122 告白3
月曜日と金曜日の2回更新に変更になります。
その他、次回更新日は金曜日の4月3日です。
前回のあらすじ。フェイとリナが恋人になった。とっても幸せ。ところでなんかフェイがリナとの家族計画で子供をつくろうとしているんですが。
リナは戸惑いつつも、フェイに対して微笑みを崩さないままに問いかける。
「あ、あのさ、フェイ。子供って、どうやってできるか知ってる?」
「うむ。もちろんじゃ。神殿にてつがいとなったことを神に報告した夜に、口づけをして一緒に寝れば、神が授けてくれるんじゃろ」
「…………その通りだわ。よく知ってるわね」
「無論よ。私はそれほど無知ではないぞ。馬鹿にするでない」
リナの知ってる子供の作り方と大分違ったけど、それを言葉にするのはためらわれた。なので黙って頷くことにした。
リナもすっかり最近は忘れがちだが、フェイは世間知らずだった。神が授けるとか、お伽噺の中ならともかくマジで語るとかないわ。
完全にフェイの知識は聖書から持ってきているものだ。どこの聖人の誕生から得た知識かは知らないが、現在においてはそんなことで子供ができないなんて子供でも知ってる。
しかし、一体誰がそれは違うと言えようか。こんなにも純粋無垢で、しかも恋人になったばかりだ。ここで真実を述べて、女同士では子供はできないし恋人やつがいになるのは滅多にないことだと言えば、フェイは恋人をやめようと言うかも知れない。
そんなのはごめんだ。なのでずるいのは百も承知だが、フェイが自然と知るまで、せめて本人が言ったリナが20歳になるまでは、黙っていることを許してほしい。
「そうね、子供扱いしてごめんね」
「いや、リナからして私が年下なのは事実じゃからな。多少は仕方なかろう。じゃけど、私はリナと夫婦となるのじゃから、私がリナより背が高くなる頃には、改めてもらおうかの」
「めおとって……その、フェイにとって、恋人って、何て言うか、婚約みたいね」
「何を言うか。生涯を共にする伴侶としたいから、恋人になってほしいと願ったのじゃ。当たり前のことじゃろう。むしろ、そうではない恋人はこの世におるのか?」
「う、うーん、それはそうなんだけど。あんまりそう強調されると、照れると言うか」
そりゃあ、恋人になるのだから、よほど子供でない限りある程度未来を見据えた付き合いになるのは当たり前だ。リナくらいの年になれば結婚はまだでも婚約段階まで進んでいても珍しいと言うこともない。実際に幼馴染みであるアントワネットはすでに結婚をしている。
だが相手が年下で同性のフェイと言うこともあり、好きだとは思っていたが結婚とか家庭とか、そう言うことまで考えていたわけではない。うすらぼんやりと、一緒にいたいと思っていたくらいだ。
そういう意味ではよほどフェイの方が大人なのかも知れないが、子供故の生き急ぎのようでもある。
どちらにせよ、リナにとっては心の準備が間に合わなくて照れ臭いことには変わりない。
「ふふ、こう言うことを言うと、リナは嫌がるかも知れんが、私はリナがそうして、恥ずかしがっているのが好きじゃよ。とても可愛い」
「……嫌じゃ、ないけど。恥ずかしいから、お願いだから、外ではそう言うこと、言わないでね」
「うむ。了解した。リナの可愛い顔は、私だけが見ればよいからの」
「ぐぅ……あ、あのさ。フェイは、私のどこが好きなの?」
フェイの言葉が嬉し恥ずかしすぎて、このままでは一方的に喜ばされてしまうと年上のプライドを危ぶんだリナは、話をかえてわざとフェイを恥ずかしがらせてやろうと思った。
思ったのだが、よく考えたらこの質問は自爆だ。プライド関係なく無意識に聞きたいこと聞いてるだけだった。
絶対に今よりずっと恥ずかしくなる。でもすごく聞きたいし、こうなったらもう今日の内に恥ずかしいことは全部聞いておこう。今日だけ、エメリナ13歳と言うことでお願いします。フェイさん、もっと言って言って。リナの好きなとこ言っちゃって。
そんな期待を込めてフェイを見つめるリナに、フェイはうむ、と頷くと快活に答えた。
「基本的に普段の優しくて気が利いて、しっかりして頼りになる綺麗なところも好きじゃよ。でも一番どきどきするのは、やはり、笑っていたり照れていたりする、可愛いところが好きじゃ。もっと、可愛くさせたくなる」
「……」
もうずっと13歳でもいいかも知れないと血迷いそうだ。意味もなくかわいこぶりそうだ。
普段から綺麗で、可愛いとこが好きとか、もはや全部じゃないですか。と言うかリナとしても、ここが好かれてると言うのがあったわけでもないが、それでもそんな風に言われるとは思ってもみなかった。
「そう言うリナは、私のことどこがよいと思ってるんじゃ? やはり、魔法がすごいところかのぅ?」
フェイのてらいのない言葉に反応に困って固まるリナには頓着せず、フェイは得意気にむふふとにやつきながらリナに尋ねる。好きな人に好きだと言うのはなんの問題もないが、自分が褒めてもらうのは嬉しいしどんどんしてほしい。
