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5/26 一部小さなミスを修正。
突如現れた巨大なモンスターの前に、少年達は守るべき者のために勇気を振り絞って前に出た。
しかし、そこに新たにイレギュラーサイズのバストが現れ、男女等しく子供達の視線が一点に集中する。
ダメおっぱいの就職先は決まるのか?
次回6号さん劇場――夢の共演、戦士達の戦い――夢見て育てよ、子供達。
以上、現実逃避終了。
俺にしがみつくダメおっぱいが子供の前でみっともなく喚いている。
「安全だって言ったじゃない! 悪い扱いにはならないって言ったじゃない!」
その姿を冷たい目で見る6号さん。
子供達は状況が理解できないらしくただ見ているだけである。
目の前で泣き喚くダメおっぱいが「ダメな大人の見本」となることを切に願う。
さて、押し付けられる胸の感触を楽しむのも良いが、これは半分くらいは意図して俺が起こしたものだ。
「無駄飯ぐらいは返品」という名目で突き返されたダメおっぱいは、自然調和委員会の6号さんからすれば「折角の機会を潰しやがった阿呆」となる。
目下、共存が可能なモンスターとして槍玉に挙げられている俺としては、この一手は距離を取り直すには程よい塩梅のものである。
支配の魔法のような禁忌とされる強力なものがある以上、無策での敵対はまさに愚行。
離れすぎるのもまた危険――だからこそ、このダメおっぱいの返品なのだ。
数日とは言え、俺と過ごしたその中身を6号さんは知りたがるだろう。
ダメおっぱいから齎される情報は、きっと彼女の想像を遥かに越えたものとなる。
(多少の情報は漏らしても構わない。戦闘能力に関する部分は未だ秘匿状態にある。ならば、俺の知能の高さを改めて確認すれば、確実に6号さんならば交渉の場を設けようとするだろう! それはつまり俺を討伐しようとする勢力を抑えることと同義。そして6号さんはかなり高い立場のエルフであることも確認済みだ!)
付け加えるならば、俺の討伐を推し進めようとするような連中は限られるが、一体誰が好き好んで危ない橋を渡るのか?
それは危険を冒してまで俺という脅威を排除することで得られるものを欲する者達。
より大きな発言力を得たい勢力――この場合は、ゼサトという氏族がそれに当たる。
その権力を欲するゼサトのやりたい放題の証拠となるダメおっぱいの身柄が、6号さんの手に渡ったのだ。
(まさに完璧な計画! その中核を担うのがあのダメおっぱいであることを除けばなぁ!)
あのおっぱいのダメさ加減はたった数日で身に沁みて理解できた。
だからこそ、6号さんがあのダメおっぱいを「丁重に扱う」ような状況を作りたくなかった。
あいつならきっと俺の予想通り自分の置かれた立場に甘えまくる。
結果、愛想を尽かされた場合どうなるかが予想できない。
愛のムチで厳しく更生させられるのならば御の字。
自分の状況が悪くなったことで、逆にゼサト側へと寝返る可能性すらある。
しかし最初から厳しくされている状況ならば、自分の命と天秤にかけて我慢くらいはするだろう。
そう思ってのことなのだが、俺の想定を超えるこの情けなさ――こいつは一体何を期待していたのだろうか?
恐らく「自分って大事な大事な証人だからきっとチヤホヤしてくれるし、身の回りのことは全部やってくれて安全だって保証してくれる。これからは毎日食っちゃ寝できるぞ!」くらいのことは考えていたんだろうな、クソッタレ!
