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(´・ω・`)お待たせ。ちょっと体調を崩して寝込んでました。

 嫌な予想と言うものは往々にしてよく当たるものである。

 単純にそのような場合の記憶が残りやすいだけかもしれないが、最早何処に何があるかを判別することすらできなくなった案内板を見て肩を落とす。

「まあ、そんなものだろう」と受け入れれば良いものを、俺は腹立ちまぎれにガタガタと金属製のそれを揺らす。

 しかしながら収穫がなかったわけではない。

 僅かに残る色の痕跡から矢印の向きと文字を推測。

 一先ず総合センターへと向かい、そこで情報を集めることにした。

 幸いそれっぽい建造物は直ぐに見つかった。

 壁に囲まれた巨大なテーマパークと言えど、長年管理もされず風雨に晒されればどの建物もボロボロだ。

 崩れ落ちたものがあるほどに見通しは良くなり、目的の建物を発見しやすくもなる。

 問題があるとすれば、その遠目からでもわかりやすい見た目をしていたであろう総合センターが倒壊していたことだ。

 その重量を支えきれなくなった支柱が折れ曲がり、地面に激突しているオブジェクトが出迎えてくれた建物は一言で言えば瓦礫の山だった。


「崩れてんなぁ……」


 不幸中の幸いか、瓦礫を適当に除去しつつ何かないかと調べてみたところ、都合良く状態の良い案内板を発見。

 地面に這いつくばって瓦礫の間に顔を突っ込むことになったが、中央管理センターの位置を知ることができた。

 ついでにテーマパークの全体像もある程度明らかになった。

 南側を読み取ることはできなかったが、北側は大体何があるかわかったことで、判別不明なエリアに何があるかを想像できる。

 俺はのっしのっしと荒れ果てたアスファルトの道を歩く。

 歩きながら周囲を見渡し、あの時計以外にも何かしらの魔法的な処置を受けた物はないか探しているのだ。

 当然のことながら成果は一切なく目的地に到着。

 わかりきったことだが人間用の建造物なので俺が入れる入り口など何処にもない。

 比較的マシな状態の建物とは言え、この巨体の侵入口を作ってしまえば崩壊する危険があるのは間違いない。

 なので入念に建物の周辺を探ってみたところ、少し離れた場所にここと繋がっている搬入口があることがボロボロの看板から判明した。

 正確な位置まではわからなかったので周囲を適当に散策してみたところ、思ったよりも簡単にそれらしい場所を発見。

 強固なシャッター故にゴブリン程度ではどうにもならなかったらしく、原型をしっかりと留めている箱型の建造物を観察する。


「出入口は一つ。センターとは地上部では繋がっていないから地下か……」


 生き埋めにならないように気を付ける必要があるな、と状況を確認しつつシャッターに手をかける。

 このような他生物が侵入していなさそうな場所は貴重である。

 よって、出来得る限り壊さないように慎重にシャッターを持ち上げる。

 状態によっては諦めていた拠点化も現実味を帯びてくるので、割と本気で力加減を調節した。

 その甲斐あって無事シャッターは変形し、俺の手形というおまけ付きで扉としての役目を終えた。


(見た目は無事っぽかったけど、さび付いてて奇麗に持ち上がらなかったんだよ!)


