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第61話 ゴーレムと鉱石採掘

 街の南側まで移動し、廃鉱山へ向かうレールまでやって来た俺。

 いつも通り(すね)を車輪に変え、レールの上に正座して進もうとした時、俺の体がメタル化によって小さくなっていることを思い出した。


 体が小さくなっているから、レールの上で正座をしようとするとレールとレールの間にすっぽり体が入ってしまう。

 そう言えば、リニアのレールってこんな風に車体を挟み込むような形状だったなと思いつつ、体を元の形状に戻して立ち上がる。


「まあ、脚を大きく開いてちょっと不格好な仁王(におう)立ちならレール上に乗れるかな」


 レールの上に鋼鉄の足を乗せた俺は、子どもの頃に流行っていた車輪が縦に並んだローラーシューズを参考にして足の形状を変形させる。

 よし、これならしっかりレールを掴んで加速出来るだろう。


 こうして、正座でレールの上を走るゴーレムは、仁王立ちでレールの上を走るゴーレムへと進化した。

 腕を組みドンと胸を張った体勢で風を切るその姿は……ちょっとカッコいいかも。


 そんなことを考えているうちに廃鉱山に到着。

 俺は体内収納(ストレージ)に入れてある等級Aの雷魔鉱石から感じる魔力を参考にして、廃鉱山内部の雷魔鉱石を探す。

 思った通り、探している属性と同じ魔鉱石を体に入れている方が埋まっている場所がよくわかる。


 地魔鉱石に関しては、ゴーレム自体が地属性魔力の産物なので問題なくその魔力を感じ取れる。

 レールの素材となるのは等級C以上なので、魔力の強さでフィルターをかけつつ採掘を始める。


 そして、一時間もかからずにトロッコの貨車(かしゃ)四両分の魔鉱石を集めることが出来た。

 これも大地の守護神だからこその結果だな。


「うん、これだけあれば十分足りる気がするし、街に帰っていいですか? ガイアさん」


〈レールを構成する材料は魔鉱石だけではなく、鉄などの通常の鉱石も使用します。現在、ラブルピアで保有している資源と合わせればレールの創造は可能です〉


 全体が魔鉱石で構成されたレールじゃなくて、普通に鉄などをベースにしたレールの中に魔鉱石を混ぜ込んでいく、言うなれば魔合金(まごうきん)製の構造物なんだ。

 だから、これだけの魔鉱石と街に置いてある鉱石を使えば、ジャングルまでのレールを敷ける!


 でも、そんなに長いレールを作ったら、街に置いてある鉱石はごっそり減ってしまうだろう。

 今日で一気にレールを完成させるつもりはないし、もう少し採掘を続けて今のうちに鉱石の資源を増やしておこうかな。


「金、銀、銅、鉄……いや、流石に金脈(きんみゃく)ではないんだったな、この鉱山は」


 その後、さらに一時間ほどでトロッコ貨車三両分の鉱石を掘り集めた俺は、自分が頑張った成果を前にしてご満悦(まんえつ)

 ウキウキ気分のままで街に帰るのだった。


 ◇ ◇ ◇


 夕方頃、ラブルピアに帰還。

 その様子を南の見張り台から見ていたマホロが、防壁の門を開けてくれる。


 そう言えば、まだ門を電磁魔動式に変えられていなかったな。

 リニアが走る東の門の仕組みを変える時に、他の門にも手を加えるとしよう。


「おかえりなさい、ガンジョーさん! いっぱい取って来ましたね!」


「ああ、新たな創造のための資源はいくら持っていても困らないからね」


 中身がいっぱい入ったトロッコをレールから外し、そこらへんに置いておく。

 魔力圏(ゾーン)に入っていればどこに置いてても一緒だし、魔獣も鉱石は食べない。

 それに盗人(ぬすっと)もこの街にはいないからな。


「まだ暗くなるまでには少し時間がありそうだ。リニア仕様のレールと車両を作ってみよう」


 防壁の中のプラットホームまで戻る。

 そして、レールの上から試作一号の車両をどける。


「間に車体を挟めるようにレールの幅を広く、それに高く……」


 車体の下部を挟み込んで磁力を伝えるためのレールを、まず仮想造形(モデリング)で作成する。


「レールの上を走るんじゃなくて間を走るんですね」


「うん、そのはずさ」


 記憶を呼び覚まし、それっぽい形のレールの3Dモデルが完成する。

 レールの幅が広くなったから、それだけ車体の幅も広がり乗せられる容量も大きくなる。

 特に荷物を積み込む貨車の大型化は、一度に運べる物資の数を増やすことにつながる。


「新しい車体の3Dモデルも作っておくかな」


 そこで俺は一つの疑問が思い浮かんだ。

 リニアって……車輪がいるんだっけ? いらないんだっけ?


 車体が浮いてるイメージがあるから、いらないような気もする。

 でも、仕事を終えて完全に電力を断った時は浮かないだろうし、飛行機のランディングギアみたいな用途で車輪が必要なんじゃないか?


「うむむ……」


「ガンジョーさん、どうかしましたか?」


「いや、リニアに車輪っているんだっけ……と」


 リニアを知らないマホロに聞いてもわかるはずがない。

 でも、マホロは俺の想像を超えるシンプルな解答を持っていた。


「ガイアさんに聞けばいいんじゃないですか? 磁力による加速装置の仕組みを知ってるのはガイアさんなんですから」


「……確かに!」


 俺と来たら、また頭が凝り固まっていた。

 別に俺の元いた世界の技術を完全に再現する必要はないんだったな。


「ガイアさん、磁力による加速に適した形状を教えてください」


〈了解しました〉


 ガイアさんの頼もしい声が返って来る。

 自分からアドバイスしてくれる時もあれば、聞くまで教えてくれない時もある――ガイアさんにも気分って物があるんだろうな。

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