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(´・ω・`)エロいから書きやすいのか、このキャラが書きやすいのか判断に悩む。
まさに眼福――その一言に尽きる。
俺は目の前で繰り広げられるヌードショーを首を傾げながら見ているが、ポーズを変える度にゆっさゆっさと揺れる双丘や突き出される尻にしっかりと目が行っている。
映像として残しておきたいのは山々だが、残念ながら使用可能な器材を手に入れることができなかったので脳に焼き付けるレベルで記憶する。
「それでね、ここのポーズと……このページのを合わせてこうなるの」
胸を強調するように俺に見せつけるこのエロおっぱいだが、昨日とは打って変わってノリノリで雑誌で見たヌード写真のポーズを真似たりアレンジしたりを繰り返している。
何故このようなことになっているのか?
その理由は昨晩まで遡る。
散々な扱いを受けたとイジケながらもしっかり用意した晩飯を完食したダメおっぱいだが、流石にこのままでは拙いことになると理解したのか俺に話しかけてきた。
曰く「私にピッタリの楽して稼げる仕事って何?」である。
取り敢えず「まずはその性根を叩き直さないことには始まらない」ということを身に沁みてわからせるべく、俺は一つ芝居を打つことにした。
「お前は自分の体が自慢であり価値があるという。ならばこの本に写る女性のようなことは仕事にならないのか?」
このようなことを言ってみたところ、ダメおっぱいは「その手があったか」と目を輝かせた。
写真の技術がエルフにあるかどうかはさておき、春画のモデルくらいにはなれるだろうとこの時はワザと教えることはしなかった。
それからすぐにダメおっぱいは本棚を漁り、女性モデルが写っている雑誌を片っ端から抜き出していく。
他の部屋にあるエロ本やアダルトデータディスクのパッケージを探し出し、何かを呟きながら真剣に見ていた。
声を出して笑ってしまったが、ダメおっぱいはそんな俺を見てニヤリと不敵に笑うだけだった。
もしかしたら妙な対抗心でも燃やしたのかもしれないが「モンスターである俺にそれはどうなのか?」と少しばかり彼女の頭が気の毒に思えてきた。
そしてその翌朝――朝食後にダメおっぱいが自信満々に挑戦状を叩きつけてきた結果、現在に至るというわけだ。
「男に見られている」という意識が完全に抜け落ちたことで、俺に肌を見せることを躊躇することがなくなり、朝から大変良いものを見させて頂いている。
要するに「体以外に取り柄がないならモデルをやれば?」的なことを言ってみたところこの有様というわけである。
(このダメおっぱいは本気でモデルになるつもりだ。確かに体以外一切取り柄がないのであれば選択肢としてはありなのかもしれない。しかしそんな仕事が帝国以外にあるのだろうか? 他の国なら「そんな回りくどいことをせずに体を売れ」となるだろうし……)
エルフの文化や風習は未だよくわかっていないが、少なくとも「娼婦になる」という思考が欠落していることから、その手の職業はないのかもしれない。
色々と考えさせられるが、結局は「まあ、ダメおっぱいのことだし別にいいか!」となる。
そんなことより今は目の前のおっぱいに集中だ。
ポーズ一つ一つを自分なりに解釈して解説するのは良いのだが、基本的におっぱいに意識が行っているので半分も聞いていない。