そんなフェイの褒めろオーラの透けて見えるフェイだが、聞かれたリナは思わぬ言葉にきょとんとしてしまう。
「え、いやそれはない……す、すごいとはもちろん思ってるわよ? でもほら、恋愛感情とは別だし」
否定してからフェイの眉尻が落ちていく様に、慌ててフォローをいれる。凄いことはもちろん凄いが、今はどこが好き?って話であって、そうじゃないわよね。もちろんフェイは凄いけども。凄すぎて最近感覚麻痺してきたけども。
「むー……まぁ、そうじゃけど。私も、リナの狩りの腕前に惚れたわけではないが。じゃけど、ではなんじゃ? 私、魔法には自信があるが、他に何かあったかのぅ?」
「そんなの、いっぱいあるわよ!」
何を馬鹿なことを言うのか。フェイの良いところなんて、たくさんある。魔法ができることなんて、その副産物みたいなものだ。
リナは恥ずかしがるのも忘れて、そんな自虐的なことを当たり前みたいに言うフェイの考えを正したくて思いを伝えようと、フェイの手を力強く握る。
「いい? まずフェイは可愛いわ。顔も動きもすっごく可愛いし、素直で一生懸命で性格も可愛いわ。そこも大好き。だけどそれ以上に、私が一番あなたのことを好きだと思うのは、その真っ直ぐさよ。一流の魔法使いになるんだって、日々魔法のことを考えて、きらきらした目で夢を追いかけてる。その姿勢が好きなの。すごく魅力的なの。思わず応援したくなるし、フェイのこと支えてあげたくなる。フェイは凄く格好いいのよ! だから惚れたのよ!」
一気にそこまでまくし立てて、だからそんな自信のないこと言わないでよと言おうとして息を吸い込み、だけどフェイが真っ赤な顔になっているのを見て我にかえる。
今、勢いで凄い素直になってしまった。しかも後半興奮して怒鳴るようになってしまった。どれだけ本気なんだ。本気だけど、外に聞こえてたら恥ずかしすぎる。
「う、うむ……そうか。リナの気持ちは、よくわかったのじゃ。うむ、なんと言うか、ありがとう」
「ど、どう、いたしまして。と、とにかく。だから、自信もって。私のこ、こ、こ、こ」
「?」
「こい、恋人、なんだから、その、素敵な人だって、思ってるってことなんだから、その、自信を、もってください、はい」
「う、うむ。わかった」
赤い顔でどぎまぎして挙動不審になりながらも、二人とも手を離さないまま、見つめあっていた。
○
その後、何だかんだで奥手なリナと、恋人のなんたるかさえ知らぬ二人に何があるわけもなく、ただ時間だけが過ぎて空腹が二人に時間の経過を知らせた。
長時間見つめあい、握った手の間は汗で蒸れ、二人は気はずさしさから気まずげに目をそらし、手を離した。
「……夕食にするかの」
「そ、そうね」
二人は手を繋がないまま、部屋を出て食堂へ向かった。マリベルに迎えられて、よく座る席へつく。注文して、運ばれてきた料理を食べる。
「……」
「……」
いつもなら、今日はこんなことがあって、どうだった、ああ思った、こう思った、明日は何をしようか、なんて話が尽きなかった。
だけど今は、さっきまで握っていた手のぬくもりが残っていて、恋人となったどきどきが収まらなくて、ずっと黙っていた。
恋人になったばかりだと言うのに、余計なことは一言も話さず、目もあわせようとしない。まるで喧嘩しているみたいだ。だけど今までよりもずっと、相手との距離が近く感じられた。
いぶかしむマリベルに見送られ、食事を終えた二人は部屋へ戻った。
身を清めて、いつもならここからベッドに隣り合って座ってたくさんおしゃべりしたりする。
「……」
「……、ね、寝る?」
「う、うむ」
だけど目をあわせて、何か話そうとしても、見つめあうだけで胸がいっぱいになって、言葉がでない。
明かりを消して早くもそれぞれのベッドに入った。
「……ねぇ、フェイ」
「なんじゃ?」
しばらくしてからリナが天井を向いたまま声をかける。フェイは寝返りをうってリナのベッドを向いて返事をする。
フェイの動きを空気で感じながら、リナはためらいながらあのねと囁くように言葉をだす。
「夢、じゃないわよね? 私たち、恋人になったのよね?」
ベッドに入り目を閉じて暗闇と静寂に身を委ねると、途端に不安がリナを襲った。だってあまりに急な展開で、幸せな夢にみたような状態で、あれきり触れあいもしないので、夢じゃないかと言う気持ちになってきたのだ。
そんなリナに、乙女心のわからないフェイははぁんと眉を寄せる。
「何を馬鹿なことを言っておる」
「そうよね。……ごめんなさい。なんだか、不安になっちゃって。あんまりにも嬉しすぎて、急すぎて、寝たら夢が覚めちゃう気がして」
「夢ではないよ。もし夢じゃとして、また、私はお主に告白する。じゃから、安心せい」
「……フェイ、大好き」
「うむ。私もじゃ。……ところでリナ」
「なに?」
「少し、近づいてもよいか? なに、同じ布団でなどと言わんよ。ただ、お主を感じながら寝たい」
「……うん」
ベッドを寄せて、わずか5センチだけ間をあけて、そこで手を繋ぐ。どちらともなくぎゅっと握り、そのまま眠りについた。




