表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/86

第83話 ゴーレムとにょきにょき

「いや、めっちゃ伸びてんじゃん!?」


 俺は思わず叫んだ。そうせずにはいられなかった。

 なぜなら……裏庭の畑が緑であふれていたからだ!


「ジャガイモは立派な葉っぱがたくさん、トマトは支柱に(くき)がぐるぐると巻き付き、オアシスの赤い実がなる木なんて花が咲いてますよ……!」


 マホロも口をあんぐりと開けて驚く。

 裏庭の家庭菜園はほとんどマホロが管理していた。

 それだけに植物たちの急成長が驚きなのだろう。


「バナナの木は葉っぱが傘に使えそうなほど大きくなって……! 種から育てていたリンゴの木は私の身長くらいまで伸びてます!」


「こっちの薬草はもう収穫出来る状態だ! 早めに刈り取って天日干しにしておかないと!」


 俺とマホロは興奮して裏庭を駆け回る。

 そして、中央に植えられたとある木の前で足が止まった。


「私が大好きな黄色い花の木……すっごく伸びてます!」


「裏庭で満開の花を見られる日は近いかもしれないな」


 マホロの髪色に似た淡い黄色の花――

 その花を咲かせる木の枝を、教会のシンボルとして裏庭の中央に植えた。


 まだしっかりとした根も張れていなかったであろう木の枝が、こんなに早くマホロの身長と並ぶほどに伸びるとは……!

 しかも伸びた何本もの枝には、小さな小さなつぼみが付いている。


 たとえ数が少なくとも、見た目が立派でなくとも、裏庭に咲く黄色い花はマホロを笑顔にしてくれるはずだ。

 そして、マホロの笑顔は街中に笑顔を広げてくれる。


「ずいぶんとはしゃいでいるようだが、そんなにここの植物たちが様変わりしたのか?」


 そう言いながらシルフィアが裏庭の中央までやって来る。


「ごめん、シルフィア。置いてけぼりにしてはしゃいでしまった」


「それは別にいいのだが、私のブーメラン……あっ、ラブルハートをラブルアースと接続(リンク)させるだけで、すぐに大きな変化が現れたのは気になるところだな」


 確かに接続(リンク)しただけでこれだけ植物たちが成長するなら、それこそ明日にでもすべての果物や野菜が収穫可能になりそうだ。


 でも、命のブーメラン――ラブルハートは決して大きな魔法石ではない。

 ブーメランとして飛ばすために薄く作られているから、表面積はまだしも体積は小さい。

 それでここまでの効果が現れるものなのか……?


〈異なる波長を持つ魔宝石を接続(リンク)させた時に起こる爆発的な魔力の波動――魔力波(ウェーブ)の影響で植物が急成長したと考えられます〉


 俺の疑問にすかさずガイアさんの補足が入る。


「つまり、ラブルアースとラブルハートは波長の違う魔宝石なんですか?」


〈魔宝石は産出地によって波長が異なることがあります。今回の場合は天然の魔宝石と高度な技術によって加工された魔宝石の違いも(あい)まって、規模の大きい魔力波(ウェーブ)が発生しました〉


 ラブルアースと灯台のラブルフレイムの産出地は同じ廃鉱山……。

 だから、この二つを接続(リンク)させた時は特に不思議なことは起こらなかったわけだな。


「ダメもとで聞きますけど、その波長の違う魔宝石同士の接続(リンク)をつなげたり外したりして、何度も魔力波(ウェーブ)を発生させることって……」


〈波長は接触するごとに同調し、やがてお互いを受け入れられる状態になります。現在はすでに複数回の接触を行い、小規模な魔力波(ウェーブ)を何度も起こしつつ安全に接続(リンク)した状態です〉


「あはは……。やっぱり、そう何回も取り出せるエネルギーではないですよね」


 起こせるだけの魔力波(ウェーブ)はすでにガイアさんが起こした後のようだ。

 つまり、最初の大きな一回と複数回の小規模魔力波(ウェーブ)によって、あんなに植物が急成長したわけだな。


〈現在、より効果的に命の魔宝……ラブルハートの性能を引き出すべく解析を行っています〉


 ガイアさんが魔宝石の名前を間違えてから訂正(ていせい)してる……!

 まだ慣れないよねぇ~、魔宝石の新しい名前。

 それはガイアさんも同じなんだと思うと、何だか気持ちがほっこりするなぁ~。


〈命の魔力の及ぶ範囲は防壁外の畑と教会の裏庭、教会隣の樹木の土に限定しています。それ以外の土にはわずかな雑草しか存在しませんので、命の魔力を送り込む必要はありません〉


「命の魔力を送る範囲を絞ることで、送られている場所への効果は高まるというわけですね」


〈その通りです〉


「ま、待て待てっ! その……ガイアさんとやら!」


 シルフィアが慌てて会話に入って来る。


「教会の隣の樹木というのは、おそらく私の家がある木のことだろう? それに関しては命の魔力を送り込んで急速に伸ばす必要はない! 急に伸びるとツリーハウスが崩れる……! そこそこの栄養さえあれば良いのだ」


〈……ッ! 了解しました〉


 ガイアさん、今日はちょっといつもと雰囲気が違う。

 ポンコツという言い方は失礼だが、少し抜けている部分を見せてくれる。


 あくまでも地属性の専門家だから、命属性の植物を相手にするのは苦手なんだろうな。

 だから、ツリーハウスがある木を急速に成長させてはいけないことは気づかなかった。


「うちの裏庭の家庭菜園はいくら成長させてもいいですから! お願いします、ガイアさんっ!」


 マホロはぴょんぴょん跳ねてアピールする。

 早く黄色い花の木を成長させたくてしょうがないんだろうな。


〈了解しました。防壁外の畑と教会の裏庭に命の魔力を集中させます〉


「やったー! ありがとうございます、ガイアさんっ!」


 ラブルピアでは一番手に入れにくかった食料。

 それを果物と野菜の高速栽培で(おぎな)うことが出来れば、こんなに心強いことはない!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「面白いッ!」と思ったら
ブクマ・★評価・感想・レビュー
応援いただけるとめっちゃ嬉しいです!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