いやはや、体だけは素晴らしいだけあって本当に眼福である。
そのボリューム故に腕の位置で形が変わり、柔らかさが視覚を通して伝わってくる。
完璧とまでは言わないまでも素晴らしい造形美を誇るエルフの肢体は、アンバランスに主張の激しい胸のおかげで性的なものへと見る者の股間を直撃するだろう。
(問題は俺の相棒がうんともすんとも言わないことなんだよなぁ。それに、幾ら体が良くても、表情がどれも同じだと見る者の想像力に訴えかける……)
ふとモデルをやっていた姉の言葉を思い出し、紙にアドバイスを書いてやるとそれを胸を腕で持ち上げるポーズ中のダメおっぱいに差し出す。
「……表情にもっと気を使え?」
人間だった頃の記憶だが、姉が写っているファッション雑誌が家に送られてきた際、該当するページを見せながら撮影の苦労を語ってくれたことがある。
実際はただの愚痴だったのだが、結果として「良いものができた」と満足そうに笑っていたのをよく覚えている。
その時の言葉の中に「モデルは容姿や体だけじゃ不十分。撮影場所やコーディネイトでそれに合った表情を作るのが大事」というものがあった。
ただ指示通りに表情を作るのではなく、自分から挑戦していく姿勢が必要なのだと力説していた姉を思い出す。
結局、姉がモデルを辞めた理由を聞くことはなかったが、今のこいつにはもしかしたら必要なアドバイスなのかもしれない。
そう思っていたのだが――
「バカじゃないのあんた? この体に目が止まらない男がいると思ってんの? 下手な小細工するくらいなら同性に『うわ、あざとすぎ』って引かれるくらい自慢の胸を強調してやるわ!」
うん、ダメおっぱいはやっぱりダメおっぱいだった。
もうちょっと楽しんでから返品の予定だったが、今日の昼に6号さんのところに持っていこう。
そして早めの昼食後、俺は後片付けをさっさと済ませ、さも当然のように手伝いもせずにくつろぎ始めたダメおっぱいに用意していた紙を見せる。
「ところでモデルになりたいのはわかったが、そういう仕事がエルフにはあるのか?」
いつの間にか作られていた長椅子に足を組んで寝そべっていたダメおっぱいの鬱陶しい笑顔が目に見えて曇っていく。
「だ、だだ、だだ大丈夫、よ? エルフの街に行けば需要なんて幾らでも?」
「ならいい」と追及はしないでおくが、ダメおっぱいが「どうしようどうしよう」と呟いている。
狼狽っぷりもそうだが、勝手に自分を持ち上げるだけ上げておいて、一気に落ちていく様は最早コントである。
後片付けを終えた俺は再び用意しておいた紙をブツブツと呟くダメおっぱいに差し出す。
「今日エルフに引き渡すから」
不安そうな顔が一瞬にして真顔になりフリーズした。
それからゆっくりと自分を指差すダメおっぱいに「そうだよ」と頷いてみせる。
「どうして!? 私頑張ってるよね!? 私魅力的だよね!? ほら、おっぱい大きいからエロいでしょ!? あんただってずっと私のおっぱい見てたでしょ!?」
そう言って白衣のボタンを外して胸を見せてくるが、予定を変えるつもりは微塵もない。
ずっと見てきたことは否定しないし、このダメおっぱいがエロいのも認める。
しかしだ――俺にも設定というものがある。
「それはエルフ同士で通用する話ではないのか?」
新たに書いた文章を見せるとダメおっぱいがまた固まった。
こいつは俺を一体何だと思っていたのだろうか?
