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(´・ω・`)今回は短め。凡骨2巻本日発売よー。あと作者ページでコミックの方のバナーが見れるわよ。

「意外と器用だとは思っていましたが……」


 俺の人差し指の先に灯る小さな光源を見ながら六号さんがそんな感想を漏らす。

 あれから時間を置いてから再びやってきた彼女に明かりの魔法を教えてほしいと頼んだところ、予想通りあっさりと承諾してくれた。

 習得までの流れとしてはまず初めに六号さんが指先に光球を生み出すのを見せ、その後に簡単な解説をしてもらい、最後に彼女に俺の指を握ってもらっている状態でチャレンジ。

 結果は三度目で成功。

 既に彼女の手は俺の指から離れているが、指先に灯る光はその形を維持したままふよふよと浮かんでいる。


「もしかしたら適性があったのかもしれませんね」


 そう言って微笑む六号さん。

 やはり美人である。

 思わず見惚れる笑顔に呆けてしまいそうになる。

 それを誤魔化すようにメモ帳とペンをリュックから取り出し「日々の鍛錬の賜物である」と書く。


「そうですね。それでも、ここまでできるようになるとは思ってもみませんでした」


 凄いことですよ、と素直に俺を称賛する六号さん。

 正面から褒められるのはどうにも照れる。

 母や姉が厳しい性格だったこともあってか、褒められた記憶が思いの外少ない。

 そして家族が優秀すぎたこともあってか、いつも比較されていた環境では褒める箇所など客観的に見ても見当たらない。

 せめて何か一つくらい彼女たちに並ぶものがあれば、と思えど、その努力が実った試しはなかった。

 我ながらよく素行不良にならなかったものだと感心する。

 仮になった場合を想定しても暴力で制圧されることがわかっていたからではない。

 ともあれ、俺の地道な努力が実り、こうしてあっさりと新しい魔法を覚えたならば、こう考えてしまうのも無理はない。

「もう一個くらいいけるんじゃないか?」と指先に浮かぶ光球を維持しながら、貸し借りの計算を始める。

 だがそもそもの話、立場のある人物が、俺という傍目に見れば脅威としか映らない存在に力を与えることを一体誰が良しとするか?

 そこら辺を考えたところで明かりが消えた。

 まだ使い始めたばかりの魔法故か、別のことを考えながら維持するのは早いようだ。


「もう少し、練習が必要なようですね」


 六号さんがそう言って笑う。

 それから他愛のないやり取りをして彼女は屋敷に戻った。

 収穫として昨夜聞いたカナン王国との共同で俺を討伐する件についてなのだが、どうやら「賢人会議」というエルフたちの国会議員のような存在が集う場で、正式に否決されることになるだろうとの情報を得た。

 この情報の価値は存外大きく、貸し借りのバランスがまた少し水平に近づいた。

 つまるところ新たな魔法を教わるのはまた今度。

 次の楽しみに取っておこう。





 それから特に何事もなく、お昼前に俺は集落を去ることにした。

 長居するのは色々と問題があるようで、時間経過とともに俺を監視する人数がどんどん増えていったことと、六号さん以外の視線がそれはそれは大変居心地の悪いものだったこともあっての決断だ。

 ちなみにフォルシュナの氏族の一員となったダメおっぱいだが、一人前とはいかなくとも、まともなエルフとなるべく特訓中とのことで俺に会わせる気はないそうだ。

 久しぶりにあの乳を堪能したかったのだが、どうやら俺といると元に戻ってしまうと警戒しているようなのだが、それは一体何を根拠にしてのものなのだろうか?

 さて、そんなわけで見送りにきてくれた六号さんに別れの挨拶を済ませ、川を渡り森の中をのっしのっしとのんびり移動する。

 それもこれも、現状エルフ全体の意思として俺を討伐する方向には向いていないことと、カナン王国の共同作戦に参加する気がないことを知ったからだ。

 生まれそうだった厄介事が一つ潰れたことは素直に喜ばしい。

 このまま真っ直ぐ拠点に戻ってもよいのだが……折角ここまで来たので前の拠点にも寄っていこう。

 持ち運べなかったものがほぼそのままの状態で残されていたはずなので、何か必要なものがあれば持って帰るのもよいだろう、という理由からである。

 ということで久しぶりの俺が何度も行き来することでできた獣道ならぬ俺の道を通り、辿り着いたのは崩壊した研究施設の地上部分。

 瓦礫の山と呼ぶに相応しい人工物の残骸の先にあったのは、汚れて使い物にならないであろう布団の山。


(これは流石に使えんなぁ)


 他にも何かないかと探してみたが、やはりと言うべきか、使えそうなものを見つけることはできなかった。

 ただ気になる点が一つあった。

 その場所に近づき俺は臭いを嗅ぐ。


(……血痕らしきものがあったので近づいてみたが、これは予想外だったな)


 血の跡であることは間違いない。

 乾いているが、そこまで時間が経ったものでもない。

 それが何の血であるかなどわかるはずもないのだが、それとは別の発見があった。


(エルフの集落と同じ匂い。ここに誰かが来ている。しかもこの瓦礫をどうにかしようとしている?)


 その時に付着したものを俺は嗅ぎ取ったのだろうか?

 なんにせよ、ここで何かしている人物がいるのは間違いない。

 周囲に誰かがいる気配はない。

 誰かがいた痕跡も見当たらない。


「わからんなぁ」


 判断材料が少なすぎて何もわからない。

 これは放っておいてよいものだろうか?

 しばし立ち止まって考えた後、俺は予定を変更することにした。


「よし、ショッピングモールに行こう」

(´・ω・`)最近家の中ではパンツ一丁なことが多い。次回、その行動の意味がわかる。

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