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7

 近づくことで予感は確信に変わった。

 正面にある施設跡地に近づけば近づくほど確信はより強いものへと変化する。


(多少形を残しているとは言えこれだけ草も生え放題となれば……)


「何が残っているか?」ではなく「何か残っているのか?」という状態の基地跡。

 国境から然程離れていないのであれば、何も残っていないと考えるのが道理ではあるが、何分お隣さんは科学嫌い。

「もしかしたら?」が通用する可能性も無きにしもあらず。

 何より戦車のような持ち運びが不可能だった物はしっかりと残っている。

 価値がわからず放置されているものだってあるかもしれないのだ。

 折角軍事基地跡があるのだから、使えるものがないか探索するのは当然の選択だろう。

 それに部分的にとは言え、ようやく見つけた屋根が残っている人工物である。

 位置情報が大まかではあるが判明し始めている状況、場合によっては中継地点として出番があることだってあり得る。

 ほとんど残骸と化したとは言え、元軍事基地。

 屋根はあるし地下だってあるだろう。

 だが、こういった場所にはアレが住み着くのが定番――と思っていた矢先、何か音が聞こえてくる。


「グォオオオオオオオッ!」


 何か聞こえたと思ったら今度は何かの咆哮。

 緑のアレでも住み着いてるかと思ったが、どうやら違うものがいるらしい。

 そう思ったのも束の間、川原で嗅いだあの臭いが漂ってくる。

 やっぱりお前もいんのかよ、と思わず舌打ち。


(これはあれだ。何か別の強い種族に率いられているかしているパターンだ)


 国境付近なのだから大して強力なモンスターなどいるはずもなく、これは体を慣らす訓練として丁度良い相手かもしれない。

 念の為にコソコソと声がした方へと向かう。

 するとあっさりと声の主が確認できた。 

 緑色のデカくて二本角が生えた奴――オーガである。

 人型でデカイのは初めてなのでこれは実に良い練習相手である。

 割れた窓と崩れた屋根越しに見えるその背丈は凡そ3mといったところか?

 しかも丁度オーガはその腕と同じくらい太い棍棒を持っている。

 まさに「試すにはもってこい」である。


(まだまだこの体には馴染んでいるとは言い難い。存分に試させてもらおうか!)


 まあ、正直「オーガが棍棒で武装したから何なんだ?」という感想なのだが、段階を踏んでいくには実に丁度良い相手なのだ。

 これが金属製の武器を持っていたなら考えたが、木製の棍棒では脅威度はだだ下がり。

 評価はただの「実験用」で十分だ。

 ハンターとの遭遇フラグがサクッとへし折れたところでちゃんと跳べるか足元をチェック――問題はなし。

 というわけで「行っきまーす」の掛け声が「ガッガゴーア」という感じに変換され、壁を跳び越え着地場所はオーガの真ん前。

 ドスンと着地しガンを飛ばして気がついた。

 人間が何人かいるんですけど?

 というか大量の血を流している者もおり、視界の端に少し映った程度では生きているか死んでいるかわからない。

 今目を離すのはよろしくないので、死にそうかもしれないがもうしばらく待ってもらう。

 しかし気が付かなかったとは言え、この乱入はやってしまったという他ない。


(まさか人間と戦闘中とはなぁ……ゴブリンが臭すぎて気づけなかったわ)


