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(´・ω・`)お待たせ、今回は短め。

 いつまでも続くかと思われた羞恥地獄が終わり、まだ少女と言って良いエルフからおずおずと差し出されたお茶を指で摘まみくいっと煽るように飲み干す。

 俺には小さすぎるコップを床に置くと、腕を組み天井を見上げて6号さんの発言内容を頭の中でまとめてみる。


(俺の住処にあるものを危険視するエルフ。それは「禁忌」と呼ばれる異界の知識が世界を滅ぼしかけたことを知っているエルフとしては放置できないもの。200年前に帝国との戦端を開いたという歴史も、この禁忌が発端となっている。その結果は俺が知るものとは見方は違えど結果はほぼ同じ。そして――)


 その「禁忌」が生まれる原因が、他ならぬエルフに端を発するものである可能性が極めて高いという話なのだからわからない。

「そこまで正直に話す必要があるのかね?」と思ったが、知った上で協力させることで共犯者のようなポジションに俺を置こうとしているのではないか、と清純派と思っていた6号さんのイメージがものの見事にぶっ壊れた。

 いや、正確に言えばまだ十分残っていた部分が消え去ったというべきか?

 元々俺が支配を受けた際の会話を聞き及ぶ限り、結構なやり手であることは予想していた。

 なので認識を改めたと言うべきだろう。

 さて、話を戻して「禁忌」についてまとめてみよう。


・元々は異界の知識を示すものだったが、現在では世界を滅ぼしかねない危険なものがそれに該当する。

・帝国との戦争は元々あった「異界の知識」が理由となっていたが、その大元を特定するには至らなかった。

・「禁忌」が生まれた原因はエルフにある可能性が高い。


 大体こんな感じであっているはずだ。

 また最後に関しては6号さん曰く。

「過去に『別世界』の存在を信じてやまない天才と呼ばれたエルフがその扉を開いたことがきっかけで、異界の記憶を持って生まれる者が現れるようになったから」とのことである。

 今までそのような事象が観測されておらず、彼が大規模な実験を強行して命を落とした後に確認されたことから「世界に歪みが生じてそのようなことが起こるようになったのではないか?」とする説が現在では最も有力となっていることからそうなっているのだそうだ。

 そしてそれ以降、人類種の国家の中に、明らかに周辺とは異なる技術体系を持つ国が生まれるということが起こり始める。

 最初こそそれが何を意味するかはわからず注視する程度であったエルフ達だが、南大陸を制覇した帝国が北へとその影響力を拡大させた時、驚愕の情報が彼らに齎された。

 自らを「転生者」と呼称する急速に帝国を拡大させる最大の要因となった人物の存在である。

 天才と評される発明家でありながら、内政や軍事にも秀でる軍師の登場により、飛躍した帝国の話は「ラヌー帝国亡国記」として今日では知られる有名な物語だが、その裏には異界の知識を持つ者の存在があった。

 そして我がフルレトス帝国にもまた、この「転生者」がいた可能性が極めて高いと彼女は言う。

 確かに周辺国とは全く異なる技術に高度な文明であった帝国はそのように映るだろうし、状況的に考えるのであればその可能性は考慮に値する。

 エルフが大元を特定することさえできていれば、俺も素直に頷くことができていたのだが、状況証拠だけでは少し弱い。

 所詮は過去のことなのでそこまでして納得する必要はないのだが、その時代を生きていた者としてはエルフの理不尽な参戦には未だ思うところがあるのも事実なのだ。

 とは言え、言いたいことは言えないけれども、自身が「禁忌」の対象となりうる現状では黙っておくのが処世術。

 ご先祖様方には申し訳ないが、自分一人……もとい、一匹で背負うには帝国という国は重過ぎる。

 幸い国民は南に逃げて新しい国家を築いており、一つ障害を取り除いたことで北に領土を拡張することだろう。

 いずれ接触するだろうし「その辺は俺がいなくなった未来で勝手にやってくれ」と丸投げするという結論を出すと、俺は大きく息を一つ吐き、向かい合う6号さんに視線を落とす。


