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(´・ω・`)告知の方にあった一部無料が始まっているようです。詳細はヒーロー文庫のHPでどうぞ。
傭兵団に同行してから約一時間――ただ足場の悪い道なき道を切り開くように進んでいる。
どうやら目標の蛇が何処にいるのかまではわかっていないらしく、闇雲とまではいかないが捜索が難航しているのは確かだ。
それどころか今に至るまで手掛かり一つ見つけることができていないのかもしれない。
(というよりその線が濃厚だな。魔法薬はあって困るものでもなし、手に入るなら欲しいが……別に殺して奪ってしまっても構わないんだよなぁ)
ただそうなると実に興味深い反応をしてくれたおっぱいさんも殺すことになる。
美人と子供は殺したくない俺としては、死なせるには惜しいとも感じる。
だから蛇くらいなら処理してやろうと思うのだが、まさかの手掛かりなしでの捜索からスタート。
「時間かかりそうだな」と本来の目的である野菜が遠ざかっていることに肩を落としつつ、傭兵団とは離れすぎない距離を維持して付いて行く。
近づき過ぎると明らかに警戒を強めるので距離が必要なのだ。
何分殺し合った仲な上、実際何人か殺しているので仕方ない。
さて、このまま当てもなく彷徨い続けるかと思ったが、どうやらちゃんと目的地があったようで、人が切り開いたキャンプ場のような場所に到着。
傭兵団はここをキャンプ地として活動するようだ。
後二時間もすれば日は落ちる。
なのでここらで野営の準備をするのだろう。
「ちゃんと考えているな」と頷き、俺もキャンプ場に入る。
少々騒がしくなったが、気にせずリュックを下ろし、目的の人物を探すと――すぐに見つかった。
俺の監視でもしているのか、意外と近くにいてくれたのでそちらにのっしのっしと移動すると、両手でそっと彼女を持ち上げる。
「こっちも忙しい」
多分そんな意味合いのことを言っているのだろうが、おっぱいさんには役目があります。
俺は両手で彼女を持ったまま移動し、地面に置いたリュックの上におっぱいさんを座らせる。
「見張りをしろって?」
返事はせずに獲物を取りに樹海へ戻る。
後ろから声が聞こえてくるが無視。
絶対興味本位で荷物を見られるので、おっぱいさんには責任を持って見張りをして頂く。
そんなわけで30分ほどで猪を二頭確保した。
両方とも首の骨を折ってはいるがギリギリ生きている。
さあ、悪戯を開始しよう。
両手に猪を抱えた俺がキャンプ場に戻ると、そこはテントや用途不明の何かが設置されており、おっぱいさんは退屈そうに俺のリュックの上に座っていた。
俺の姿を確認すると、彼女は立ち上がり自分の用意を始める。
キャンプ場の外側に猪を置き、リュックからスコップと鉈とロープを持ってくるとおもむろに二頭の首を掻っ切る。
それを木に吊るして血抜きを開始すると、傍に穴を掘って血の流れを誘導する。
その間にこちらは焼き肉の準備に取り掛かる。
石でかまどを作り、その上に鉄板を置いて燃料となる枯れ枝を放り込む。
鉄串を並べて、塩と胡椒を傍に置いたら着火用の魔法道具を使い、燃料に火を点ける。
火力が最大になるまでは猪を解体。
不要な部位は先程掘った穴に入れ、脂部分をまずは取り出し、それを鉄板の上に置く。
その後十分な油が出たと判断したところで猪の脂を鉄板から取り除き、薄めに切った肉を焼く。
塩、胡椒を適量振り、焼き上がるまでの時間で再び解体。
トングを使い肉をひっくり返しつつ、一頭の解体を終わらせると不要部分を全て穴に放り投げ、水で手を洗い布で拭いて実食開始。
鉄串を使い肉を突き刺して食べる様までじっとこちらを見ていた傭兵達は一様に「ええ……」という声や表情で驚愕を通り越して呆れていた。
彼らが食べているのは干し肉と固いパン、それらを食べるための薄いスープである。
明らかに俺が食べているものの方が美味そうだ。
(何せこちらは塩と胡椒。塩辛いだけの干し肉や、ただ日持ちさせるためだけに固めたパンとは出来が違う!)
