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恋時計  作者: のん
7/20

07.偽の恋

四角関係好きっ

でわ、どぞ。

海に逢いたくなって、私は屋上へと引き返す。


変だな。

さっき逢ったばかりなのに、もう寂しいよ。

話したいわけじゃないの。

逢いたいの。


ーーーガチャッーーー



「え」



私の声が響いた。


「何、で。何で萌がいんの?」

「あっ真希~やっほ」

「やっほじゃねぇよ。何してんの?」

「あたしね~愛しの海と再会してぇ」

「は?」

「付き合ってるんだぁ」

「え。何で。何で萌が・・・・。そんな嘘」

「嘘じゃねぇよキャハハハ。海?行こっ?」

「・・・・お、おう。」

「え。海っ何でよ。」

「真希?ありがとな。俺、その彼女見つけたみたい」

「は」


2人は屋上から出て行った。



もぅ、やめてよ。

夢なんだったら、早く覚めてよ。

何で。

何で。

何で萌は、嘘つくんだよ。


“愛しの海”?


ざけんな。

海を、気軽に呼ぶんじゃねぇ。

私と、海の記憶を奪うな。

記憶を取り戻そうと必死になってるアイツに、嘘の記憶言った事が、私は許せねぇんだよ。

意味分かんねぇよ。

私は。

萌が何考えてんのか、分かんねぇ。


涙?

再び涙が零れ落ちる。

今日私、どれくらい泣いたんだろ。

だせぇな。


もし今日。

アイツが転校してこなかったら。

私の針は、いつものように規則正しく動いていたのに。

いまの私の時計の針は、止まっている。


アイツが来なかったら、私はいつものように萌と笑って。

愁君と手繋いで。

幸せな日々を、過ごしてたかもしんない。

今思えば、幸せだったなぁ・・・・。


駄目。

アイツがいるから、今の私がいる。

アイツの存在は、私にとって、心の支えだったじゃん。



4年前、思い出して・・・・・・



*   *   *



「はーい。今日は、席替えをしまぁす。」


「「よっしゃー」」  「どんな席かな」  「早く~~~」


中学2年生。

ようやく上がったその学年に、胸が躍っていた、のに。

隣の席のコイツのせいで。

ーーーーー楽しくない。

だから席替えは、ほんっと楽しみだった。





「んじゃ、席替え表、此処に貼っときますね。授業までには移動しておくよぅに」


「「「「はぁい」」」」


そろっ

私の席はぁ~

窓際!?

よっしゃぁ

隣の席はぁ~

・・・・・・・・は?

成宮海!?

またぁ?

またコイツ!?


「何?」


コイツが私に話しかけてくる。


「何でも?」

「こっち見んな。」

「見てないし。」

「まじキモイ」

「さいってー」


「「フンッ」」


はぁ・・・・。

またこんな日々が続くの・・・?

せ、精神的に。

辛い。


「あぁぁぁぁ、今日日直じゃんっ

 最悪・・・・。」

「って事は俺も!?はぁ?ざけんなよ」

「私にキレんなよ」

「お前だってキレてんじゃん」

「キレてない!」


「「フンッ」」


他愛も無い事でいつも喧嘩して。

でも、コイツには遠慮なんかせずに、私の気持ちをそのままぶつけていた。

アイツの前で泣いた事も何度もあるし、笑った事もある。

でも。

性格合わねぇぇぇぇ!

コイツとは何かと言い合いになる。

その度に、お互いいがみ合う。


そして数日後。

教室にて。


「あたし、さ?海君の事が好きなんだよね。」


教室から、同じクラスの女の子の声。


「えっ?まじでー?アイツ、真希と付き合ってるんじゃね?」

「え。そなの?」

「ありえねぇよね~だって海君はみんなのもんじゃん」

「「あ~、まぁ格好いいしね~」」

「てかさ~、真希ってウザくない?」

「だよねだよね」


友達だと、思ってたのに。

何で、悪口なんて・・・・。

友情って、そんな薄いもんなの?


「ざけんなよ」

「「「あ?真希?」」」


アイツらの驚いた顔見て。

私、キレてんだな。

って。

自分でも分かる。

アイツらにもムカつくし。

こんな自分にもムカつく。

誰にも相談出来ない、弱音吐けない。

こんな自分に腹立つんだよ。


アイツらの視線から逃れたくって。

屋上へと走る。

走ったら何かスッキリして。

涙出てくる。


女の友情ってさ?

すぐに壊れんじゃん?

ほんっとしょうもねぇんだよ。

そりゃぁ海が格好良くてとかさ?

分かんない事もないよ?

でも。

全部出鱈目じゃん。

付き合ってる訳でもないし。

好きでもないのに。

何で。

そんな事言われなきゃなんねぇんだよ。

ざけんな。


「ッ真希!」

「え」


振り向くと、そこに立っていたのはアイツだった。


「やっと、見っけた。」

「アンタなんて、大っ嫌い」

「酷っでぇなぁ」

「そうよッ私は酷くって、最低で、不細工で・・・・・」

「違げぇよ。お前は、良い奴だ。」

「そんな訳ない」

「お前さ?いい加減俺の言う事、信用しろよ」

「え」

「俺が言う事はぜってぇなんだよ!」

「・・・・・・馬鹿。」

「馬鹿上等!大馬鹿じょーとーなんだよ」

「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁ」

「俺に比べたら、お前はもっと馬鹿だけどな」

「そんな事ないし!海の方が馬鹿」

「意地っ張り」

「意地っ張り上等!」


「「ハハッ」」


「可笑しいね。アンタといると、素直でいられる。」

「そりゃどーも」

「ばぁか」

「俺、真希の事、好きだわ。」

「え」

「俺と、付き合ってください」

「私で良ければ、付き合ってあげる!」

「ふんっ」

「鼻で笑うなぁー」

「ふんっ」

「コンヤロー。とりゃぁ」

「痛ってぇ。何すんだよ」

「参ったかぁー!」

「子供みてー」

「何だとぉ?アンタの方がよっぽど子供だし!」

「知ってっか?俺、ちょー喧嘩強えぇから」

「はぁ?強がんなって」

「強がってねーし」

「ヘヘッ」

「何笑ってんだよ」

「可愛いなぁーって」

「真希の方がよっぽど可愛い」

「え」

「そんな見んな。照れる。ブス」

「最後の一言いらなかった。うん。」



私。

コイツの事、好きなんだ・・・・。

愛してるんだ・・・・。


「海、好き。」

「真希、大好き。」


*   *   *

次回:萌が考えている事が、分からない。

   だって萌は、私の親友じゃん。

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