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魔法使いフェイ  作者: 川木
ワーガスト街
136/202

135 旅の目安は

後半、○記号の後から性的な描写がありますので苦手な方はご注意ください。

「残念だったわね」

「うむ……じゃが、まあ、宿は決まったし、とりあえずはよしとするとしよう」


 釣りについては漁師の手伝いと言う依頼がいくつかあったので、これはいつもあるな、とちょっとテンションあげて、教会内のシスターにおすすめの宿を聞いて宿へ来た。


 宿自体は問題なく、聞いた通り食堂が付近に複数あり、教会にも近いが裏通りのため値段は手頃となかなかの好物件であった。

 しかし宿の女将にもののついでと聞いた海事情によると、海に遊びのために入るには時期があり、春を過ぎて暑くなり出してから入るのが一般的だと言う。禁止されているわけではないが、寒さの問題と、冬場は毒性をもつ泳ぎ蛇が浅瀬を占拠していて危険だからだと言う。


 無理をして入れなくはないが、他の誰も入っていないところに無理矢理入っても悪目立ちするし、危険である。現在は春になったところなので、もう一ヶ月ほどすれば泳ぎ蛇がいなくなり、泳げるようになる。


「そうそう。だいたい、一ヶ月くらいならすぐだもの」

「うむ。それまでは魚を満喫しつつ、その次の目的地を決めるとするか」

「あら。もう出るときの話?」


 フェイは荷物を置いてベッドに寝転がりながら言ったので、今地図を見て話そうと言うわけではないのはわかったが、それでも気が早いなとリナは思った。

 ベルカ街では何の予定もなくだらだらと滞在したのだから、それに比べたら初日から出発のことを考えるなんて早すぎると言ってもいいくらいだ。


 とりあえずフェイのベッド側に向いて、自分のベッドに腰かけてリナは相づちをうつ。荷物の整理はいつでもいい。


「やはり、色んなところに行ってみたいからの。だらだらして、慌てて飛び出すよりは、ある程度決めておきたいの」

「ふぅん? まあ、いいんじゃない? なら、期限はどうしましょう。基本3ヶ月で、気に入れば延長してもう3ヶ月くらいとか?」

「そうじゃの。3ヶ月あれば、気になることもだいたいできるじゃろうし。それくらいを目安としておくか」


 どうしても移動をするのも時間がかかる。色々見たいと言うなら、離れたところへ行きたいと言うのと同義でもあるのでより時間がかかる計算になる。

 ならば一ヶ所に数年単位でいては、人生をかけても世界をまわることはできない。世界単位でなくても、そもそも死ぬまで旅をする予定もない。かといって短すぎれば、移動ばかりでせわしないばかりだ。3ヶ月から半年は妥当なところだろう。


「じゃあ、それで一応決定、と。次の目的地は、どうしようかしらねぇ。端っこまできたし、北か、南か」

「北は年中雪が降っておるらしいの」

「ん? そうらしいわね。いや、でも年中って言ってもあれよね? 夏はないわよね?」

「いや、年中と聞いたことがあるぞ」

「えっ、だって夏よ? 夏に雪がふるとか聞いたことないわよ?」


 リナの故郷では滅多にはないが、アルケイドでは雪がふることは年に一回くらいはある。なので雪の存在自体は知っている。

 ベルカ街も同じくらいで今年は雪は降らなかったが、雪と言って通じないことはない。フェイも雪の一応知識だけではなく触れたこともあるが、実際にあちこちをまわるのは初めてで、各地の地理や天候にそこまで詳しいわけでもない。


「む? むぅ。わしもそこまで詳しくはないのじゃが、少なくとも雪景色がなくなったりしないところがあるらしい」

「えー? あぁ、でも、南の方には冬がないようなとこがあるとは聞いたことがあるし、逆に夏がないところもあるのかしら。絶対行きたくないわね」

「うーむ。雪で溢れる景色と言うのも興味はあるが、寒すぎるのは困るのぅ」

「じゃあ南よね」

「そうかのぅ。まあ、そのくらいのつもりで、しばらくこの街にいて、いい街の評判なんかを聞いたら言ってみる、くらいでいいかの」


 なくならない雪にも興味はあるが、しかしそれほど寒いのもあんまり気が進まないし、だからって南も行きすぎると暑いと言う。何かよい観光名所などがあるなら、そこに行けばいいか、ととりあえず保留にすることにした。


