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(´・ω・`)アイス美味しい。

「大きければよい、というものではない。重要なのは結局のところ美しさ――つまりは造形美。では『美』とはこの場合何を指すか? 僕はこの問いに大いに悩んだ。だが答えは出た。男性が女性を見る以上、何処に美しさを感じ取るかなど『女性らしい容姿』が真っ先に上がるのは明白。つまり男が求める理想の女性像こそが、男性にとっての造形美。好みの差はあれ、女性であることを強調するような凹凸のある肉体に『美しさ』を感じない男はそうはいないだろう」


 腕を組んだクラーゼがうんうんと頷き己の持論を展開する。

 俺は彼の主張に「そうか」とだけたどたどしいエルフ語で返事をした。

 ちなみにメダリオンは俺の手にまだある。

 返してほしくば何か有益な情報、と交換条件を持ちかけたところこの様だ。


「これは僕の好みの問題でもあるが……僕は女性の胸を重要視している。わかりやすい女性という部分を強調する箇所である以上、ここの大小は好みの差はあれ重要だ。何よりここの大きさ次第で腰や尻のラインの見方も変わってくる。ある意味では全体を見るにあたり、真っ先に見なければならない中心的な部分ではないだろうか?」


 言わんとしていることはわからなくもないが、帝国でこんな発言をすればまず間違いなく袋叩きにされるだろう。

 しかしながら男ならば誰しもついそちらに目が行くのも事実。

 ともあれ、ここは「そういうものなのか?」とモンスターらしく首を傾げてみせる。


「種族が違う以上、理解が得られるとは思っていないが……恐らくエルフは勿論、人間やその他の人種は似たような価値観を持っているはずだ」


「ソウカ」


「ただ勘違いしてほしくないのだが、胸は大きければ良いというものでもない。アルゴス、君はアーシルーという人物を知っているはずだ」


 知っているもなにもフォルシュナ――つまり、クラーゼ君の氏族に送り込んだ張本人である。

 その辺の経緯を知っているかどうかはさておき、俺は頷いて彼の言葉を首肯する。


「彼女より胸の大きいエルフなど僕の知る限り、アウトーサのラフェミ女史くらいのものだ」


 アレより大きいのがいることに一瞬「マジで?」と聞き返しそうになったが、クラーゼ君の解説はまだ終わっていない。

 どんな重要な情報が隠されているかまだわからない以上、ここは聞きに徹するべきである。


「簡単に彼女らを比較するのであれば、周囲の男の数を見れば一目瞭然だ。ラフェミ女史の周りには常に男がいる。これは彼女が何か言ったのではなく、男たちが自主的に傍に控え、女史から声がかかるのを待っている。翻ってアーシルー。常に周りには男の姿はなく、いたとしても小言か説教。その評価は芳しくない……というよりかなり悪い」


 ラフェミという人物についてはわからないが、ダメおっぱいに関しては「そうだろうなぁ」と同意する。


「つまり能力に差がありすぎる。比較対象にすること自体失礼だ」


「だろうね」という言葉を呑みこみ、俺は黙って続きを促す。


「片やその美貌と能力で人を使う立場に上り詰めた美女。片や胸が大きいだけで他全てが足りない残念女。振る舞い一つとっても歴然の差があり、仮にその胸の大きさが同じであったとしても、魅力の差が埋まることはないと断言できる」


 ここで「だがしかし」と己の定説を覆すようにクラーゼ君が立ち上がり熱弁を振るう。


「その全ての覆すものがある。それがこれだ」


 手にしたエロ本を堂々と掲げ、クラーゼ君はニヤリと笑う。


(そういえば……あいつもエロ本持ち出してドヤ顔してた気がするな)


 人間時代でもエルフが帝国のエロ本に抗議してたことを思い出し「エルフとエロ本は混ぜてはいけないものなのだろうか?」と考えてしまう。

 途中脱線することはあったが、クラーゼ君の主張はしっかり聞いた。

 それを要約すると大体以下のようになる。


・写真なら相手のことがわからないから肢体だけを見ることができる。なんなら自分の都合の良いように妄想するのも自由。マイナス面を完全に排除した美の主張が可能となる。よってその技術がなんとしても欲しい。


