとなれば、受け身のままではいられない。
フェイのことを気持ちよくさせてあげたいと言う奉仕精神と、ただただ自分が触ってみたいと言う欲求とに挟まれて、フェイの心の機微にまで心を配る余裕がない。
「っ」
そっと触れた、その瞬間、興奮する脳みそのはしっこで、リナは言い知れぬ違和感を感じていた。それがどうしてなのかわからず、動きがとまる。
「……?」
じっとするリナに、フェイが恐る恐るリナへ視線を戻す。今度はリナがその視線から逃げるように下げて、はっと、その違和感に気づいた。
そう、リナは生涯気づかなくてもいいことに気づいてしまった。
フェイの胸が、リナより大きいと言うことに、気づいてしまったのだ。
自分の裸をまじまじと見ることなどないし、見るからにフェイが大きい、と言うほどでもないので気づかなかった。いや、今までは無意識に目をそらしていたのかも知れない。
しかしこうして、手で触れて、包んで、気づいてしまった。気づいてしまえば、比べればリナの胸が改めて小振りであることを自覚せざるを得ない。
「ぐ……ぐぅぅ」
く、悔しい。言い知れぬ敗北感が、リナの興奮を越えて声をもらさせた。
まだ成人前の、成長期と言えるフェイと、成長期を終えて身長もすでに伸びていないリナ。今後の展望を考えると、パッと見てわかるくらいに差ができる可能性がある。
できたから、どうだと言うのだ。フェイはリナの胸など関係なしに愛してくれているのだ、とは思っても、しかしそれとは関係なく、ものすごく、悔しい。男の子っぽくて、年下で、自分より背の低いフェイに負けているなんて。
「ど、どうしたんじゃ? もっと、リナの好きなように、して、いいんじゃよ?」
突然の停止の後の唸り声に、フェイは戸惑いつつも、リナを促した。
「!」
恥じらいつつも上目使いにそうすすめてくるフェイに、リナはときめき、嫉妬をやめた。
悔しさよりも、フェイの胸への性欲が勝った瞬間であった。大きくていいではないか! 大きい方が、揉みがいがある!
そう開き直ったリナはフェイの胸を存分に楽しむことにした。
そこからはもう夢中だった。その自分にない感触と、フェイの可愛い反応、そして脳にまでひびくフェイの声。
リナはフェイの隅々まで味わうように、気づけば手だけではなくその口でも全身味わい、フェイにできる限りの快感を与えた。
○
「……んむ、む?」
寝返りをうって、フェイは目を覚ました。顔をしかめながら目を開けると、リナの姿があった。フェイはリナに抱き締められて眠っていた。
「むぅ……う?」
起きようとして、異変に気づく。何故、自分は全裸なのだ。
「!?」
そして眠る前のことを思い出す。リナといちゃいちゃして、そのまま寝たのだ。太陽は沈んでいるが、まだ夜中と言うには早い時間だ。外から僅かに喧騒も聞こえる。
リナの寝顔を見ながら思い出してしまう。訳がわからなかったが、何だかおかしな感覚を気持ちいいと教えられて、その気持ちよさから何だかおかしくなってしまって、頭が真っ白になった。そのままリナに抱き締められたのは覚えているが、すぐに疲れて寝てしまった。
何だか、とてつもなく恥ずかしいことをしてしまった気がする。
「……」
だけどそれと同時に、ドキドキしてしまって、フェイは右手で胸を押さえた。
裸になったことで、今まで以上に全てをさらけ出したような気持ちになった。それが無性に恥ずかしいのだが、嫌な気分ではなかった。
ぬるぬるしていて、頭では気持ちが悪いと思うと共に、えもしれぬ感触とどうしようもない興奮で、頭がおかしくなりそうだった。だけど嫌悪はなくて、むしろ、もう一度したいくらいだ。
「っ」
そこまで考えてから、顔に集まった熱を自覚して、フェイは自分の頬を左手で軽く叩いた。
恥ずかしいから、考えるのはよそう。今日はもうおしまいだ。お腹もすいてきた。
フェイは熱をはらってから、リナの肩をつかんで揺らした。
「リナ、起きよ」
「ん、んー……ふぇ…フェイぃ」
「うむ。私じゃ」
「んー……? んんっ!? ……お、おはよう」
比較的あっさり目を覚ましたリナは、フェイの顔を見てぽっと頬を染めた。その顔を隠すように、左手を頬にあてながら起き上がった。
「うむ。しかしまだ朝ではないぞ。夕食の時間じゃ」
「ん。そ、そう。……あの、フェイ。私、ちょっとその、夢中になってたんだけど、ひいたりしてない? 大丈夫?」
「む? う、うむ、まあ。別に、問題ない。と言うか」
そんな話をすると、フェイはまた体が熱くなるのを自覚した。身体中が熱くて、むずむずした。
フェイは無意識に口のなかにたまった唾を飲み込んで、そっとリナの腰辺りでだぼつく衣服の裾を右手でひいて、視線をはずした。
「その、夕食を食べたら、もう一度、せんか? 明日は、休みじゃし」
「……ええ。そう、しましょうか」
夕食の味は、よくわからなかった。
○
そして長い夜を一緒に過ごした。
「んぐ」
お互いに快楽の虜になったかのように夢中になっていたせいか、夜中、喉の渇きでフェイは目を覚ました。
口の中がなんだか気持ち悪い気がして、起き上がったフェイは隣で寝転がっているリナの布団までめくれて半裸があらわになったことに慌てて掛布団をなおしてそっと寝具から出た。
当然自分も裸であるが、体はまだ火照っているようで気にならない。手洗いをしてうがいもする。そして水を飲んでようやくすっきりした。
考えたらリナとたくさん唾を交換したので、今思えば少し気持ち悪い。しかしどういうわけか、気持ち悪いのだけどその時のことを思い返すとドキドキしてしまって、それだけではない別の感情もでてしまう。
「うーんぅ」
寝具に戻ると、リナはぐっすり眠ったままだったがフェイが入ってくる動きが伝わったようで、むにゃむにゃ言いながら仰向けから転がってフェイを向いた。
「……」
起こさないよう、中途半端な態勢でじっと待つと、またすやすやと規則正しい寝息をたてだした。フェイはふっと思わず愛しさから笑みを漏らしながらそっと隣に潜り込む。
顔をよせればすぐに口づけられそうな距離で、何度もキスをしているのに、少しドキドキしてきてしまう。
寝ていると可愛らしくて、ぎゅっと抱きしめたくなってしまう。なのでためらわずそっと、リナを抱きしめてみる。
リナの体は汗のせいか少しべたついている。そういえば自分も舐めたりして、唾だって残っているかもしれない。そう考えると、やっぱり少し気持ち悪い。
だけど不思議だ。リナであると言うだけで、抱きしめていることになんの不満もない。むしろもっとずっと、このままでいたい。理屈では汗や唾で汚れている気がするし、実際なんだかじっとりしているのに、リナと合わせた肌はむしろ心地よく安堵感すら感じられる。
そうしていると、またすぐ眠気がやってきた。
「リナ、おやすみなさい」
そう呟きながら、フェイは気だるさや快感の余韻の中、改めてリナへの愛しさを胸に穏やかな気持ちで眠りにつくのだった。




