表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電書化】婚約破棄されたけど、追放された先の国の年下王太子に気に入られています【コミカライズ】   作者: 沢野いずみ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/39

24:気付けば3年



 気付けば出会ってから三年が経っていた。


 なぜかリオンはシャーロットを気に入ったようで、ずっと遊び相手になっている。ハロルドも同じで、リオンに噛みつかれながらも、何だかんだと仲良くしているようだった。

 アンジェラもあれからまったくあきらめておらず、リオンにアタックし続けている。強い。強すぎる。シャーロットなら心が折れてる。


 そんな風に日々を過ごしていたシャーロットももう十五歳。社交界デビューの歳だ。

 この国は結婚できる歳に社交界デビューをする習わしがある。昔住んでいたベルンリンドは十歳からと早目だったので、ちょっと新鮮だ。


 シャーロットにとっては二回目の社交界デビューだ。

 一度他国でデビュタントしてると言っても、この国では初めて。

 というわけで、それなりに準備が必要だ。


「だから、しばらく会えないんだけど」


 シャーロットが事情をリオンに伝える。するとリオンはとんでもないことを言い出した。


「シャーロットの社交界デビューのための準備は全部俺が手配する」


 笑顔で告げられ、シャーロットは目を瞬いた。


「は!?」


 社交界デビューを家族以外がするなど前代未聞だ。もしあっても婚約者がほとんどである。

 準備に時間がかかるということは、それだけドレスも豪華で、お金もかかる。ダンスも習うし、礼儀作法もおさらいしなければいけない。それを用意してもらうなど申し訳なさすぎる。


「リオン、私自分で用意して……」

「俺の選んだドレスに、俺の選んだ装飾品を身に着けろ」


 リオンは嬉しそうに語る。


「いや、だから」

「当日の身支度もこの城でやろう。そのほうが効率がいい。当日は着替えやすいドレスを着て待っていてくれ。迎えをやるから」

「いや、あの」

「化粧や髪も任せろ。一流の人間を用意してやる」


 シャーロットに口を挟む暇を与えない。これはもう決定事項であり、否定は受け付けないというリオンの意思表示だ。

 もう付き合いも三年にもなると、そういうことも理解できるようになる。

 シャーロットはため息を吐いた。


「わかった……お願いします……」

「ああ、期待してろよ! アンジェラの誕生パーティーのときより豪華にしてやるからな!」


 そういえば、二年前もドレスをもらってパーティーに参加した。懐かしい。


「……当日は俺とずっと一緒にいろよ」

「え? リオンはまだ社交界デビュー前じゃないの?」


 当日は社交界デビューした人間が来る。デビュー前の人間は入れないはずだ。


「俺は王太子だからな。挨拶やらなんやらで、参加するんだ。もちろん、俺の本格的なデビューはまだだけどな」

「へえ」


 公務ということか。まだ十歳なのに大変だ。


「でも、それならなおさら一緒にいないほうがいいんじゃない?」


 公務ということなら、隣にシャーロットがいては邪魔になるだろう。


「いや、問題ない」


 なぜか自信満々にそう言うので、シャーロットは小さく「そう……」と返事するしかなかった。




◇◇◇




「えっ! リオン様、シャーロットの社交界デビューについてくるですって!?」


 いつの間にかシャーロットの家にまで押しかけるようになったアンジェラは、驚きの声を上げた。


「ついてくるんじゃなくて、公務なんだって」


 大事なことなので訂正するも、アンジェラは聞いていない。


「そんな、ずるいですわ! わたくしも連れて行きなさい!」

「さすがに無理」


 シャーロットがきっぱり断ると、アンジェラはむっとした顔をしたが、二年前よりは分別をわきまえるようになったようで、それ以上連れて行けと駄々を捏ねなかった。

 駄々は捏ねないが、不満は不満なようだ。


「わたくしもシャーロットと同い年がよかったですわ」

「そうしたらリオンと歳の差になっちゃうじゃない。今のほうがちょうどいいと思うけど」


 女性が年上というのは貴族の間ではあまりない。まったくないわけではないが、男性が年上なことがほとんどだ。


「でもリオン様は!」


 アンジェラが大きな声を出す。


「リオンは?」


 シャーロットが訊ねると、アンジェラはキッとシャーロットを睨みつけ、「なんでもないっ」とそっぽを向いた。難しい年頃だ。


「リオン様の姿を目に焼き付けて、わたくしに教えてくださいな」

「わかったわかった」


 その場にいけないのだから仕方ない。アンジェラの代わりにリオンの姿をしっかり見てきてあげよう。

 アンジェラは、どこか遠い目をして、ふう、吐息を吐いた。


「きっと、またおそろいの衣装なんでしょうね」

「まだ根に持ってる……」


 アンジェラの誕生パーティーで、リオンとおそろいの衣装を着ていたのが羨ましかったらしい。

 好きな相手とおそろいの衣装を別の女が着ていたら気に入らないのも理解できる。

 できるが、もう三年経つのだから、そろそろ忘れてほしいところだ。


「きっと今回もおそろいですわよ」

「えぇ……まさか。だって社交界デビューよ?」

「いえ、絶対おそろいですわ」


 アンジェラが断言する。しかしシャーロットはありえないと思う。

 社交界デビューで王太子とおそろいなど、目立ちすぎる。きっとリオンだってそんなことはしないだろう。


 ありえないと思っているシャーロットに、アンジェラがあきれた視線を向けたが、シャーロットは気付かなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] え!?ガキンチョ、シャーロットの家にまで押しかけるようになったの!?( ゜д゜) そしてリオンはシャーロットに対する好意と執着を全く隠してないのに、それに気づかない15歳ェ……(; ̄ェ ̄)…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