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(´・ω・`)ブクマ1000人越えました。ありがとなす。
4/26 2150くらいにコピペミスを修正しました。
まだ距離はあるが、何やらでかいのがゆっくりとこちらに向かって進んできている。
その巨体の割に驚くほど静かに向かって来ており、まだ誰も気が付いていないようだ。
取り敢えず「自作の歯ブラシで歯を磨く」はボツになりそうな状況に、俺は溜息を一つ吐くとこちらを警戒していた傭兵達がビクッとなる。
でかい何かは樹海の木の上をスルスルと静かにゆっくりと進む。
近づいてきたことで音がよく聞こえるようになり、相手の形が大体わかってきた。
(うん、でっかい蛇だ。これ)
一言で言うとめっちゃ長い。
はっきりとはわからないが、多分20m以上ある気がする。
となれば相手の正体も予想がつく。
(多分「シャドウヴァイパー」ってやつだな。めちゃくちゃでかい蛇で人間くらいなら一呑みにできるモンスター。特徴がその静かな移動と周囲の景色の溶け込む擬態能力で、その体長は約10m……あれ?)
多分種類は合っていると思うのだが大きさが違う。
変異種か?
それとも特別大きな個体かは不明だが、恐らくこいつが傭兵団の目標と見て良いだろう。
誰かが襲われるのを待ってもよいが、それがおっぱいさんだったら寝覚めが悪い。
彼女には少々悪戯をしすぎたので今回は守ってやる方針で行くとしよう。
というわけで俺は立ち上がるとのっしのっしとキャンプ場を移動する。
傭兵の皆さんがギョッとして俺から離れるが、進行方向におっぱいさんがいることがわかると、その場にいた全員が任せようと謎の団結を見せる。
物凄く嫌そうな顔をしてこちらを見た彼女をひょいと持ち上げ、自分の手に座らせるやっぱりお尻もいいね。
「……今度は何?」
明らかに不機嫌だが今は勘弁して欲しい。
おっぱいさんを持ったままキャンプの中央へと移動すると、そこにすとんと彼女を下ろす。
何がしたいのかわからないおっぱいさんは首を傾げて戻ろうとするが、それを押し留めて蛇のいる方向へと歩く。
キャンプ場の外側から蛇を見続けたことでようやく何人かが気が付いた。
「全員起きろ! 何かいるぞ!」
最初に叫んだのはあの隊長。
その号令で寝ていた傭兵は全員起きて手に武器を持つ。
おっぱいさんも手にした杖を即座に構える。
俺は微かに聞こえる音から蛇の位置を把握しているが、傭兵達は何処にいるのかわかっていない。
何人かが俺の目線を頼りに探しているが、見つけることができていない。
それもそのはず、俺も見えていない。
距離があるからではなく、見えていないとおかしいのだが見えない。
(なるほど、見事に周囲に溶け込んでいる)
夜でも見えるこの目をもってしてもここまで見えないのだから、人間の目では全くわからないだろう。
蛇は温度を感知するので状況的には相手が有利。
というより、俺がいなければ一方的な奇襲を受けていたのは間違いない。
(おっぱいさんが俺を利用しようとするのも頷けるな)
確かにこれなら傭兵団は全滅を覚悟しなければならない。
成功が約束された奇襲というのはそれほどまでに脅威なのだ。
だが、俺に察知されたからか蛇の動きが鈍い。
もしかしたら俺を警戒して襲ってこないのかもしれない。
そう思っていたのだが、今まで以上に静かに蛇が動き出す。
首を上げっぱなしは疲れるので来るなら早く来て欲しいと願っていたところ、傭兵の一人が森の傍へと歩いていく。
「どうせまた。そいつが何かやろうとしてんだろ」
自信はないが、そういう感じのことを言っていた気がする。
その証拠となるかはわからないが、剣の持ち方がふざけているし両手を広げておどけている。
その直後、孤立した男目掛けて蛇が一気に迫る。
それまでのゆっくりとした動きからは想像もできない素早い動きと、頭の位置を確認できなかったことで距離感を見誤り反応が遅れた。
「上だ!」
突如頭上に現れた口を開けた蛇に男はそちらを見る間もなく呑み込まれた。
なんというフラグ回収。
速度も精度も完璧である。
警告を発した隊長が大剣を担いで前に出る。
だが残念、その先に蛇はいない。
予想以上に動きが早い。
恐らく森に限定するならば、あの蛇は俺よりも速い。
(でも、もう遅い。臭いは覚えた。仮にどこまで逃げたところで、追えばいつかは必ず狩れる)
俺は隊長さんの突っ込んだ場所とは違う方向へと跳躍する。
