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(´・ω・`)コミックの方が更新されているわよー。コロナExの方で見れるのでまた見ていない暇の人はそちらでどうぞ。ニコニコ静画の方は以前言っていた通り遅れての更新となります。
まずすべきは状況の把握のために情報を収集することだ。
こんな時だからこそ、焦らず冷静にならなくてはならないと望遠能力を駆使してしっかりと観察する。
相変わらずおっぱいさんは見事なおっぱいである。
違った、違わなくはないがそうじゃない。
(目立った汚れがない……)
足を見ればつい先ほどまで靴を履いていたかのように土が付いていないのだ。
そこに気が付いた俺はレナの方も確認する。
三号よりの二号――あの日から成長はしていないようだ。
そうじゃない。
足に注目するとやはりこちらも汚れていない。
つまりここに連れられるまでは靴を履いていた、もしくは何かで運ばれたと見るべきだ。
後者ならば間違いなくあそこで並ぶゴーレムだろうが、二人に目立った外傷や汚れもないことから、あの石の塊が裸の二人を運んだとは考えにくい。
実は軍用ではなく、汎用目的ならば不要な器用さではないだろうが、その場合は逆に戦闘能力が予想よりも低く見積もることとなるのでそれはそれで問題ない。
(恐らくだが捕まった二人はここで身包みをはがされた。ならば捕まった理由は?)
考えなくても真っ先に上がる候補が俺。
「モンスターは殺せ」が一般的な国で取引までしたら目を付けられるのは当然であり、それが権威ある魔術師であるならば尚更だろう。
標的にされたおっぱいさんとそれを庇って巻き添えになったレナ。
多分これだ、と原因の推理を終わらせる。
で、あるならばここにいる連中が魔術師ばかりであることにも納得がいく。
一部見た目でわかるほどに豪華な衣服を着ているものがいるので、恐らくそいつらがリーダー的なポジションだろう。
問題はその目的である。
そもそも懲罰目的とするならばこんな場所にいることがおかしい。
となれば可能性は限られる。
(私刑か……)
狼煙を上げて俺を呼ぶ意味はその理由の証明と言ったところか?
そしてやってきた俺をついでに討伐するためのゴーレム。
なんという完璧な推理。
これは自画自賛も許されるレベルである。
ともあれ、俺が姿を現すと即死刑執行の可能性も出てきたわけだがどうしたものか?
色々とシミュレートしていたところで、よくよく考えてみれば彼女たちとはそこまで親密というわけではないことに気が付いた。
どちらかと言えばビジネスライクな関係である。
おまけに別れはしっかりと済ませているので助ける理由はない。
ないのだが……これを見捨てた場合に発生するデメリットを考えている際、家族がどう反応するかが頭を過ってしまったのがまずかった。
母親からは説教され、姉には殴られ、そして妹には以前と同じような目で見られる。
考えてしまったからには捨て置けない。
頭をガシガシと掻いて息を吐く。
最後におまけで「美人がいるんだから理由なんてそれで充分だろ」と親指をグッと立てる親父が頭に浮かんだ。
美人に甘いのは遺伝と思って諦めよう。
「さて、やるからにはどうするか……」
定番のステルスモードでの強襲が最も成功率が高い――と言いたいが目の前には川がある。
となれば迂回して背後からの奇襲が正解だろう。
念のために最後に相手の数をもう一度確認。
敵の数くらいはしっかり把握しておこうと場所を変えたところで一斉に魔術師たちがこちらを見た。
見つかるようなヘマをした覚えはないが、すぐに別の心当たりが頭に浮かぶ。
(しまった! 警報みたいな魔法は存在するんだった!)