悪戯が見事に成功を収め、傭兵団の連中は食事を止めてこちらを見ている。
近くにいるおっぱいさんなんか完全に放心していらっしゃる。
肉はまだまだあるので食った傍から焼いていく。
塩胡椒も忘れない。
「おかしいでしょ、それ!」
意訳するとこんなことを言って俺に詰め寄るおっぱいさん。
でも僕モンスターだからわかんない。
なので焼けた小さいお肉を串に刺してそれをおっぱいさんの口に持っていく。
一口大の大きさだがいけるだろう。
「そうじゃなくて!」
お口が大きく開いたところでアツアツのお肉をねじ込む。
「んんー!」と熱さに悶えていたが、長い咀嚼の後にそれを飲み込み再びおっぱいさんが詰め寄ってくる。
「どうして! モンスターが! 鉄板で! 肉を焼くのよ!」
一語一語区切ってくれるので実にわかりやすい。
「しかも! 塩と! 胡椒で ! 味まで付けてる!」
何を言っているのかわからない、という風に首を傾げてもう一度焼けた小さい肉を串に刺して差し出す。
「違う! 肉が、欲しいんじゃない!」
言葉の壁の理不尽さを君にもわかって欲しい――そんな想いを込めたお肉です、と差し出したがこれを拒否される。
なので「いらないならしょうがない」と自分でパクリ。
ふと思ったのだが、俺の顎の前では硬い肉など無意味だが、人間の感覚でなら硬いのだろうか?
完全に常識が崩壊して騒ぐ彼女を宥めるために、三回ほど肉を差し出してみたところ一回だけ食べてくれた。
途中から「何なのよ、もう」と膝を抱えたまま動かなくなったので、仕方なく放置する。
悪戯したかったけど、周りの目もあるのでそれは思い留まる。
一度で良いから肩出しのドレスローブを正面からその谷間に指を入れて下ろしてみたかった。
「小学生だからエロいことをしても許される」という風潮を「モンスターだから」に変えてやってみたかったが、チャンスはまだある。
目標に「ポロリ一回」を追加し、食べ終わって後片付けを開始。
軽く鉄板を水で流しつつタワシで洗い、適当な場所に立て掛けて自然乾燥に任せる。
鉄串は洗ってリュックの中の専用の箱に戻す。
吊るしたもう一頭の猪を解体し、必要な部位だけ手に入れたなら、それを容器に入れてクーラーボックスの中に仕舞って完了。
皮や骨、内臓は穴に放り込むがやはり二頭分となると溢れる。
それから手を洗って水を飲む。
次に鍋に水を入れてまだ燃料が燃えているかまどの上に置く。
この大容量だからこそできる無駄遣い。
程よく温まったところで鍋を取り出し、そこに布を漬けて絞る。
温かい布で体を拭き始めたところで傭兵団から何度目かの「ええ……」が聞こえてきた。
「なんで、体拭いてるのよ」
顔を上げたおっぱいさんがこちらを見て呟く。
「おかしいおかしい」とぶつぶつ連呼するおっぱいさんには少々気の毒なことをしてしまったのかもしれない。
なので新しい布を取り出すと、そちらで即席おしぼりを作って差し出してみる――が、残念ながら無反応。
首を傾げて拭いてあげようとしたら払いのけられた。
仕方がないので広げたおしぼりを首にかけてあげる。
「ひあっ!」
びっくりした声を上げて俺を睨みつけるおっぱいさん。
首にかけられたおしぼりを手にしてそれで顔に近づけて嗅ぐ。
おしぼりが俺が先程使っていたものと別物であるとわかると顔を拭く。
それから胸や腋といった汗をかいていそうな場所を拭いていく。
ちゃんと使っているのを確認したのでおっぱいさんから離れる。
これ以上近くにいるのは彼女の精神衛生上良くないだろうし、良いものが見れたのでここまでだ。
布に関しては魔法薬の瓶が割れないように詰めていたものなので、なくなったところで困るものではない。
拠点に戻れば布は疎かタオルもしっかりと備蓄しているので、あれくらいなら何の問題もない。
さて、時間だけが過ぎていく――傭兵達の半分が休み、残りは見張りとして起きている。
周囲を警戒しているのはわかるが、俺を見る目がすっかり変わって「恐ろしく強いモンスター」から「意味不明なよくわからない生き物」になっていた。
やっちゃったぜ。
それでも近づきたくないのは皆同じらしく、俺をのけものにして遠巻きに見ているだけである。
(あっれー、いいのかなー? そんな態度だとゆっくり近づいているデカブツのこと教えてあげないぞぉ?)
悪戯が成功しまくってテンションが上がりすぎた俺は、少しばかり舞い上がっておかしくなっていた。




