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(´・ω・`)キーボードをチーズ塗れにする。食べ物を持ち込むのはやっぱり危険やな……
Q.身も心も化物にならないためにはどうすればいいと思いますか?
A.何言ってんだお前?
きっと俺が抱える悩みはこんな形で処理される。
そんな帝国時代を懐かしみつつ廃墟となったエイルクェルの街に到着するや、さくっと前回寝床に使った場所へ行き、軽く埃を払って即座に寝る準備を始める。
夜だからね、仕方ない。
街中にゴブリンらしき気配はあったが、入口を閉じておけば問題はないだろう。
俺にちょっかいを出す阿呆はいないと思うが、何かあれば目が覚めるだろうし大丈夫なはずだ。
今日はもう疲れた、と変わらない自作の簡易ベッドに倒れこみ、目を瞑って意識が落ちるのを待つ。
気が付いた時には朝だった。
やはり長時間活動するとぐっすり眠れる。
さて、そろそろしっかり腹の中に何か入れておきたいところだが、その前に街の掃除を軽く済ませておこう。
今回は僅かにゴブリンを残し、ここに住み着くと殺されるということを学習させてみる。
ゴブリンが学ぶかどうかは不明だが、不定期に訪れては殺戮を行っているので覚える可能性はあるはずだ。
そんなわけで朝飯前に軽く50匹ほど駆除。
前回訪れてから二か月も経っていないと思うのだが、こいつは本当にすぐに生えてくる。
その後、森に入って豚を仕留めて戻り、解体を済ませると朝食の準備を始める。
鉄板で肉を焼きながら「今回は何を持って帰ろうか」と考えながら辺りを見渡す。
特に目につくようなものはなく、割れた道路の上での食事が終わって後片付けを開始。
鉄板や食器を自然乾燥に任せる間、ショッピングモールに入り「何かないか」と物色する。
「食器は欲しい。掃除用具も必要か……後は来客用にいるものと言えば?」
ノッシノッシと歩きながら店を一つずつ覗き込む。
そこで一件の店が目に留まった。
「……時計か」
今はもう動かない。
だが技術的な価値は間違いなくある。
となれば、手巻き式の懐中時計はどうだろう?
俺は入口を適度に破壊して体を中に入れる。
店内は既に略奪された後ではあるが、バックヤードの確認もしておく。
しばらく漁ってみたところ腕時計は全滅。
置時計はあるが恐らくどれも動かないし動かせない。
ねじを巻くタイプの懐中時計ならば「もしかしたら……」という気持ちはあるが、肝心のものが見つからない。
幾つもの箱を引っ張り出しては中身を確認していると、ようやく目的のものが見つかった。
「あ、確かこれ……」
そしてその懐中時計のロゴにも見覚えがある。
テレビのCMであった「100年経っても大丈夫」という謳い文句の時計メーカーの品である。
これなら期待できると箱の中から残った懐中時計5つを全て取り出す。
「動くかどうかは後で確認すれば良いとして……もう何品かサンプルとして持って帰ろう」
適当に嵩張らないサイズの置時計を2,3掴み、近くにあった籠に入れると時計屋を後にする。
次に食器を確保しに向かったところで、あることに気が付いた。
本当に今更なのだが、高額で持ち運びがしやすいものは粗方略奪されている。
当然銀食器などは全滅だったのは確認しているが、宝石店はまだ見ていない。
絶望的なのは間違いないが、隠された物や金庫の中身などは無事である可能性がある。
今後エルフやフロン評議国の人間と取引を行う可能性を考えた場合、金目の物を幾らか持ち帰っておいた方が良いだろう。
必要な物を揃えた後で探してみることにした俺は、手早く店を回り目的の物を集める。
そして何度目かの山がショッピングモールに出来上がった。
最早恒例となったこの光景に思わず俺も苦笑い。
「アレも欲しいコレも欲しい」というより目についた「何かよさそう」な物を片っ端から運んだ結果がこれである。
というわけで次にこの中から本当に必要な物を選別しなくてはならない。
一時間ほどかけて選り分けた結果、当初予定していたもの以外に必要なものはなかった。
そもそも一体何を思って俺はペット用品や猫耳カチューシャを持って来ていたのだろうか?