エルフの里周辺にも隠されていたことを完全に失念していた。
俺の魔力感知では発見できない仕掛けの存在を警戒することが正解だったとか、流石に見習いレベルの初心者ではどうにもならない。
「魔法関連はまだまだだなぁ」とぼやきつつ、川へと向かう最中に自分の首にもその魔法関連があることに気が付いた。
ステルスモード中はアミュレットは手の中に隠す必要があるな、とそのまま気づかず近づくようなマヌケがでなかったことは安堵しておく。
ドスドスと真っ直ぐに森を突っ切り川へと出た俺はずらりと並んだゴーレムと対峙する。
数はやはり十体。
しかし左右の端のゴーレムがバリスタをゆっくりと装填して構えている姿を確認する。
どうやらこいつらはそこまで機敏には動けないようだ。
俺は心の中で笑うと自信満々に川へと一歩足を踏み入れた。
「初めましてアルゴス。カナン語なら理解できると聞いている」
一列になったゴーレムより前に出た如何にも貴族風な男が代表して口を開く。
挨拶をされた以上は応えないわけにはいかない。
「如何にも。さて、私を呼んだと言うことは用があるのだろう?」
チラリと吊られているおっぱいさんを見るが、視線が合うなり逸らされた。
「あー、やっぱりこれ俺が原因かー」と心の中でガックリと肩を落とす。
「ああ、用と言う程のものではない。罪人を裁くにも手順は必要というだけだ」
こちらを見ずにスタスタと歩く貴族。
その先には吊るされた裸のおっぱいさんがおり、手には逆手に持った短剣が握られている。
それが無造作に振り下ろされ、悲鳴は上がるがそれはレナのもの一つだけ。
本人は歯を食いしばってうめき声一つ漏らさず耐えており、太ももに深々と突き刺された短剣から鮮血が流れ落ちている。
「同じ魔術師ではなかったのか?」
「同じ? 罪人との区別もつかんか」
所詮はモンスターだな、と鼻で笑う貴族。
今はまだ動かない……というより動けない。
(目的は悟られれば人質にされかねない。あれ? そうすると相手を無視して暴れた方が良かったような? いや、その場合は安全性に問題が発生するか)
力での解決はまだ先の話なので頭を使わなければならないことに不安を覚えるが、最悪全部パワーでひっくり返せばよいだけだ。
レナが何か叫んでいるが、残念ながらセイゼリア語はわからないので心苦しいが無視させてもらう。
焦りが生まれるのを感じるも感情抑制機能が俺の心を静かに押さえつける。
本当に便利な機能である。
「モンスター如きにはわからんだろうが……我々には青く貴き血が流れている。魔術師とは、その血を引く者だけを指す言葉だ。このようなまがい物の罪人と一緒にするな」
吐き捨てるように言ってのけ、短剣をディエラの太ももから引き抜くと伝うその血を嫌悪の表情で払う。
その端正な顔を痛みに歪めながらも睨みつけているが貴族の男はこれは無視。
「見えるか? これが穢れた血だ。魔術の祖たる偉大な者の血を盗んだ大罪人。大人しく退治屋だけをやっていればいいものを……何故こんな連中が生かされていたのか理解に苦しむ。だが、それも今日までだ。この量産型の八式があれば、罪人など不要であることが証明できる」
それは遠回しながら「俺を討伐する」という宣戦布告。
予想とは少し違ったが大筋に変わりはない。
俺が人間だった時代にもこういうことを言う奴がいたのだろうな、と心の中ででかい溜息を吐く。
ならば俺が取る対応はこうだ。
学生時代の友人直伝のプライドばかりが肥大した輩には大変効果的な一手。
「なるほど、貴様は領主というものか」
突然の話題の転換に理解が及ばない貴族男が停止する。
さあ、俺のターンだ。
「法の裁定。刑罰の執行は領主の務めと書物にあるが……その反応を見るにどうやら貴様は違うようだな。だとすれば無法地帯……いや、この場合は貴族とは無法者を意味する言葉か? それと血液が青いとは真か? 病気の類にそのような症例があると記憶にない。問題がないなら医師の診察結果を教えてくれ」
如何にも「知的好奇心から聞いてます」という風に尋ねて煽る。
また相手の話を一切聞いていないフリも加えており、俺にとってはただの観察対象と見られているとわかれば相乗効果で煽り効果はさらに倍。
聞いてもいない語りを始める奴には話を聞かずに一方的に質問して煽れ、というのが友人の教えだ。
この手の輩は自分を否定する言葉や無視に対して怒りを覚えるらしいが……果たして効果のほどは?