その動きを見ていた数人が何かを叫び、それに反応するようにおっぱいさんが詠唱を始める。
フレンドリーファイアは勘弁して欲しいのだが、と後方が少し怖い。
実際問題、おっぱいさんの魔法なら俺にダメージが通る。
そして俺はちょっと悪戯をやり過ぎた。
(うん、後ろから撃たれても仕方ないかもしれない)
もしも俺を巻き込むような攻撃をしたら、裸にして全身を舐め回して唾液塗れにしてやろうと心に誓い、内心ワクワクしながら蛇を追う。
どうやら蛇も俺を迎え撃つ気があるらしく、その長い体躯をこの狭い森に張り巡らせている。
勝負は一瞬で付いた。
とは言うものの決着が付いたわけではない。
あろうことかあの蛇は分際をわきまえず俺に巻き付こうとしたのだ。
俺としては「接触したら勝ち確定」なので、この時点で勝負ありである。
初手は俺に噛みつこうとしたようだが、背後から迫る上顎を振り返りもせずにワンパンで吹き飛ばし、同時に体を巻きつけてくる。
これを掴んで潰してやろうと思ったのだが、タイミングが悪く突如照明弾のような眩い光に目が眩み、そのチャンスを逃してしまう。
照明の魔法が周囲を照らす中、傭兵団の皆さんは俺がこの巨大な蛇に巻き付かれているのを目撃する。
もしかしたらこのまま絞め殺されるのでは、と思った奴もいるかもしれない。
なので、俺は大変わかりやすく、かつ手っ取り早い解決をした。
つまり、力技で締め付けを破ったのだ。
既に腕は広がっており、大蛇の締め付けは意味をなしていない。
後はどうやってここから抜けるかだが――折角なので俺はこの状況を利用することにした。
必死にこちらを締め付けようとしているならば、俺はその近づいてくる胴体を手で掴むと、その肉を皮ごと毟り取ってやった。
慌てて締め付けを解除し、のたうち回るように逃げ出した蛇の胴体を踏みつける。
(残念だったな。幾ら巨体と言えど、俺に力で挑むなど無謀でしかない)
実際はほとんど全力だったので、実はあんまり余裕がなかった。
蛇の締め付けって思ったよりもヤバい。
これでサイズがもう少しデカければ拙い状況になっていたかもしれない。
ともあれ、勝負が付いたので後は自然の掟に従い死んでもらう。
腹に入るかどうかは別として、そういう契約なので諦めてくれ。
抵抗は自由なので頑張れよ、と心の中でエールを送り、トドメを刺すために蛇の体を引き寄せる。
その抵抗は激しく、蛇が暴れたことで周囲の細い木がなぎ倒され、傭兵達が誰も近づくことができない。
俺はと言うと、蛇の胴体に手をぶっ刺しながら着実に頭部を手繰り寄せている。
ついに頭部を前にした俺に向かい蛇が口を開けて最後の抵抗を試みるも、その頭部を地面に力技で叩きつけ片足で踏みつける。
逃げられないようにしっかりと押さえつけ、腕を振りかぶりその頭部へと向けて一撃を放つ。
決着が付いた。
折角なので呑み込まれた男の位置を調べ、その近くの蛇の胴体を力技でねじ切ると、適当な位置をぐっと踏む。
すると呑み込まれた男がにゅるんと蛇の胴体の切断面から吐き出された。
その光景に驚愕の表情を浮かべる傭兵達を見ながら、粘液塗れの男を掴んでのっしのっしとキャンプ場へ戻り、男を地面に放り投げる。
一応まだ息があるようなので早く措置をした方が良いのだが、誰も動かない。
すると隊長さんが指示を出してようやく動き始めた。
俺はやることをやったので確認を取りに行く。
キャンプ場の真ん中にいるおっぱいさんのところに悠々と歩いて行くと、まず蛇を指差す。
すると彼女が大きく頷く。
ちゃんと目標が達成されたようで一安心。
「実はその蛇ではない」という可能性もあったので、確認は必要だった。
俺が倒した蛇の元に傭兵達が群がっている。
あのサイズなので解体とか時間かかるだろうなと思っていると、あることに気が付いた。
傭兵が全員蛇の方にいるのだ。
つまり、今キャンプ場は俺とおっぱいさんのみである。
これはチャンスであると俺はおもむろに彼女のウィッチハットを持ち上げる。
次に俺の行動を不思議そうに見上げるおっぱいさんのドレスローブの谷間に、指を突っ込んでそのまま下へ下ろす。
大きな胸が顕になるが、おっぱいさんは何も言わずただ大きな溜息を吐くと胸を寄せるようにして持ち上げる。
「ちゃんと覚えとけ」
おっぱいさんはそんな感じのことを言うと、ドレスローブを持ち上げた後、俺の手を叩いてウィッチハットを取り戻す。
やはり俺はおっぱいで覚えていたと思われていたようだ。
帝国:シャドウヴァイパー
王国:ジャイアントヴァイパー




