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(´・ω・`)何かを読むと影響されて新作を書き出すこの不具合。
夜――俺の寝床から1m程離れた場所に敷かれた布団の上で眠るアーシルーを見て思うことがある。
「よくこいつ熟睡できるな」と――もしかしたらこいつは大物なのだろうか、という錯覚してしまうが、こいつはただのポンコツおっぱいエルフだ。
今日一日でわかったことをまとめると、このダメおっぱいは大体こんな感じのエルフである。
・生活能力が皆無であり、基本的に自堕落な性格。
・まともにできる家事がなく、毎日食っちゃ寝しつつ楽をして生きたいと願っている。
・そのために体目当ての男の中から金と権力を持つ男を掴まえる。それが自分にはできると本気で思っており、それ故か無駄に自信家で我儘かつ恐ろしくポジティブな思考を持っている。
・見た目モンスターの俺にすら「養ってもらおう」という意思が透けて見えることから、プライドや尊厳とは無縁と思われる。
・趣味は読書。小説を好んで読む傾向にあるらしく、学術的な本には余り関心がない。漫画も好む。興味対象以外には無関心であることが多く、自勢力の有名人すら知らない。
・戦闘能力は皆無。運動神経も悲惨の一言。学習能力の低さも露呈しており、平均的なエルフと比べると全体的に満遍なく低スペック。
・魔法を苦手としており、使用できる属性は火と土のみ。火力はお察し。ちなみに明かりの魔法は生活魔法に分類される「子供用」の魔法とのこと。
・おっぱいがとても大きい癖にエルフらしい細身の反則ボディ。
ここに付け加えることがあるとすれば、後は「国家に対する忠誠心の低さ」が挙げられる。
俺は頭を抱えて隣でぐーすか眠るアーシルーを見る。
(……これの面倒みなきゃならないの、俺?)
こう言ってはなんだが、このダメおっぱいは生活する上で必要な労力を一切捻出できないという致命的欠陥を抱えたエルフだ。
その胸についたたわわな果実で癒やされるのは事実であるが、同様にこのダメっぷりで苛立たされることもあってか、収支をプラスにするには相応のサービスを要求しなくてはならない。
というか徴収でもしなければやってられない。
なので布団と服をめくってその裸体を拝んでやる。
やはり素晴らしい体であると称賛するが、腹を掻く姿には溜息が出る。
(うん、ダメおっぱいだ。残念エルフでも良かったが、俺はこいつのことを女としてではなく「おっぱい」として見ている)
よし、こいつのことはこれからおっぱいとして扱ってみよう。
エルフの集落の状況が変化するには最低でも数日を要することだろう。
これはそれまで辛抱するために必要な措置である。
というわけで隣で眠るおっぱいに悪戯しつつ夜を過ごした。
翌朝、活動時間の割に睡眠をあまり必要としない体故に目が覚めるのは意外と早い。
隣で眠る乳丸出しのエルフに布団をかけてやり、起き上がった俺はまずは顔を洗う。
朝から肉を食うことに最早抵抗がなくなった身ではあるが、隣のおっぱいには少々重い朝食となるだろう。
なのでひとっ走り川へと向かい、監視拠点の荷物も持ち帰る。
どちらかと言えば後者が本命。
いつ起きるかわからないのでさっさと行って帰ってこよう。
既にルートが決まり、獣道のようなものが出来上がっているせいか移動に時間がかからなくなりつつあるこの監視拠点。
バレないように何かしら細工が必要なのかもしれないが、今はそうするだけの暇がない。
川に入って十分な魚を確保し、クーラーボックスに処理を済ませたものを放り込んで帰路につく。
帰ってくるなり魚を焼き、地下に降りるがまだおっぱいは眠っていた。
なので布団を引っ剥がし、ついでに服も引っ剥がして全裸にする。
ダメおっぱいは目が覚めるなり俺を見て悲鳴を上げたが、自分が裸であることに気づいて再び悲鳴を上げた。
「飯にするからとっとと顔を洗ってこい」と書かれたメモを押し付けると、剥ぎ取った白衣を持ったまま一度地上へと上がる。
魚の焼き加減をチェックしつつ食器を用意。
長い鉄串に刺さった魚を皿の上に乗せて簡素ではあるが完成。
地下へと戻り、内股で胸を腕で隠すダメおっぱいを回収し地上へ上がると、白衣を渡して生着替えを見ながら焼き魚に齧り付く。
「魚かぁ……」
そう呟くダメおっぱいを睨むが、それが通じていないのか特に気にした様子もなく魚の刺さった串を手に取る。
「あんたって肉ばっかり食ってるイメージだったんだけど、魚も食べるのね」
そう言って一口食べて「おっ、良い塩加減」と美味そうに魚の腹を齧る。
内臓を処理していることには何も言わないのだから結構いい加減な奴である。
黙々と食事を済ませ、後片付けをダメおっぱいに強要し、それが終わったら文句を言いながらも地下へと移動する。
「真面目な話のお時間です」
そう書いた紙をそっと差し出すと、布団に隠れたので尻を出してパンパン叩く。
そして布団にしがみつこうとする涙目のダメおっぱいを引き剥がし、冷たい床に座らせてもう一度紙を差し出して次を書き始める。
「厳正なる審査の結果、あなたには自慢の乳以外に価値がないことが判明しました。また、その乳の価値も不明であることから、あなたの処遇について話し合いたいと思います」
そのような内容の紙をダメおっぱいの前に差し出すと、それを読み取った途端顔を横に向ける。
見ないふりをするつもりなのだろうが、今度は目の前に持っていくと目を瞑って見ようとしない。
無駄な足掻きをするなと頭を指で摘んで力を少しずつ加えていく。
「いた、痛い! 割れる、割れるから!」
俺の指をペチペチ叩く目を開けたダメおっぱいの真ん前に紙を持っていく。
「ワタシ、フロン語ワカリマセーン」
カタコトのエルフ語で目を逸らす。
なので今度はエルフ語で書いてやる。
するとダメおっぱいが涙目で俺の足に縋り付いてくる。
「待って! 私今里に戻ったらやばいんだよね!? 匿ってくれるって言ったじゃない! 私のことは遊びだったの!?」
さらっと言ってもいないことを捏造し、勘違いしそうな言葉を吐くダメおっぱい。
なので俺も厳し目に事実を突きつける。
「そんなことは言ってない。あとお前には遊べるだけの知性がない」
そう書かれた紙を見て「え?」という顔するが、こいつの頭の中は一体どうなっているのだろうか?