しかし反応がないので貴族君を首を傾げてムカつくであろう仕草で覗き込む。
すると笑い声が聞こえてきた。
「――。――」
声の主はおっぱいさん。
何を言っているかは不明だが、まず間違いなく俺に便乗して煽っていることだけはわかる。
負けん気が強い性格は薄々感じていたが「ちょっと現在の自分の立場を考えてくれませんかね?」とは言えず、黙っている。
すると痛みに顔を歪めるおっぱいさんに向かって貴族の男が杖を抜いて火の玉を放つ。
それをなんとおっぱいさんは無事な方の足で蹴り上げかき消した。
(――見えた!)
いや、確かに見えたには見えたが、俺が言っているのは足の指に挟まれた豆粒サイズの光る石のことである。
どうやら魔法を使うためのものを隠し持っていた模様。
吊るされながらも貴族の男を見下ろすおっぱいさんが鼻で笑う。
それが止めとなったのか、怒りを露わにした奴さんの次の行動は――「殺せ!」との戦闘開始の合図だった。
その叫びと同時に姿勢を低くして前に出た俺とその真上を通りすぎるバリスタの矢。
川を一気に突き進み、一番近かった貴族の男へと接近する。
前に出ていたことが仇となったようだが、ゴーレムの一体が割り込みに成功。
見せてもらおうか、王国の新兵器の性能とやらを!
見た目は鈍重なパワー型のゴーレムなので、力勝負になるだろうと久しくしていなかったことからちょっとワクワクしていた部分もあったのだが……振りかぶる動作が遅い。
ガッカリしたところで迫る拳が妙に速い。
思わず「うおぅ」と口の中で驚愕の声を上げつつも、この重量の攻撃をまともに受けてやるつもりはないのですり抜けるように回避。
当然その先には貴族の男がいる。
詠唱中にお邪魔します、と拳の差し入れを行うも殴った感触がエルフの爺さんの時と同じようなボフッという綿のようなもの。
俺が腕を振り切ったところに殺到するゴーレムだが、攻撃以外の動きは大したことはない。
そう思っていたのだが、俺の動きを幾つもの魔術で阻害してくる魔術師たち。
「あ、そういう布陣なんですね」と俺を相手に粘りに粘った老魔術師を思い出しつつ、回避が間に合わなかったゴーレムの一撃を腕で受け止める。
予想通りの重さと衝撃に踏ん張る足が後ろに下がる。
続いて真横に陣取ったおっぱいさんを吊るしたゴーレムが腕を振りかぶる。
その一撃を上体を逸らすように回避しつつ彼女を掬い上げるように宙へと放り投げた。
小さな悲鳴が上がり、ストンと俺の掌に着地するおっぱいさん。
「質問だ。『青い血』とは病気か何かか? 感染する恐れはあるのか? 対処法は存在するのか?」
直後、矢継ぎ早に掌に乗せたおっぱいさんにカナン語で質問する。
「この状況で何言ってんだ?」という顔をされたが、続くフロン語での「もう一人を助ける。協力しろ」の小声で彼女の顔つきが変わった。
さあ、即席タッグといこうじゃないか――と決めたところで悠長にしていたツケが俺の顔面に突き刺さった。
絶対に許さんからな、お前ら。
ということで次回はアルゴスに乗って共闘するおっぱいさん。
書きたい部分をまた一つ消化。
共闘する必要があるので主人公が考えているようなことは起こっていない。なろうだからね、配慮は必要。事に至っていない理由の詳細は後程語られる予定。脱がされてた理由も同様。ついでに色々と発覚する。