「お手頃実験材料だ!」と馬鹿みたいにはしゃいで目の前に降り立ったのが少し恥ずかしくなってきた。

 こんなところにいる人間などハンターくらいのものだから、フラグは折れていなかったというか。

 一人は生死不明だが、一瞬視界に映った範囲では残り2人はゴブリンが集っているのが戦闘中にも見えたので生存しており、横殴りはマナー違反だとゲーム脳が囁く。

 そんな風に手を出すかどうか少し戸惑ってしまったのが悪かったし、余計なことを考えすぎたのも駄目だった。

 頭部に衝撃――それがオーガが手にした棍棒で殴られたものであることはすぐにわかったが、まさか完全にノーガードでまともに受けることは想定していなかった。

 だが残念、少しクラっとしたが大したダメージではない。

「この体どうなってんだ?」という疑問が湧く。

 恐らくオーガは本気ではなかっただろうが、殺す気でやったことには違いはないだろうし、これでは全力もたかが知れるというものである。

 つまりオーガにはもう勝機はない。

 俺がオーガの攻撃をまともに頭部に受けたことで、周囲のゴブリン共から笑い声が上がった。

 どうやら先程の一撃で勝負が決まったと思っているらしい。

 状況を把握する能力もないようだ。

 そう思ったらオーガもニヤニヤ笑いで棒立ち……こいつもわかっていないとか野生での生存能力を疑うレベルだ。

 取り敢えず一発貰ったのでこちらも一発返すのが礼儀。

 えぐりこむような右ストレートがオーガのボディにクリーンヒット。

「殴った」にしては随分と水っぽい音と何かを折った……というより砕いたような感触を残し、オーガは地面と水平に吹っ飛んでいく。

 緑のデカブツは10mほど先にあるちょっと鉄筋が剥き出し気味のコンクリートの柱に背中から激突すると、そのままの姿でガクンと頭を垂れる。

 距離が離れすぎて逃げられるというのも締りが悪い。

 俺はその場から軽く助走をつけるように数歩踏み出すと吹っ飛んだオーガに向かい跳躍。

 目の前に立ってやろうと思ったのだが、情けないことにこのオーガ君は意識を失っていたらしく、壁から引き剥がされるように前のめりに倒れていく。

 結果、俺はオーガの頭部に華麗に着地。

 グチュリという効果音と共に足の裏から大変気持ち悪い感触が登ってきた。


「グォアァァアァァァ!」


 自分的には「キャー」くらいの悲鳴のつもりだったが、思ったよりもでかくて汚い声が出た。

 えんがちょである。

 足をどけるとねちゃりと糸を引いた。

 R18Gは視覚だけで十分だ。

 俺は慌てて足についたものを振り払うが、その直後にまるで電気ショックでも受けたかのように全身が痺れる。

 今までとは比較にならない痛みが俺を襲うのだが、割と余裕を持って耐えられる。

 原因を探すように後ろに振り返ると、そこには如何にもな杖をこちらに向ける一匹のゴブリンの姿があった。


(こいつ、俺に魔法を使ったのか!?)


 未知の攻撃でこそあれ、タネは恐らくあの杖だ。

 ゴブリンが道具を使うことくらいは知っているが、あんなものを一体どこから手に入れたのか?

 だがそんなことは今はどうでもいい。


(ゴブリンの分際で!)


 俺は一吠えすると杖を持ったゴブリンに向かい跳躍する。

 逃げ出した杖持ちを背後からの一撃でミンチに変えるとゴブリン共は蜘蛛の子を散らすように我先にと逃げ出す。

 手に付いた血肉を一振りで吹き飛ばし、持っていた杖を取ろうとするが……残念なことに折れていた。


(あー、しまった。手加減して殺すべきだった)


 頭に血が上って加減を失敗してしまった。

 魔法を使われた以上手早く倒す必要があったが、手加減をミスったのはまだまだこの体を使いこなせていない証拠だろう。

「また別の機会があるだろう」と気持ちを切り替え、思わず獲物を奪ってしまう結果となってしまったハンター達を見るのだが、生きていると思っていた人間はピクリとも動いていない。

 というか全身が結構グロいレベルで潰れている。

 まあ、囲まれて集られていたのだからボコボコにされてグロいオブジェクトと化すこともあるだろう。

「あと一人いたな」と思っていたら二人いた。

 見落としていた……というよりゴブリンが覆い被さるように集っていたので見えなかったと見るべきだろう。

 こう視線が高いと床に押さえつけられている場合、気が付きにくいというのもあったかもしれない。

 ゴブリンに押し倒されてひん剥かれた女性ということはそういうことなんだろうが、見た感じスタート前か直後かくらいのギリギリなところだ。

 衣服の残骸がかろうじて引っ付いているという乱れ具合――つまりはほぼ全裸。

 それはもう無意識にしっかりと、目に焼き付けるように見てしまうのは当然だから前後くらいはわかりもする。


(っていうかおっぱいでっかいな)


