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(´・ω・`)投稿ミス。
流石に38人もの女性を連れて歩けば想定よりも遅くなる。
と言うより、俺の感覚がすっかりおかしくなっていた。
肉体の能力に馴染んできたことは良いのだが、変な部分で人間の感覚が残っていたことでこんな失敗を犯すことになる。
(あー、もうちょっと速くならんもんかなぁ……)
周囲を警戒しながら進む一行の歩みは遅く、俺が幾ら「周囲の警戒はこちらでやっている」と言っても止めないのだ。
おかげで遅々として進まないのだから、予定が狂いっぱなしである。
こちらを信用していないと言うよりかは、恐怖に駆られてそうなってしまっているようなので如何ともし難い。
何か気を紛らわせるべきかと話を聞くことにすると、どうやら彼女達全員が正規兵らしい。
兵科は銃士隊。
「銃があって何故オーク如きの捕虜になっているのか?」と疑問に思ったのだが、ライフル銃ではなくマスケット銃だった。
おまけに奇襲で側面を突かれ、前線が崩壊した際に逃げ遅れた者が軒並み捕まってあの砦に運び込まれたとのことである。
合計で300人近く捕まったらしいのだが……男は食料、女は慰み者とあってはこの人数しか生き残りはおらず、後方に送られてあのように玩具にされる屈辱に耐えていたところ、俺がやって来たというわけだ。
なお、あの遊びは「勝てば解放」で「負ければ食料」らしいのだが、オークのことだから食肉とされる前に何をされるかは言わずもがな。
しかも負けた本人が食われるのではなく、広間にいた二人の女性が対象となっていたらしいのだから、オークという生き物に品性などないことがわかる。
話を聞いていると静かに泣き出す者が続出したため、これ以上は聞かないことにするが、それでも戦場に関する情報だけは聞いておかなければならない。
「わかっている範囲ではオークの軍勢は一万を越えている」
やはりというか旧フルレトス帝国領全域のオークが集まっていると見るべきだろう。
となると、旧帝国領の農業地区をどれだけ使っているかで総数の上限が変化する。
増えすぎて食料に困って南に進出するくらいなら北側に勢力を伸ばせば事足りる。
にもかかわらず南へと進路を取ったということは――明確に人間を目的としている。
(これは「オークの王国」が冗談では済まなくなってきたぞ)
人間を食料や性処理道具としか見ていないオークの軍団が街になだれ込むようなことになれば、どのような光景となるかは火を見るより明らか。
裏からこっそりどうこうするという選択肢は潰えたと言っても良い。
「あまり表立って人間と共闘するのもな」と考え込む。
シナリオや設定を少々考え直す必要があるかもしれない。
ちなみに現在の設定では「オークの数が増えすぎたので間引くことにしたから、詳しい情報をおくれ。情報くれるなら適切な数を間引いておくから」というものだ。
理由を突っ込まれた場合は「あいつら大食いだから俺の食い分が減る」ということにするつもりである。
俺が後方を荒らしまくれば自然と人間側で前線を押し上げ、そう言った事態を避けることができると思っていたのだが……話を聞く分には思った以上に戦況が芳しくない。
開拓村は既に飲み込まれているらしく、一度街が陥落しかかったところに救援が間に合いどうにか防衛を成功させるも、その後攻勢に転じるまでは優勢であったはずが、それがオーク共の罠だったことで前線が崩壊。
代表である彼女もその時に捕まったらしく、押し引きを繰り返している間にも結構な人数が連れ去られていると怒りを顕に語ってくれた。
(オークが戦術を用いる……これ新種か何か生まれてないか?)