「そうね。まあ、慌てて決めることもないでしょう」

「うむ。……ところでリナ」

「なに? 他に決めることあったかしら?」

「うむ……海には入れないが、明日は、休みでよいよな?」

「ん? そうね。やっと腰を落ち着けた訳だし、いいと思うわよ」


 体の疲れはないが、昼前にこの街についたところだ。この一ヶ月の移動はずっと休みなしだったので、羽伸ばしとしたって全然いい。

 だけど何だろうか、フェイは何やら歯切れが悪いようだとリナは首をかしげる。


「そうじゃな。うむ」


 何やらうむうむと右手で自分の顎を撫でて誤魔化しながら、フェイはベッドに寝転がったまま少しばかり浮かび上がると平行移動するようにして、リナのベッドまでやって来た。

 浮かんだのは僅かだったので、一瞬突然の真横に滑り出したように見えてビクッとしたリナだが、すぐに察して、ぶつからないよう壁際に座り直した。


 フェイはリナのベッドのど真ん中に寝転がって、どこかぶすっとした顔をリナに向けてきた。

 リナはフェイを振り向いてベッドに左手をついて、左足だけ靴を脱いで半身だけベッドにあがってフェイの顔を覗きこむ。


「どうしたの?」

「う、うむ。別に、何かあるわけではないんじゃけど。もちっとこう、くっつきたと言うか、いちゃいちゃしたいのぅ。なんて」

「……そう、ね。そうしましょうか」

「うむ」


 リナは右足も靴を脱いで、ベッドにあがる。大きなベッドではないので、それでフェイとは距離がぐっと近くなる。


 フェイと付き合い出して、2ヶ月となる。フェイとリナが情熱的なキスをしてベッドを共にしたのは合計たったの三回だ。

 移動中はせわしなかったし、何となくそう言う雰囲気にならなかったとリナは思っているが、フェイの中では明確に休日の前夜と決めているのでそうならなかったのだ。


 だからベルカ街で過ごした約一ヶ月の恋人期間中だけで、三回だったのだ。フェイとしては疲れるから休みの前の日がいいだろうとリナに配慮したのだ。

 リナは内心もっとあっても良かったけれど、自分から言い出すのは気恥ずかしいし、雰囲気的にも言いづらくて、タイミングをフェイに一任していた。


 三回から何となく週末にと決めてるのかなとは思っていたが、そうしたいから、明日を休日にしよう、と言われるとは思わなかった。


 明確に言葉にはされていないが、態度や言い方から、そう言うお誘いであるのは明白だ。急激に体温はあがったけれど、もちろん嫌ではない。


 まだ夕方前だと一瞬思ったけど、そんな思考もすぐに霧散する。

 フェイが望むと言うなら、そんなことは関係ない。何と言ったって、今は二人きりなのだから。


「リナ……もっと近くへ寄らんか」


 フェイは起き上がって、自分の太ももの隣をぽんぽんと叩いた。リナはいそいそとフェイの隣に寄り添うように座った。

 どきどきとしていた。まだ慣れないけれど、やること自体に躊躇いはない。


「うむ。リナ、キスをしよう」

「ええ」


 改めて言葉に出されると、どうしてもちょっと緊張する。

 フェイはリナの頬に右手をそえて、肩に左手をのせて引き寄せる。リナはされるまま身を寄せて目を閉じる。

 頬にあてられるフェイの手の熱が、妙に熱く感じられるのは、久しぶりだからだろうか。








「ん」


 リナが顎を引いて、フェイが顔をあげて、お互いに少しずつ顔を近づけて、フェイからそっと唇をあわせた。

 そのぬくもりにどきどきしながら、フェイはそっと唇を動かす。舌をださずにリナの唇の弾力を確認するようにはむはむと、唇でリナの唇をついばんだ。


「はぁ」


 少し口が開いてることで、自然と唾液がでてきて、唇が唾液にまみれて、ぬるりとしてきた。おのずと息もあがってくる。

 フェイが一度とめて、至近距離のまま目を開けると、リナもそれに呼応して目を開いた。赤くなったうっとりしたようなその顔に、たまらなく愛しくなってまた目を閉じてキスをする。

 リナはその勢いに反射的に身をひいてから、すぐにフェイに応えるように顔の位置を戻した。


 リナが押し返してきてくれたことに気をよくして、フェイはそっと舌を出した。ぺろりとリナの唇をなめて、リナが僅かに身を震わしたのに内心微笑みながら、さらに奥へと舌を進める。

 ぬるりとした生暖かい口内に侵入するとすぐに歯にあたる。つるりとした歯をなめていると、上下の歯が開いてリナの舌が迎えに来た。


「んぅ」


 フェイのリナの肩をつかむ左手にも力が入る。リナも反射的にフェイの体に手を回して抱き締める。リナの頬にあてられていたフェイの右手が挟まれる動きにあわせて、フェイは右手をリナの首の後ろに回して抱き締め返す。


「んんっ」


 息が苦しくなるまで舌をからませ、唾を飲み込む。強く抱き締めあっていると、気がついたらフェイはリナの膝の上にのり上がっていて、上からリナの頭を押し付けるようにキスしていた。


「っ、はぁ」


 唇を離すと、どちらともなく抱き合う力を弱めた。接触面は減ったのに、見つめあうとどんどんとボルテージはあがっていく。


「んっ」


 フェイの右手が外され、リナの胸に回された。こうして触れられるのも四回目だが、こうしてキスをしていないまま触られるのは始めてで、リナは身を固くしてしまう。


「痛くはないか? いつも、少し慌てていて、じっくりと気をつけられていなかったように思うのじゃが」

「だ、大丈夫よ。少し、強いくらいが、まあ、好き、かしら」


 気恥ずかしくて語尾を疑問系にしてしまうリナ。フェイはリナの言葉に、手の力を強くする。起き上がっているので多少は胸があり、掴むような動作ができる。


「ん、うん。その、フェイ」


 くすぐったくも、気持ちよさがないではないが、しかしいかんせん、今は普通に服を着ているので、今一快感として伝わってこない。


「うん、なんじゃ?」

「ん、うんと、ね」


 しかしさりとて、そうはっきりと言うなんて、リナとしてはとても言いにくい。そこでリナは思い付いた。言葉で言えないなら、まずは体でレクチャーをすればよろしい。


「今日は、私がフェイにしても、いい、かしら。ほら、ね?」

「む? う、うむ。別によいぞ」


 先程までとは別に、羞恥で頬を染めながらもフェイは頷く。自分が触られることは考えていなかったが、言われてみれば確かに、たまにはリナもやりたいことがあるかも知れない。

 まだまだよくわかっていないフェイなので、素直に年上のリナに従うことにした。


「じゃ、じゃあ、脱がすわね」

「ぬっ!?」


 いきなり予想外のことを言われて、フェイは目を見開いた。









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