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(´・ω・`)告知よー。6/28に漫画版が連載開始よー。とりま報告だけ、詳細はまた活動報告の方にでも。

 仮拠点の崖からでもよかったのだが、角度が違えば見えるものもまた違ってくる。

 手入れなど一切されていない自然の中に身を潜め、ただじっとその時を待つ。

 そして彼女たちはやってきた。

 人数は三人と少ないが、重要人物である六号さんがいるので問題ない。

 新たに得た情報から三大氏族であるフォルシュナには「精霊弓」なる極めて危険な兵器が存在する。

 その氏族で高い地位にある彼女を観察することで、そこへと至る道を探るのは合理的な判断である。

 川へと足を入れるエルフの女性というのはどうしてこうも絵になるのか?

 邪な心がにょっきりと生えてくるイメージを思い浮かべてしまうが、これは重要な任務――真面目な時間である。

 靴を脱ぎ、水面を蹴って談笑に興じる彼女たちを眺めながら、断片的に聞こえる声から情報を拾おうと耳を澄ませる。

 近づきすぎれば警戒網に引っかかる。

 故にこの場からは動かず、ステルスモードでの監視となる。

 ただじっと彼女たちを見つめる。

 会話の内容も概ね把握してはいるが、そのほとんどが日常的な会話であり、特に有用な情報は得られなかった。

 そして時間がやってくる。

 水の感触を堪能したエルフたちは濡れた足を布で拭き、靴を履くと森へと帰っていく。


(……水浴びタイムは?)


 残念なことに冬季は着実に近づいており、冷たくなり始めた水と肌寒い空気の中で川に浸かる者などいるはずもない。

 わかってはいたことだった。

 だがしかし、もう少し……もう少しだけでもその時期を延ばすことはできなかったのかと地面に拳を打ち付ける。

 せめて今日という日が暖かければ、と涙を飲んだ俺は、ステルスモードを解除して獲物を探し始める。

 集落を訪ねることになるのだから、手土産は必要である。

 適当に鹿か豚でも仕留めて持って行けば、向こうも無下に追い返すことはしないだろう。

 そんなわけでサクッと豚を仕留め、獲物を担いで川を渡る。

 エルフの警戒網を越えたことで誰かがやってくることが予想されたが、俺の視界の範囲にはそれらしき人影は映らなかった。

 その代わりというべきか、集落の前で待ってくれていた六号さんとその護衛と思しき取り巻き。


「ようこそ、アルゴス」


「ツマラナイモノデスガ」


 喉を押さえ、指を動かして発声しているように見せかけながら六号さんに返礼し、隣の男に獲物を渡す。

「また変なこと覚えてきやがったな」という周囲の視線を無視し、苦笑いしている六号さんに「今日も美人ですね」と愛想良く振る舞う。

 露骨に嫌そうな顔をする男衆を横目に今回の来訪の目的を告げる。


「植物の種、ですか?」


 モンスターが作物を育てること自体はオークという前例がある。

 しかしこのように人類種に聞きに来ることは流石に前代未聞なのか、周囲の反応は呆れを通り越して絶句であった。

 但し、六号さんは嬉しそうにしている。

 俺のことを亜人――つまりは知的生命体として認定した人物としては、俺の生産的な行動が好ましいのだろう。

 こうして好感度を稼いでいくことで、多少の無茶なお願いも聞いてもらえるような関係となりたいものだ。

 直に日が沈むという時間なので、これ以上お邪魔するわけにはいかないのが人間。

 でもモンスターらしく振舞うためにそこは気にせずを貫く。

 こういったところでさり気なくミスを犯すことで、まだまだ不慣れ感を演出し、疑いを持たれないようにする。

 モンスターと思われるが故のデメリットもあるが、現状はメリットが優勢だ。

 各種問題が解決するまでは、お隣さんとして振る舞う方針は変わらない。

 さて、そんな非常識な俺に何か言える者がいるはずもなく、現状扱いが極めて慎重を要する案件故に「迎え入れる」以外の選択肢が難しいエルフ側。

 予想通りフォルシュナの氏族に丸投げし、予定通りに俺は六号さんの住む館にまで付いて行く。

 筆談も交えての六号さんとの会話は実に有意義な時間であったと言っておく。

 時間にして二十分足らず、といったところではあったが、やはり美人さんとまったりするのは良いものである。

 会話の内容は概ね近状報告のようなものであったが、幾つかの情報は当然伏せている。

 南側でのゴブリン退治と新しい拠点の確保、野菜の種を入手したことで手軽に栽培できる範囲での簡単な手解きを願い出るといった面白味のないものだが、六号さんはしっかりと聞いてくれた。