オークにもゴブリンと同様に統率個体はいるが、それがこのような結果を齎すとはどうにも考えにくい。
ただ、その辺りはフロン側も承知しているらしく、当初は何処かの国の工作ではないかと疑っていたらしい、それが原因で対処が遅れて北側の開拓村からの連絡が全て途絶えてしまったことが、痛恨のミスであると拳を握り嘆いた。
(ま、俺がどう動くかは向こうの対応次第でもあるからなぁ……)
設定を少し念入りに見直し、場合によっては力を貸すことも考える。
できることなら、帝国の血を引く国には栄えてもらいたい。
モンスターとなってしまったが、俺の家族の子孫が暮らしているかもしれない国なのだ。
身贔屓くらいしてもよいだろう。
さて、歩き続けていれば時間も経つ。
時間が経てば日も暮れて腹も減る。
砦にある水は持ち出してはいるものの、食料に関しては肉以外の物が見当たらず、人肉である可能性から持ってくることができなかった。
なので俺がひとっ走り獲物を確保しに行く。
何人かが護衛である俺がいなくなることに難色を示したが、周囲にはオークがいないこと、また大声を上げれば駆けつけるので問題はないと伝えると、代表の女性の命令もあってか渋々引き下がる。
僅か15分程で猪を二頭確保して戻ると、全員が地面に這いつくばって身を隠していた。
オーク程ではないが、こちらも匂いによる判別はそれなりに経験がある。
全員をあっさり見つけた後、猪を解体して開けた場所へと移動。
背負ったリュックから鉄板を取り外し、肉を切って焼く準備を始めたところストップがかかる。
「煙が出るでしょ! 何考えてるの!?」
俺は「だから何だ」と肉を焼く。
あまりにも騒ぎ立てるので「オークくらい100や200来たところで追い払えればよいだろう?」と書いた紙を見せて肉の焼き加減に注視する。
今ではすっかり職人芸。
それでも立ち昇る煙にパニック状態の女性陣に仕方ないのでもう一筆。
「無駄に知能があるということはな、ある程度の数を速攻で殺せば、死ぬのを恐れて逃げ出すものだ。例え万単位で出てきたところで、俺が突っ込んで暴れるだけで連中は逃げ惑うことになる」
差し出したメモを見た代表の女性が苦々しい表情で俺を睨みつける。
「お前は、あのオーク共が普通じゃないことがわからないのか!?」
それに対する俺の回答はこうだ。
「人間のものさしで測られたものを俺に当てはめるな」
軍のように訓練されているというのであれば、ここに来るのは偵察兵だ。
それがうじゃうじゃと群れをなして来るはずもなく、前線を放置して何千と兵を送り込むはずもない。
俺の見立てでは出せても100が限界だ。
そしてその程度の数ならば、本気を出せば瞬殺できる。
彼女達の護衛が目的ではあるが、守らなければならない状況になる前にオークを皆殺しにすることなど朝飯前である。
そこのところをもう一度伝えたのだが、代表は納得しきれない様子で他の女性は恐怖に震えている。
(あんたら一応軍人なんだからしゃきっとしろよ)
女性が負ったトラウマに関しては男の俺では理解できないのかもしれないが、助かるためには全力を尽くしてもらいたいものである。
結局、俺が塩胡椒を振って鉄板で肉を焼くことにツッコミが入ることはなく、煙に関しては「もう暗いからきっと大丈夫だ」という代表の一言で収まった。
少々納得はいかないが、自分がモンスターの姿をしていることを思い出して「静かになっただけ良かった」と思い直す。
後片付けの時にも言及はなく、少し悲しい気持ちを抱えながらタワシで鉄板を洗う。
むしろ「そんなことに貴重な水を使うなよ」という非難めいた視線を感じ、微妙に居心地が悪い。
そして再び行軍は再開され、二時間ほど暗闇の中をゆっくりと森を歩いた後、本日の移動は終了となる。
そこで眠ることになったのは良いのだが、光源がないため何をするにもグダグダだった。
眠る場所すら満足に確保できず、夜目が利く俺が手を貸してどうにかなる体たらくである。
「こいつら本当に軍人か?」と思っていたら、代表以外は新兵や訓練過程を終えていない者も混じっているらしい。
「あなたに言ってもわからないだろうけど、戦うための訓練を受けている最中に非常招集がかかった子達が多いのよ。だからまだ兵士としての心構えも中途半端。戦うための人間として見たら失格なのかもしれないけど、今はそんな子達ですら戦場にでる必要がある」
どうやら対オーク戦線は思った以上に酷い状況にあるらしく、俺の溜息から察した代表が言い訳をするように教えてくれた。
所々に棘がある言い方をしていたが、この代表さんは現状を憂いているのは間違いない。
交代で見張りをすると言っているが、能力や状況を鑑みてそれを信用できる訳もなく、俺がやってやるから寝とけというジェスチャーにも応じない。
この光源もない森の中の闇夜で、新兵未満の見張りにどの程度の効果を見込めるかは疑問だが、恐らく「誰かが見張っている」という事実が必要なのだろう。
眠ろうとしても眠れない半数と、大して意味のない見張りの半数を横目に大きく息を吐いた。
長い夜になりそうである。
ちなみに俺が全裸だった彼女達に興奮しなかったのは目が肥えてしまったからである。
ただでさえ俺は「モデルの姉」を持っていたため女性の容姿や体型を見る目が厳しい。
そこにあの体だけは素晴らしいダメおっぱいの裸体を数日とは言え日常的に眺め、6号さんという「美しい」と表現する外ない肢体を何度も見ていれば目も肥えるというもの。
というわけで彼女達には実に紳士的な対応を取っているが、やっぱり肌色が欲しくなる。
無事、彼女達を送り届けることができたら何かしらサービスを要求したいところだが、妙案が浮かべばよいのだがと暇な見張りを続けていた。