その場のテンションに任せてアレコレと手に取っていたのでどうにも思い出せない。
(取り合えず6号さんへの返礼は懐中時計で良いとして……本屋も一応回っておくか)
ついでに乾いた鉄板も回収し、向かった小さな本屋の入口を拡張。
中に入って狭い店内からどうにか本を物色する。
そして猫の写真集を手に取った時、俺は思い出すことができた。
「ああ、そう言えばダメおっぱい用にペット用品を持ってきたんだった」
目的は有体に言えば嫌がらせ。
6号さんに返礼として物品を渡せば「私にも」と言ってくることを予測して、ペット用品をダメおっぱい用として渡そうと思っていたのだった。
「ペットくらいしかやることないだろ?」というメッセージを込めてのものだったが、猫の尻尾のアクセサリーが見つからず途中で断念。
その名残があのペット用品である。
ともあれ、比較的無事なファッション雑誌や猫、犬の写真集を手に取る。
「……あんまり喜ぶイメージが湧かないな」
やはり本は不要だろうか?
取り敢えず自分用に何か見繕っておこう、と俺が眠っている間に出た新刊を探す。
状態の良いものを選んで立ち読みをしていると、気が付けば随分と時間が経過していた。
太陽は真上に近づいており、2時間ほど立ち読みをしていたようだ。
俺は漫画を本棚に戻し、ショッピングモールに戻ると選り分けた食器などの日用品や小道具をリュックへと仕舞う。
容量にまだ余裕があることを確認し、他の場所へと移動する。
目指すは宝石店、または銀行――つまりは取りこぼしチェックである。
貴金属や宝石が残っていないか確認をしたいのだが、場所を知らないので探す外ない。
というわけで廃墟となった街をぶらぶらと歩く。
ついでにゴブリンチェックを行いつつ、まだ逃げ出していない阿呆がいるなら見つけ次第駆除する。
しばらく大通りを練り歩いたところ、銀行を発見したのだが略奪された跡がわかりやすいほどに残されている。
中に入るとそちらも大変なことになっており、200年という歳月でさらに悪化していて最早ここが何なのか不明な荒れ具合である。
瓦礫とガラスの破片まみれの床を進みながら、奥へとどうにか進むがやはり金庫は開けられており持ち出せるようなものはなさそうだった。
トボトボと銀行だった建物から出ると再び所々割れた大通りを練り歩く。
それから二時間ほど街を探索した結果、宝石店は見つからなかった。
その代わりに荒らされた大きな家を発見したので、そちらにお邪魔したところ開けられていない金庫を発見。
それを破壊して指輪等の宝石のついた装飾品を何点か手に入れた。
予定とは違ったが、自分の勘も捨てたものではないなとエイルクェルの街を後にする。
というわけで今回の収穫は食器に日用品、パイプ椅子と装飾品。
そして目玉に懐中時計と中々悪くないラインナップである。
おまけで猫耳カチューシャも持って帰ってきたのは愛嬌だ。
6号さんが無理だったとしても、ダメおっぱいなら言いくるめれば多分着けてくれるだろう。
(エルフに猫耳……新しいな。しまった、どうせならこの手のグッズをもっと探すべきだったか?)
今から探しても良いのだが、とショッピングモールの中を見ていたところで閃いた。
「そうだ。無事な服があればそれを持って帰ろう」
そして来客が着替えなくてはならない状況に陥った時、それとなく差し出そう。
制服姿の6号さんを思い浮かべ、俺は予定を変更してもう一度探索を開始する。
リュックにはまだ余裕があるので、奇麗に畳まれた状態の服ならそれなりの数が入るだろう。
そう思っていた矢先、俺の目にあるものが映った。
「……下着、だと?」
迂闊だった。
服もそうだが肝心な物を忘れていた。
下着――エルフにあるまじき反則ボディを更に凶悪なものへとするもの。
(忘れていた。川で裸ばかりを追いかけていた俺は、下着の素晴らしさを失念していた)
俺は悔やんだ。
何故もっと早くこのことに気づけなかったのか、と――もしも俺が女性用の下着を持ち帰っていたならば、勘違いしたダメおっぱいをもっと楽しむことができたはずである。
だが、今からでも遅くはない。
次があることを信じ、俺はどうにか店に上半身をねじ込むと、一つ一つ丁寧に吟味を始める。
やはり表に出ているものはダメだ。
倉庫にある無事な物を探し出さなくてはならない。
俺は店内の棚をどかして道を作りバックヤードへと辿り着く。
傍から見ればモンスターが女性用の下着を漁っている酷い絵面ではあるが、今更気を遣うようなこともでない。
十分な量の下着を確保したが、リュックに入りきらず厳選することとなったのはご愛嬌。
だってさ、ダメ押しとばかりに黒のガーターが見つかったんだから仕方ない。
後はどうやってこのセットを着用してもらうか、である。
リュックを背負い拠点に戻る中、俺の頭はそのことばかりを考えていた。
俺は考えた。
戦場に居続けることで人としていられる時間が減るのであれば、その逆を行えばよい。
よって、今の俺は癒しを必要としている。
ならばこの下着が、きっと俺の人としての寿命を延ばしてくれることだろう。




