20.恋時計
最終話になりました。
非公開にしたーという何とも阿呆なハプニングもありましたが、無事、書き終える事が出来たと思います。
本当に本当に、皆様のお陰だと思っています。
ありがとうございやしたぁー。
「真希!」
「璃香!どしたの?」
「どしたのじゃないよ!何があったの?泣きながら病室出てくるし、」
「だいじょぶだから。私はだいじょぶ。」
「そ、なの?ほんとに?」
「うん。ごめん璃香。またあとで。」
「っえ。ちょ。真希ー?」
璃香の声聞いて。勇気出た。
もう海が私の事好きじゃなくったっていい。
私の気持ちを素直に伝えて、これからまた。
アイツとの思い出作ってけばいい話じゃん?
友達としてだって。アイツの記憶の手伝いになる。
もしアイツが。私の事も思い出してくれる・・・・そんな時が来たら。
私たちはまた、あの頃の様に戻れる日が来るから。
だから・・・・。今の私に出来る事はこれしかない。
病院飛び出す。
「真希・・・・?」
「萌っ!」
「どしたの?」
「海の場所知らない?」
「あ。学校の屋上にいるよ?真希、待ってるって。」
「え。アイツが言ってたの?」
「そうだよ。頑張って真希。素直に気持ち伝えて?あたし。真希の事応援してるから。」
「萌・・・・。」
「ほぉら早く行った行った~。大切なんでしょ?彼の事。」
「・・・・・・・・うん。」
「だったら迷う事ないよ。行っけぇー!真希!」
萌から伸ばされた腕は私の背中を強く推す。
本当は。
辛いんだよね。
なのに何で。何で。皆皆、こんなにも・・・・。
違う。
私が優柔不断なだけだ。
皆の思い背負って、私が頑張ればいいだけぢゃない。
「萌ー!!!ありがとーぅ。行って来ます。」
思いっきり。
叫んで。
皆に感謝の気持ちが届きますように。
今日は。
どれくらい走ったんだろう。
気づいたら顔は汗びっしょりで、大変な事になってる。
でももう。
そんな事気にしない。
私は私らしく。
ありのままの私でアイツにぶつかってけば。
きっとアイツにも思いが通じるはず。
たとえ伝わらなくったって。
報われる日が必ずくるから。
私のこの恋時計が正常に動き出す日がくるから。
だから。
そんな日を信じて。私は一日一日を噛み締めて。
生きてってる。
あの日、あの時。
泣いてた私を励ましてくれたのは誰だった?
優しく頭撫でてくれたのは誰だった?
思うがままに言い合って、最後には笑い合ったのは誰だった?
擦れ違って、泣いた夜、一体誰の事思って泣いた?
一緒に居れないだけで胸に穴が開いた様になって、寂しく感じたのは誰のせい?
