07.偽の恋
四角関係好きっ
でわ、どぞ。
海に逢いたくなって、私は屋上へと引き返す。
変だな。
さっき逢ったばかりなのに、もう寂しいよ。
話したいわけじゃないの。
逢いたいの。
ーーーガチャッーーー
「え」
私の声が響いた。
「何、で。何で萌がいんの?」
「あっ真希~やっほ」
「やっほじゃねぇよ。何してんの?」
「あたしね~愛しの海と再会してぇ」
「は?」
「付き合ってるんだぁ」
「え。何で。何で萌が・・・・。そんな嘘」
「嘘じゃねぇよキャハハハ。海?行こっ?」
「・・・・お、おう。」
「え。海っ何でよ。」
「真希?ありがとな。俺、その彼女見つけたみたい」
「は」
2人は屋上から出て行った。
もぅ、やめてよ。
夢なんだったら、早く覚めてよ。
何で。
何で。
何で萌は、嘘つくんだよ。
“愛しの海”?
ざけんな。
海を、気軽に呼ぶんじゃねぇ。
私と、海の記憶を奪うな。
記憶を取り戻そうと必死になってるアイツに、嘘の記憶言った事が、私は許せねぇんだよ。
意味分かんねぇよ。
私は。
萌が何考えてんのか、分かんねぇ。
涙?
再び涙が零れ落ちる。
今日私、どれくらい泣いたんだろ。
だせぇな。
もし今日。
アイツが転校してこなかったら。
私の針は、いつものように規則正しく動いていたのに。
いまの私の時計の針は、止まっている。
アイツが来なかったら、私はいつものように萌と笑って。
愁君と手繋いで。
幸せな日々を、過ごしてたかもしんない。
今思えば、幸せだったなぁ・・・・。
駄目。
アイツがいるから、今の私がいる。
アイツの存在は、私にとって、心の支えだったじゃん。
4年前、思い出して・・・・・・
* * *
「はーい。今日は、席替えをしまぁす。」
「「よっしゃー」」 「どんな席かな」 「早く~~~」
中学2年生。
ようやく上がったその学年に、胸が躍っていた、のに。
隣の席のコイツのせいで。
ーーーーー楽しくない。
だから席替えは、ほんっと楽しみだった。
「んじゃ、席替え表、此処に貼っときますね。授業までには移動しておくよぅに」
「「「「はぁい」」」」
そろっ
私の席はぁ~
窓際!?
よっしゃぁ
隣の席はぁ~
・・・・・・・・は?
成宮海!?
またぁ?
またコイツ!?
「何?」
コイツが私に話しかけてくる。
「何でも?」
「こっち見んな。」
「見てないし。」
「まじキモイ」
「さいってー」
「「フンッ」」
はぁ・・・・。
またこんな日々が続くの・・・?
せ、精神的に。
辛い。
「あぁぁぁぁ、今日日直じゃんっ
最悪・・・・。」
「って事は俺も!?はぁ?ざけんなよ」
「私にキレんなよ」
「お前だってキレてんじゃん」
「キレてない!」
「「フンッ」」
他愛も無い事でいつも喧嘩して。
でも、コイツには遠慮なんかせずに、私の気持ちをそのままぶつけていた。
アイツの前で泣いた事も何度もあるし、笑った事もある。
でも。
性格合わねぇぇぇぇ!
コイツとは何かと言い合いになる。
その度に、お互いいがみ合う。
そして数日後。
教室にて。
「あたし、さ?海君の事が好きなんだよね。」
教室から、同じクラスの女の子の声。
「えっ?まじでー?アイツ、真希と付き合ってるんじゃね?」
「え。そなの?」
「ありえねぇよね~だって海君はみんなのもんじゃん」
「「あ~、まぁ格好いいしね~」」
「てかさ~、真希ってウザくない?」
「だよねだよね」
友達だと、思ってたのに。
何で、悪口なんて・・・・。
友情って、そんな薄いもんなの?
「ざけんなよ」
「「「あ?真希?」」」
アイツらの驚いた顔見て。
私、キレてんだな。
って。
自分でも分かる。
アイツらにもムカつくし。
こんな自分にもムカつく。
誰にも相談出来ない、弱音吐けない。
こんな自分に腹立つんだよ。
アイツらの視線から逃れたくって。
屋上へと走る。
走ったら何かスッキリして。
涙出てくる。
女の友情ってさ?
すぐに壊れんじゃん?
ほんっとしょうもねぇんだよ。
そりゃぁ海が格好良くてとかさ?
分かんない事もないよ?
でも。
全部出鱈目じゃん。
付き合ってる訳でもないし。
好きでもないのに。
何で。
そんな事言われなきゃなんねぇんだよ。
ざけんな。
「ッ真希!」
「え」
振り向くと、そこに立っていたのはアイツだった。
「やっと、見っけた。」
「アンタなんて、大っ嫌い」
「酷っでぇなぁ」
「そうよッ私は酷くって、最低で、不細工で・・・・・」
「違げぇよ。お前は、良い奴だ。」
「そんな訳ない」
「お前さ?いい加減俺の言う事、信用しろよ」
「え」
「俺が言う事はぜってぇなんだよ!」
「・・・・・・馬鹿。」
「馬鹿上等!大馬鹿じょーとーなんだよ」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁ」
「俺に比べたら、お前はもっと馬鹿だけどな」
「そんな事ないし!海の方が馬鹿」
「意地っ張り」
「意地っ張り上等!」
「「ハハッ」」
「可笑しいね。アンタといると、素直でいられる。」
「そりゃどーも」
「ばぁか」
「俺、真希の事、好きだわ。」
「え」
「俺と、付き合ってください」
「私で良ければ、付き合ってあげる!」
「ふんっ」
「鼻で笑うなぁー」
「ふんっ」
「コンヤロー。とりゃぁ」
「痛ってぇ。何すんだよ」
「参ったかぁー!」
「子供みてー」
「何だとぉ?アンタの方がよっぽど子供だし!」
「知ってっか?俺、ちょー喧嘩強えぇから」
「はぁ?強がんなって」
「強がってねーし」
「ヘヘッ」
「何笑ってんだよ」
「可愛いなぁーって」
「真希の方がよっぽど可愛い」
「え」
「そんな見んな。照れる。ブス」
「最後の一言いらなかった。うん。」
私。
コイツの事、好きなんだ・・・・。
愛してるんだ・・・・。
「海、好き。」
「真希、大好き。」
* * *
次回:萌が考えている事が、分からない。
だって萌は、私の親友じゃん。