あの浮かれた顔が「あなたには言いたいことと聞きたいことがあります。しばらくはフォルシュナの名で保護致しますが、ゼサトの一件が解決次第戻って頂きます」と聞かされた途端、泣き顔に変わって俺に待遇改善を求める始末である。
(甘かった。俺の考えが甘かった)
何はともあれ、こいつを6号さんに預かってもらわなければ始まらない。
取り敢えず、川の中に居続けるのは良くないだろうと、川辺を指差しそちらに移動。
泣きじゃくるダメおっぱいを担いで川を出ると、ジタバタと暴れて鬱陶しいが腰に巻いた白衣を引っ剥がしてケツ丸出しにしてやると「ヤメロ―!」と言いながら抵抗する。
一足先に川から上がった俺は、木にかけられていた衣服の中に6号さんの物と思しきものを発見。
肌着がずぶ濡れなので、体を拭くための布とそちらを回収して6号さんに手渡す。
この人は俺に肌を見られることを意識していないのか、裸のままでやり取りをしていた。
良い目の保養になったので、これはそのお礼を兼ねてのものだ。
「ありがとう」と目礼をするが、その目には俺の挙動を見逃さないという気迫が感じられた。
強い意志を持つ女性――エルフの中でも高い地位にいることも頷ける。
それに引き換えこのダメおっぱいよ。
「体以外に価値なし」という評価に一点の曇りもない。
そしてそいつを少しは擁護しておかなければならない苦しさよ。
体を拭いて上着を羽織るだけで済ませた6号さんは、子供達を少し離してから俺に向き直る。
「まずは同族の非礼をお詫びします」
そう言って頭を下げる6号さんに「気にしていない」と書いた紙を見せつつダメおっぱいの尻を叩く。
「ちょっと、何であんたはそうホイホイと――」
「あなたは黙ってなさい」
有無を言わせぬ6号さんの迫力にダメおっぱいが「はい!」と黙る。
「退屈はしなかった」と書いた紙を見せ、あまり厳しくしないようにそれとなく伝える。
また、今回の返品について「一箇所に長く留まることがなく、連れ歩くには能力不足である。よって彼女を帰すことにする」とフォローも入れておく。
ダメおっぱいを指差し「分類特殊」と書かれた紙を見せて援護は完璧。
これなら余程のことがない限り突き放されることはないだろうと、担いだダメおっぱいを6号さんの前に下ろす。
「彼女を預かることは問題ありません。しかし何故、元いた場所へ帰さないので?」
やはりそこを訊いてきたか、と俺の彼女に対する認識が正しかったことを確認する。
少しでも情報を引き出そうと自然に振る舞っているのだろうが、それならばこちらも同じことをするまでだ。
「距離」
単純明快にして説得力の塊である理由。
「南移動予定」
加えて「ちょっと南行くことにしたからそいつを返すんだよ? 特に意味なんてないよ?」というメッセージも添付する。
「南、ですか……」
6号さんの顔が曇ったので「何か良くない情報でもあるのか?」と紙に書いて尋ねる。
「いえ、この大森林は北はゴブリン。南はオークが大量に生息しています。数があまりにも多く、大規模な集落ともなれば少し危険ではないか、と……」
おっと、美女に心配をしてもらうのは嬉しいが、俺の力を疑われるのは心外だ。
しかし下手にこの人に情報を渡すのも怖いので、ここは「忠告感謝」と大人の対応だけで済ませる。
持ってきた紙も少なくなってきたので、そろそろ帰るとしよう。
俺が背を向けると6号さんが「それではまた」と声をかけてくる。
「がっがーお」
少々間の抜けた返事をして、振り返ることなく川に入る。
懸念材料はあるが、打てる手は全て打ったと思いたい。
(あとはあの駄目おっぱいがやらかさないことを祈るのみ。ああ、でもあの乳は惜しかった)
相棒不在で正直生殺しだったから、早めに別れることを決めたのだが――やはり惜しくなってくる。
もしかしたら相棒が帰ってきてくれるかもしれないことを考えれば、あの乳は手元に置いておきたくもあった。
(まあ、今は南へ行った帝国人が興した国を見るのが優先事項。しばらくエロを封印する分、しっかり堪能したと思っておこう)
まずは本拠点に戻る。
そして隠したエロ本の山をもっと見つかりにくい場所に隠す。
あのおっぱいのことだから間違いなく拠点はバラされるので、見られたくないものは念の為に処分するか隠すかしておいた方が良いだろう。
本拠点に戻った俺は地下でエロ本を読んでいる。
掃除をしているとついつい見つけた漫画を読みふけってしまうが如く、手にとってしまったのが運の尽き。
「処分」という単語は俺の頭から抜け落ち、どうにかしてこれを隠さなくてはと無駄に使命感に目覚めてしまった。
結果、出発が一日遅れることになってしまったが、隠し場所の出来に関しては満足の行くものとなった。
なお審議の結果、三冊ほどは手放す気でデコイになってもらったが、俺の記憶ではまた本屋に行けば見つけることもできるので、これは必要な出費と割り切った。
これで憂いはなくなったので、帝国の子孫達に会いに行くとしよう。




