十一話
そんなどうしようもない日々を
1年以上続けていた。
男はそれでも底辺までは落ちていなかった。
しぶとくしがみ付きながら
生活を続けていた。
その間一度だけ彼女から連絡がきた。
「別れましょう。」
とだけ。
すぐに連絡をしたが
またブロックされていた。
なんとか彼女の実家を調べようとしたが
金がない。
ギリギリの生活をしていたのだが。
結局男は、
彼女より自分を選んだ。
ギリギリの生活を捨ててでも
会いに行っていれば
少しだけは何か変われたのかもしれないのに。
未だ気付く事が出来ない。
髪も更に薄くなり鼻も歪んだまま、
男に昔の面影は残されていなかった。
それでも、一度いい思いをしてしまうと
忘れられないものだ。
男が誘えば女はついてくると思っていた。
ナンパを繰り返したが
全て無視される。
会社でも私生活でも
全て上手くいかない。
「なんで上手くいかないんだよ!」
一人愚痴る。
生活が出来ているだけマシである。
逆に生活でできている事態
不思議なくらいだ。
そんな日々が更に数ヶ月続いた。
また競馬で勝ったのである。
「女を抱きたい。」
男はナンパでは捕まえられなかった為
風俗に行く事にした。
競馬で勝ったと言っても
大した金額ではない為
安い店を探した。
予算内で全て出来る店はほとんど無かった。
普通の人なら避けるであろう
明らかに怪しい店のみ
大丈夫だと言われ
その店を選んだ。
溜まりに溜まった男は
考えられなかった。
5000円で最後までなどあり得ない。
今までの人生で金を払って
女性と寝た事の無かった男は
相場などわからなかったのだ。
逆に
「俺が抱いてやるのに
5000円も払ってやるんだ」
くらいに思っていた。
女性を舐めている。
そうこうしているうちに部屋に通された。
汚い部屋で
一瞬大丈夫なのかと思ったが
中に女がいた。
女を見て
「タイプじゃないが
しょうがない。」
と思いそのまま
一心不乱に抱いた。
付けるものも付けずに
久しぶりだったこともあり
満足気にことを終えた。
その日は久々ゆっくり眠れた。
しかし激痛により目が覚めた。
転げ回る痛みだった。
耐えることも出来ず
救急車を呼んだ。
病院で処置してもらい
点滴により幾分は楽になった。
性病にかかっていたのだ。
何日か入院した。
痛みも治まり退院となり
また泣けなしの金もなくなる。
会社にも事が知れ
更に、針のむしろであった。