「未知のモンスターに対する協力」も言い出そうかと思ったが、流石にこれはまだ早い。

 理性を失い、相手を食い殺す姿を見られるのもそうだが、エルフの前で眠った姿を晒すのはもっともまずい。

 自分から言い出すのではなく、向こうから言ってくるのであれば、状況を整えることも容易い。

 共闘という好ましくないケースを回避するためにも、慎重に踏み込む必要がある。

 食事も終わり、貸してもらった本のページを小指で捲りながら、親指の先に浮かぶ小さな火を明かりに読み進めていく。

 本の中身はエルフがよくやるガーデニングについて書かれたもので、その中にある家庭菜園の項目にしっかりと目を通す。

 今回俺が持ち込んだ野菜の種に合った本や道具も貸してくれるとのことなので至れり尽くせりである。

 ちなみにその本の内容なのだが、俺が見つけた家庭菜園の本の中身と大差がなかった。


(手段こそ科学的か魔法的かの違いはあれど、行きつく先はほとんど変わらないというのは面白い話だ)


 俺は静かに笑った。

 夜も更けてきているので、静かにするのがマナーである。

 本を読む程度の明かりならば、小さな火でも問題ない。

 訓練の成果を見せつけるように、頼りない灯を維持していると俺の耳が足音を拾う。


「ナニカヨウカ?」


 指先に灯る火を消し、喉に手をやった俺が薄っすらと見える人影に問う。

 現れたのは一人の男。

 記憶に間違いがなければ、フォルシュナの男衆の一人で、俺の拠点を破壊する際に同行していた人物であったはずだ。


「……一つ、貴様に尋ねたいことがあってな」


 男は俺の代わりに光球を掌から生み出し、月を仰ぎ見るかのように空を見上げる。

 男の言葉に頷いて「質問をどうぞ」と意思表示すると、一つ息を吐いて俺を見据える。


「隣国の……カナン王国が慌ただしい。新種のモンスター関連であることはわかっている。お前は一体何をした?」


 警戒されている――というより、これが普通の反応だ。

 俺はどう答えるべきか考える。

 正直に話すのであれば、最初からが都合が良い。

 何せ仕掛けられた側となれる。

 しかしその場合、俺が「国家」という概念を理解していると推測されることに繋がる。

 何せ、俺はカナン王国でしか暴れていない。

 目撃情報はセイゼリアにもあるにもかかわらず、そちらには一切手を出していないのだ。

「怪しまれるのは間違いない」と俺のなけなしの脳みそが警戒を促す。

 だからと言って嘘を話すのはもっとよくない。

 エルフ側がどの程度正確に情報を集めているかを俺は知らない。

 六号さんは歓迎するかもしれないが、正直に話せば警戒度の上昇。

 嘘を交えればなけなしの信用の低下。

 この嫌な二択に悩んでいると、沈黙をどのように受け取ったのか、男はその質問をするに至った理由を話し始めた。


「……カナンから我々共和国に接触があった。その内容は『アルゴス』と名付けられた新種のモンスターを共同で討伐したいとのお誘いだ」


「……マジで?」


 予想外の内容に、喉を抑えることを忘れた俺が素の声で聴き返した。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしこのエルフの男が主人公に対して良い感情を持っていなくても、客人に対して貴様呼ばわりは普通に失礼なのでは……? エルフって人間に比べて交流が少ないから、言動が失礼なヤツが多いっていう設定で…
[一言] ・・・いや、ワンチャン誤魔化せるんじゃないか・・・? 主人公が普段使う使い慣れた言語は滅んだ旧帝国語のはず・・・。エルフ語で「マジで?」ってとっさには出てこないと思うが、エルフ語でマジで?っ…
[一言] うっかりは草ですよ
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