 おまけによくよく見れば美女と美少女。

 美女の方はスカートの一部が申し訳程度に残ってるだけで上半身は完全に裸。

 乱れたセミロングの赤茶色の髪が肩にかかって色っぽく、6号……いや7号あってもおかしくない胸の大きさは自然と視線を吸い付ける。

 美少女の方は気を失っているらしくぐったりとしている。

 服が引き裂かれて下着も剥ぎ取られたままなので全部丸見えのはずなのだが、長い金髪が邪魔をして年齢制限のない漫画のエロシーンのように芸術的なレベルで隠れている。

 写真を撮ってでも保存すべき案件だ。

 胸はまあ普通――2号、あっても3号といったところ。

 意識のある巨乳美女がこちらを睨みながら、ゴブリンのものと思われる血を付けた折れた杖の先をこちらに向け、もう片方の手で気を失っている少女を探すように探りながらずりずりと後ろに下がり始める。

 立つこともできず、こちらから視線を決して外さないよう後方にいる少女を手で探しながら、手と足を使い一歩ずつ小刻みに後ろに下がる度、隠してもいない大きなおっぱいがふるふると波打つように揺れる。

 しばしそのたわわな果実を倍率調整してまでじっとガン見しているとようやく美女の手が少女に触れた。

 少女を少しずつ引き寄せ、その体を起こして頭部を抱え込むように抱いたことでおっぱいタイムは終了。

「ガッ、ハ」と残念そうな溜息が漏れるが構わない。

 少女を引き寄せる際に見るべきものは見た。

 引っ張る度に揺れるところもバッチリ見た。

 ともあれ、二人をどうこうする気はないので、倒れた傭兵の遺品を少しばかり拝借することにする。

 過程はどうあれ助けたことには違いはないので、その礼として頂いておくだけである。

 俺は二人に背を向けると死亡した彼らの所持品であろう背嚢に向かう。

 ついでに頭部が潰れて死亡している男が持っていたと思われる剣も頂いておくことにする。

 わかっていたが持ち手が小さい。

 それでも俺には貴重な刃物なので文句は言わないでおく。

 すると後ろから巨乳美人さんが何か言っている。


「――――! ―――――――――!」


 多分「セイゼリア王国語」なんだろうが、残念ながらさっぱりわからない。

 俺は振り返ることもなくチラリと一瞥しただけで背嚢を片手にその場から立ち去る。

 まだ後ろから何か声が聞こえるが、残念ながら何を言っているかわからないし、そもそも聞く気がない。

 女性二人を放置してこの場を去るのは心苦しいが、彼女たち以上に重要な案件ができたのだから仕方がない。

 そう、俺はあの至福の時に気がついてしまった。

 俺の相棒が何の反応もしていなかったのだ。

 あれだけ見事な生乳をゆさゆさ揺らしてくれていたにも関わらず、俺の永遠の相棒はまるで自分など最初からいないとでも言うように無反応だった。

 というかおっぱいさんがまだ何か言ってるんだが、ちょっと長くない?

 きっと「助けてくれてありがとう!」的なことを言ってくれているのだろうし、ほとんど裸の女が二人ならどうにかして引き留めようとする気持ちもわかる。

 

(すまないレディー……今の俺には君達の声に応える資格がないんだ)


 俺は男として……雄として大事な何かを失ってしまっている。

 こんな精神状態では自分が何をしてしまうかわからない。

 それに、ここはセイゼリアとの国境付近――ハンターならば大物がいなくなった今、二人もいれば無事に帰ることもできるだろう。

 俺は彼女の声を振り切るように基地跡を探索することもなく立ち去る。

「安全圏まで送ってやってもよかったかな」と思わないでもないが、オーガの頭踏み潰した足が今尚もの凄く気持ち悪い。

 これをさっさと洗い流したいし、背嚢の中身が早く知りたいってのもある。

 流石に持ち主の目の前で堂々と漁るのは気が引けるからね、それくらいの常識はある。

「常識を語るなら荷物を持っていくな」という人間もいるかもしれないが、そもそも今の俺はモンスターだから関係ないのよね。


おまけ:帝国式ブラ

1号がBカップスタート。平均は3号とされており、Dカップくらい。Aカップ以下は0号。

例として作中のおっぱいさんは7号。つまりHカップ。


(´・ω・`)次は別視点。ゴブリンはちゃんと出す。わかるな?

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと手軽に読める感じでも無いので、少なくとも地の文改行なんかのもっと読みやすくなるような修正されるまで読むの止めます
[良い点] 面白い! [気になる点] 主人公の主人公は約立たずなの!?
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