「いやいやいや……待って、もしかして私物凄く下に見られてない?」
顔の前で手を振って笑う乳だけエルフにトドメを刺すべく紙を追加。
高等教育過程で記憶にある計算問題を書き、それを「解いてみろ」とペンを渡す。
そして固まるダメおっぱい。
「ふっ……適当に書いたものなんてどうせ解けないようにできてるんでしょ? っていうかあんたこんなの書いてるけど意味わかってる?」
勝ち誇った顔にイラッときたが黙々と計算式を解いていくと、ちょっと懐かしくなって頬が緩んだ気がする。
サクッと解いて間違いがないかを見直した後、解答用紙を提出するとダメおっぱいが真顔になった。
「ああ、なるほどー丸暗記したのねえらいえらい記憶力あるのねー」
立ち上がって俺の頭を撫でるが口調はおかしく目が泳いでいる。
繕うのに必死なところを懇切丁寧に紙を6枚追加して、どのように計算式を解いたのかを教えてやった。
「おわかりになりましたか?」と煽るように丁寧な言葉で三度目の確認を行う。
表情の抜け落ちたダメおっぱいが俯いたまま動かない。
しばらく待ってみたが再起動する気配はなし。
それほどショックを受けたのかとも思ったが、こいつの性格を考えるに「このまま何も言わずに黙っていれば、きっと勘違いして現状維持ができる」とでも考えていそうである。
なのでペンを持って新しい紙に思い付いたことを書き、それを俯くダメおっぱいにそっと差し出す。
1:自分の価値を提示する。
2:エルフの里に帰る。
3:自力で生きる。
4:非常食。
ダメおっぱいはその紙をしばらく見つめた後、すっと立ち上がると本棚のある部屋に真っ直ぐ歩いていくと、一冊の本を持って戻ってきた。
そして俺の前に座ると持ってきた本を広げた。
(やはり見つけていたか)
アーシルーが持ってきたのは俺が混ぜておいたエロ本――さて、一体どんな理論が展開されるのかワクワクしてきた。
俺が期待に胸を膨らませていると「まずはこちらをご覧ください」とナイスバディの女性が裸でポーズを取るページを開き、真剣な顔で説明を始める。
もうこの時点で吹き出しそうだ。
説明の途中から自画自賛が始まったので、要約すると以下のようなことを言っている。
「このように女性の裸を見ることができる本というのは価値があり、モデルの容姿や体型にその評価は顕著に影響を与える。故に、この胸の大きさを見てわかる通り、私は絶賛されるだけの価値がある。その証拠として、こちらの人気上位を占めている女性は巨乳が多く、彼女達より私の方が胸は大きい」
このようなことをバカっぽく語ってくれた。
なので俺は首を傾げてエロ本を手に取り、開いたページのポーズを取る裸の女性を指差し、次にダメおっぱいを指差す。
両膝を床に付け、両手を頭の後ろで胸を反らした色っぽいポーズと目線が実にそそる。
これをやってみせろという俺の意図を挑戦と受け取ったか、ダメおっぱいが鼻で笑い写真の女性と同じポーズを取った。
しかし白衣は着たままなので、俺は無慈悲に「服」と書いた紙を見せる。
拳を固く握り歯を食いしばるダメおっぱい――しかし意を決したのか勢いよく白衣を脱ぎ捨て、裸になってポーズを取った。
「表情が硬い」
プロを舐めるな、と言わんばかりに被写体の女性との差異を紙に書いて見せつける。
文句を言う度に言いくるめ、何度も何度もポーズを取り直し色んなことをやらせてやった。
結果、取ったポーズは30種を越え、気づけば昼になっていた。
(いや、良い時間潰しになった。6号さん劇場には間に合わなくなってしまったが、中々有意義な時間を過ごさせてもらった)
やはりこのように扱うのが正解のようだと頷きながら、疲労で動けなくなって倒れたダメおっぱいに溜息を吐く。
ともあれ、これならもう数日は面倒を見てやっても良いだろう。
少々早いとは思うが、俺はアーシルーを集落に戻すつもりでいる。
その受取先に6号さんを指名する予定なのだが、彼女に借りを作るのは後が怖い。
なので俺はこう主張することにした。
「お前らはあの穀潰しを俺に押し付けたのか?」
全く以て、物は言いようである。
俺はこのダメおっぱいを預けるのではなく返品するのだ。
これならば借りを作るではなく、それどころかアーシルーのスペックの低さ故に貸しができる。
自分でも惚れ惚れするような名案に思わずがっがっと笑い声が出た。
ちなみにダメおっぱいの評価については「よくわからんから、明日また頑張ってくれ」ということにしたので、明日もきっと楽しめる。
南の確認がもう少し先の話になってしまうが、たまにはこういう休暇があっても良いだろう。