俺は一応モンスターに分類されており、ゴブリンやオークのように人型ならば何でも対象にするような連中と同列に語られないようにはしているつもりだ。
もっとも、できないだけなので可能なら間違いなく襲っている。
蜘蛛男の葛藤が理解できるようになってしまった自分が少し嘆かわしく感じてしまう。
「待って、私まだ死にたくない! お願い、何でもするからそれだけは勘弁して! トイレ掃除だってちゃんとやるから!」
初日にトイレの位置を教えたところ「トイレ掃除くらいあんたがしなさいよ」と言っていたが、そもそも俺はトイレを使用しないどころか、排泄する器官がない。
相棒不在で「まさか……」とは思っていたが、排泄の必要がない食べたものを完全に吸収してしまう体なのだから、帝国の技術は不思議の領域に突入している。
というより普通に怖くなるが、考えても仕方がないのでこの件はそうそうに思考放棄することにした。
さて、俺に縋り付くことで押し付けられるおっぱいの感触は気持ち良いが、あまりイジメすぎても後が面倒。
なのでさっさと種明かし。
「落ち着け。引き渡すのは別の集落だ。ゼサトという氏族が好き放題やっているらしいが、それをよく思わない人物にお前を預かってもらう。それならば安全だ」
俺が書いた文章を読んでいたダメおっぱいが「ほんとに?」と涙目で確認してくる。
それに頷くともう一度確認してきたので「フォルシュナという氏族」と紙に書き足してやる。
大きく目を見開いたダメおっぱいが紙をぶん取りそれを顔に近づける。
「あ、ああ……」
ワナワナと震える手で紙を持ち、何度も俺に確認を取る。
それに対して俺は何度も頷いてやる。
するとダメおっぱいが俺の顔に向かって手招きしたので、膝をついて身を屈め、目と鼻の先に顔を近づけてやる。
「ありがとう! ほんっとにありがとう!」
感謝の言葉を口にして俺に飛びつき、豊かな胸を俺の鼻先に押し付けながら額にキスをする。
落ちないように飛び上がったダメおっぱいを手に座らせ、その感触を大いに楽しむ。
「あんたってところどころ嫌な奴だったけど、やっぱり根は良い奴だったのね! 神様『こんなのが運命の相手?』とか思ってゴメン! めっちゃ良い奴でした!」
折角なのでここで好感度でも稼いでおくかと、6号さんに預けることが安全に繋がる理由も補足しておく。
内容を簡単に説明すると「ゼサトと対立しているフォルシュナにとって、専横の証拠であるお前はきっと役に立つ。むざむざ殺されるようなことにはならないだろう」というものだ。
「最高! あんたってばほんっとに最高!」
それを見たダメおっぱいが瞳を潤ませさらに胸を押し付けキスをしてくる。
なんて現金なやつだと思いながら「お礼の用意くらいはしとけよ」と紙に付け足す。
「よろしい、ならば私の処女を差し上げよう」
ニヤニヤと笑う姿から、俺が自分に欲情するような生物ではないと認識していることが窺える。
なので「その気になったら貰うわ」と冗談を冗談として受け取った風に返事をすると「いつでも来い」と威勢よく啖呵を切るダメおっぱい。
勿論やれるなら頂きに行くので新たな目的が生まれてしまった。
ともあれ、ダメおっぱいを担いで川へと向かう。
そろそろ「6号さん劇場」の時間なので少し急ぐ必要がある。
なのでダメおっぱいにはしっかりとその乳を押し付けてもらい速度を出した。
ちなみにそのままの姿ではただの痴女なので、ロッカーから新品の白衣を取り出し、一枚を腰に巻きつけている。
さて、そろそろ川に到着するかと思いきや、突如ダメおっぱいが何かに反応した。
「あ、今警報鳴った」
音が聞こえなかったので魔法的な何かだろうが、6号さんがいつも無防備で川にいる理由がわかった。
彼女達が退散する前に川に辿り着かなければならないので、更に速度を上げてダメおっぱいを自分に顔に押し付けるように支えてやる。
「ひぃやぁぁ」と悲鳴を上げながら森を抜けると、子供達の前に立つ杖を持った全裸の6号さんがいた。
そして俺を見た悪戯小僧の手から戦利品が滑り落ち、俺の下へと流れてくる。
「アルゴス?」
俺の姿を見た6号さんは驚いたように目を見開く。
流れてきた肌着を掴み、ザブザブと川を歩いて6号さんへ向かって歩くと、子供達が前に出て両手を広げる。
(小さくても男の子だな。そういうのは嫌いじゃない)
ともあれ、まずは用件を済まそう。
肩に乗せたダメおっぱいを下ろし、6号さんに予め用意していた手紙と肌着を渡す。
それをニコニコと笑顔で見守るダメおっぱい――そして手紙を読んでいた6号さんの顔が曇り、ダメおっぱいを見ると溜息を吐いた。
首を傾げたダメおっぱいの心の声を代弁するならば「あれ、思ってたのと違う?」だろう。
何せ「返品」扱いである。
その本人があんなにニコニコしていれば溜息を吐きたくもなるだろう。
溜息のヒント:6号さんはとある委員会に所属している。