「答えは出して頂けましたか?」


 静かにそう尋ねられたが、気分的に圧力がかかっているように思えてしまう。

 彼女と協力し、帝国の痕跡を消す手伝いをするか――それとも、今使っている拠点を保持するためにエルフと距離を置くか、その選択を迫られる。

 一応「帝国軍人としての職務を全うする」という選択肢もないわけではないが、ぶっちゃけ何の得にもならないので選ぶ理由がない。

 後は俺の気持ち次第――と言いたいところではあるが、ここで自分が長く生きることができないという事情が絡んでくる。

 ならばいっそのこと「エルフを利用してしまおう」という方向に俺の思考は傾いてしまうのも仕方がない。

 だから俺はゆっくりと静かに頷くと、メモにペンを走らせ書き上がったものを6号さんに差し出した。

「条件付きではあるが協力しよう」と書かれた紙を見て、彼女は頷き承諾の意を示す。

 おかしなことを言わないという信用か、それとも住処を奪うことになる埋め合わせか。

 どちらに比重があるかはさておき、6号さんは条件を聞くまでもなく頷いて見せる。

 文化的な違いということもあるかもしれないが、俺のような強面モンスター相手に中々どうして肝が据わってらっしゃる。

 俺が提示した条件は二つ。

 一つは今後同様の施設をエルフが発見した時はその所在を知らせること。

 もう一つが施設の破壊には必ず俺を同行させること、である。

 言ってしまえばエルフに俺の「三人目」を見つけ出させようということだ。

 6号さんも何かしら理由があって見た目完全にモンスターの俺と付き合いを持とうというのだから、延命手段の一つとなってもらっても罰は当たらないだろう。

 俺の出した条件に首を傾げはしたものの、理由について問われるようなことはなく、思ったよりすんなりとことが運んだ。

 恐らくそれっぽい理由に俺が知らない心当たりでもあったのだろう。

 俺は「エルフとは協調する路線」を選択した。

 過去よりも今、だ。

 その結果は恐らくより良いものとなると信じている。

 ただ、俺の住処については難儀した。


「よくお考え下さい。あの『悪夢』を食い殺すモンスターなんですよ?」


 従者っぽいエルフの男性の言葉に「あっ」という顔をする6号さん。

 実は少し抜けているという点は可愛くて大変よろしい。

 でも流石に俺をエルフの村に置くというのは客観的に見ても無理だと思われる。


(いや、俺も期待したけどさぁ……改めて言われると「そりゃ無理だよな」ってなるんだよな)


 俺の思い描くエルフとの文化交流はまだまだ先の話となりそうだ。

 しかも生きていればの話にもなるので時間との勝負にもなる。

「まったく、モンスターというのも楽ではないな」と「ぐあぐあ」鳴くと、数人が明らかにびびって距離を取っていた。

 それで傷つくほどの繊細さは持ち合わせていないが、やはり子供達ほど柔軟な思考――もとい適応力はないのが普通だろう。

 それから少しばかり話し合った結果、今日はこちらで一泊することになったのだが……俺が入れる建物がここくらいしかなく、天井も近いことからうっかり壊しかねないので外で過ごすことになった。

 また、どうやら他の氏族のエルフ達がここの敷地内を取り囲むように見張っていたためこっそり外に出ることも叶わず、俺は一晩外で暇を持て余すことになる。

 寝床も用意できないとなれば本を読むくらいしかすることがなく、書斎から幾つか持ってきてもらった。

 そして光源として魔法で作った光球に紙の箱を被せてもらう。

 ただ、1時間おきに誰かがやってきて魔法をかけなおしてくれるのには少し申し訳なく思った。

(´・ω・`)まだもう少し不定期が続きます。ちょっと猛暑で体調崩す人多すぎんよー。

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― 新着の感想 ―
[一言] オッパイ大好きモンスター物語の世界観に深みが出てきたなぁ。
[一言] え、諸悪の根源はマッドなエルフさんだったの? それで禁忌だ禁忌だ言ってるなら、壮大なマッチポンプですやんw
[一言] 人へ安易に力を渡す危険な理という意味では、科学よりもエルフの使う魔法の方が良い影響を与えないと思う。
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