 とまあ、こんな感じである。

 その人となりを知ることでのプラス面等は別枠として考えているらしく、そこら辺の質疑応答は「それはそれ。これはこれ」とあっさり流されてしまった。

 要するに「もっと正確で奇麗なヌード画が見たい」的な欲求が暴走しているのだろう。


「他ニ例ハ?」


 情報を求めたのにこれでは不十分だ。

 ポロッと何か秘密を漏らすことを期待して更なる人物情報を求める。


「他か! ならば僕もとっておきを出そう!」


 というわけでクラーゼ君が知っている巨乳美女の情報をペラペラと喋り始めた。

 これはこれで知りたい情報ではあるんだが、もっとこう役に立つものはないのだろうか?

 そんなことを思いつつ彼の話を最後まで黙って聞いていた。

 結局、手に入った情報は共和国内部の美女関連のみだった。

 北部や南部の情報まであるのだから彼の行動力は間違いなく本物だ。

「何故その情熱を他に向けることができなかったのか?」と思わなくもないが、一応共和国内部の勢力図のようなものが俺の頭の中で形になりつつあったので、収穫はあったと見るべきだろう。


「――故に、フォルシュナでの一押しはやはりルシェル様、ということになる。あれだけの胸を誇りながらも全体のバランスが整っている。造形美では間違いなくエルフ全体でも上位。気品ある立ち振る舞いも見事で、我が氏族の華と言っても過言ではない」


「そうなのか」と喉を抑えながらたどたどしいエルフ語で相槌を打ちつつ「わかる」と心の中で頷く。

 あのダメおっぱいとの決定的な差はやはり「品」にある。

 ちなみに私的には「子供好き」の部分も高得点だ。

 情報を上手いこと抜き取ってやろうと思ってのことだったが、思ったよりも良い趣味をしている。

 ただの暴走エロ男かと思ったが、美女の情報をまとめ上げたり実際に見に行く行動力は称賛に値する。

 それからしばし話を続け――と言っても一方的に俺が話を聞いているだけだが――時間が随分と経ってしまっていることに気が付いた。

 俺はメダリオンをクラーゼ君に返却し、彼はエロ本片手に上機嫌で集落へと戻っていく。

「隠せよ」と言うのはきっと無粋だろう。

 去り行く友と呼べたかもしれない男の背中を見送り、俺もまた歩き出す。

 惜しむらくはただ一つ、彼の情熱の元であるそれは、絵を描く技術ではなく写真によるものなので、エロ本を手に入れたところで目標に一歩前進とはいかないことだ。

 彼の行動力が実を結ぶことを、俺は密かに願っておいた。




 余談ではあるが、クラーゼ君のエルフ美女ランキングの上位三名はこのようになっている。


 一位:ラフェミ・アウトーサ

 理由としては普段着の露出度が凄く、夏季ともなれば上半身は長めの布を首にかけているだけらしく、その妖艶さは他の追随を許さない、だそうだ。なお、胸は上位三名の中では一番大きい。是非お会いしたい。


 二位:アクゥラ・アステリオ

 三大氏族のアステリオの「直系」と呼ばれる精霊武器の使い手の有力候補の一人らしい。肉体のバランスが素晴らしいとのこと。情報からの推測だがビキニアーマーの可能性あり。目視ができているなら評価もしやすいか。胸は六号さんと同等。感想としては超見てみたい。


 三位:イスイリミア・ゼサト

 クラーゼ君が遠目からしか見たことがない、というゼサトの術者。呪具と呼ばれる怪しげなアイテム以外身に着けておらず、スッケスケらしい。エロ方面重視しすぎではなかろうか?


 まさか六号さんが上位三名に名を連ねていないことに驚いたが、エロい話ばかりだったのに結構情報が手に入っていることにも驚いた。


(´・ω・`)ほぼネタ回。そろそろ別視点やり申す。その後にまたお話が進み始める感じ。

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― 新着の感想 ―
絵の描き方の本でもやれば?
[良い点] ネタ回というより重要な伏線張りと見た(・ω・)
[一言] なるほど…ぜひ描写されるのを楽しみにしてる(๑•̀ㅂ•́)و✧
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