全部。全部。
アイツには今亡き記憶。私には大切な記憶。
そんな思い出を分かち合う日が。
いつか来る事を願って。
この屋上へと続く螺旋階段を駆け上がる。
「・・・・ハァっ」
息がきれて、もう走れない。
けど。
でも。
私は走んなきゃなんない。
応援してくれた皆のためにも。そして何より。
私自身のために。
ーートクンーー
心臓が緊張で唸りをあげる。
縛られそうな程に息があがって。
苦しい。
落ち着いて。
胸に手あてて目を閉じる。
皆ーーーー。
私の周りには、私を支えてくれる、たくさんの大切な人がいる。
香澄川璃香。
私の何にも変えられない大切な大切な親友。
璃香が居たから、私はここに存在してるし。
自分の気持ちに素直になる事だって出来た。
私は璃香に、抱えきれない程の感謝を貰った。
ーーありがとう。ーー
池田萌。
何事もズバズバ言う萌だけど。
本当はすごく女の子らしくて。
自分の気持ちという物をしっかり持ってる。
私は萌に、いろんな事教えて貰った。
ーーありがとう。ーー
幸田愁。
誰にでも優しくて、暖かい愁君。
私の幸せ考えてくれて、本当に理想の彼氏だった。
人の為に泣く事だって出来て、笑う事だって出来る。
私は愁君に、思いやりを貰った。
ーーありがとう。ーー
成宮海。
馬鹿で、阿呆で、どうしようもない奴。
でも、意地っ張りな私を好きでいてくれた。
大好きで、抱えきれない程の恋をした。
私は海に、本当の恋を貰った。
ーーありがとう。ーー
*
ーーガチャーー
「・・・・よっ。」
軽く笑うアイツに。
いつもなら馬鹿だとか、阿呆だとか言えるのに。
今日は何故か、口が動かない。
「あのさ。真希。話があるんだ。」
「・・・・・・え!?」
「んな驚く?」
「いや、だって。私が話そうと思ってたから・・・・。」
「え・・・・?」
「そんな驚くなよ。」
「「あのさっ。」」
言葉が重なって、沈黙が訪れる。
「アンタから、話・・・・。」
「いやいや、ここは真希に譲る。」
「んーだよばぁか!私からでいーの・・・・?」
「勿。」
真剣に、アイツを見つめた。
ーー勇気を出して。大丈夫。大丈夫。私ならイケる。ーー
「私。海ん事が好き。」
「・・・・。」
「大馬鹿上等なアンタが好き。」
「大馬鹿、上等・・・・。」
「そぅ。アンタは大馬鹿。私は意地っ張り上等。」
「前に・・・・こんな事。」
「海?」
「前に一回、こんな事あった気がする。
緊張が解けて、隣にいた大切な誰かと笑い合ってた。
その誰かは泣き顔で、怒ってて。
全部が愛おしいって思ってた・・・・。
そいつは俺の初恋の人で・・・・、本気で好きだった。
そいつは・・・・そいつは。そいつは・・・・。
ま、き。山城真希・・・・。
真希。・・・・。」
「思い出したの!?」
「思い出した。真希だったんだ。
あの日、あの時俺が初恋で好きになった大事な奴。
真希だ。」
「ッ本当に、思い出した、の?」
「好きだ。真希!」
驚く私の身体をふわりと抱きしめる。
「今まで、ごめんな?
俺全部、思い出したから。
だからもう。真希を悲しませたりしない。
こんな俺でいい?」
「アンタが良いっ!大好きだぁー海っ!!!」
涙と汗でグチョグチョの顔を見たアイツは吹き出す。
「顔すげーよ。」
「うっさい!」
「好きだ。」
「何回言ってんの。」
「今まで言えなかった分言うし。」
「それだけ?」
「んーなの100回でも、200回でも言えるからっ。」
「ヘヘっ。ばぁか。」
「馬鹿上等!大馬鹿上等なんだよっ!」
「べぇーっだ。」
「意地っ張り・・・・。」
「意地っ張り上等だし。」
あの頃の様に素直に笑い合う。
まるで2年前に戻ったかの様に。
気持ちが擦れ違って泣いたあの日。
雨の中傘ささずに走って来た海。
そんな海に何も言えなくなった私。
出逢った、最初の頃。
好きという気持ちに気が付かず、モヤモヤしたあの日。
本当は気づいてたからモヤモヤしてたのかもしれない。
あの日も、あの時も。
確かに私たちの間には愛があった。
そして今も。
これから先。
海を愛しぬく事は至難かもしれない。
泣く日もあるかもしれない。
でも、それ以上に2人で笑い合う日があるから。
この在り来たりな日々を大切にして。
私は海と共に、生きてゆこう。
私の恋時計が正常に動き始めた頃。
これからまた、新しい物語が始まってゆく。
「「好きだ。」」
fin.
皆様、ここまで読んでくださった読者様。
本当に本当に、ありがとうございました。
皆様の支えがあったから、20話という長い物語を完結させる事が出来ました。
本当に感謝してます。
今まで、ありがとうございました!