 自分に言い訳をしながら、ゴブリンの侵攻を防ぎ切った防壁に別れを告げて中へと入る。

 そこには、俺が望んだ手つかずの拠点候補はなく、見事に荒らされた倉庫跡の姿があった。


「ああ……うん、向こうと繋がってるんでしたね」


 目に付くのは破壊された機材や持ち出されたであろう空の箱。

 木製は原型を留めていないものがほとんどだが、金属製や合成樹脂で作られた箱は壊されていない。

 もしかしたら、と状態の良いものを調べてみたところ、幾つか鍵がかかっているために未開封のものがあることがわかった。

 中身に関しては有用なものはなかったので割愛するが、一つだけ使えそうなものがあった。


「おお……予想以上にピッタリだ」


 布が敷き詰められた底の浅い縦長の長方形に収まったサーベルを見て感嘆の声を上げる。

 今までずっと刃がむき出しだったので気になっていたのだが、思わぬところで解決した。

 切れ味自体はそれほどでもないので荷物が切れる心配はなかったが、気になるものは気になるのだ。

 さて、他に目ぼしいものは見当たらないので奥へと向かう。

 そして早速通路で詰まった。

 人間用は狭くて辛い。

 仕方がないので荷物を置いて再チャレンジ。

「強引なのが好きなんでしょ?」と狭い穴のような通路を身をよじるようにして力業で突破。

 ドアを周囲の壁ごと破壊して部屋を一つずつ調べていく。

 天井が崩れないか不安だったが、無事それっぽい部屋に辿り着けた。

 大量のモニターが設置された一室に横たわるように体をねじ込み、休日をテレビを寝ながら見るオッサンのような体勢で前方の機器に手を伸ばす。

 操作を試みてはみるものの、何をしても反応がない。


「問題がわからんなぁ」


 電気が来てないのか、それとも機械が故障しているのか?

 はたまた電力ケーブルに問題が発生しているのか?

 知識がないため何もわからない。

 仕方なく別の場所を探すため、壁をちょこちょこ壊しながら探索に戻る。

 日付が変わり、夜明けまでもう間もなくと言ったところでようやく収穫らしき物を発見。

 それを外へと運び出し、両手で持ったそれをくるりと一回転。

 四角い重量感のある金庫の状態をしっかりと確認すると、恐らくは未開封のものであると期待で胸が膨らむ。

 しかも魔力反応がある。


(つまり、魔法的な措置をしてでも残したいものがここにはあった。もしくは、そのような手段を取ってでも、守ろうとした何かがある)


 書類関係であった場合は内容次第。

 データディスク等であれば、それを使用できる施設等を探さねばならないためハズレ。

 可能性は低いが貴金属ならばアタリである。

 では早速、と金庫をこじ開けにかかる――が、予想に反しビクともしない。

「なるほど、魔法で頑丈になっているのか」と想定を変更し、再度力を込めて挑戦。

 それから一分ほど格闘してみたが、全力を出してもダメだった。


「ほうほう……素手では無理か」


 流石は祖国、この力を以てしても破壊できない頑丈な金庫とは良い仕事をする。

 そこで取り出したるは帝国製のタワーシールド。

 両足でしっかりと金庫を固定し、俺の全力キックでも破壊できない合金の塊を思い切りぶつける。

 響く金属音に体が震えるも、何度か繰り返すことで金庫が変形。

 あとは隙間に盾をねじ込み穴を広げ、中身を破損させることなく取り出すことに成功した。

 それで肝心の中身なのだが……はっきり言うとハズレである。


「……見た感じ重要そうな契約書やらの書類にデータディスクのみ」


 苦労した甲斐がないな、と肩を落としつつ、手にしたデータディスクを裏返す。

 そこには「戦闘データ」と書かれたラベルが貼られており、丁寧にめくる書類の中に「エルフ」という単語が見えたことから、戦争時のものと推測。

 かなり中身が気になるが、残念なことにこのデータを再生できる無事な機器を俺はまだ確認できていない。

 もしかしたらこの施設の何処かにあるかもしれないが、ここまでの探索で魔力の反応があったのはあの金庫のみである。

 指に挟んだデータディスクを弄びながら、書類の束をめくっていく。

 パラパラと紙をめくる音だけが荒らされた倉庫の中で静かに響く。

 以前に比べ、幾分器用になった指先で書類を一枚摘まみめくる。

 さっと目を通し、今の自分には関係がないものは飛ばして次を見る。

 少ししてすぐに作業と化したその動きは突如、思いがけない単語が見えた気がしたことで止まった。

 めくった紙を一枚戻し、指先で帝国語で書かれた文章をなぞっていく。

 そして先ほど目に入った単語を見つけた。


「……キメラ計画」


 予想外の収穫に思わず呟いてしまった。

 ここにこの名前が出てくると言うことは――先ほどの「戦闘データ」とはどちらのものなのだろうかと考えてしまう。

 それを知るためには探さなくてはならない。

 このデータディスクの中身次第では、最大の問題を解決できるかもしれない。

 だが、それはあくまで可能性の話だ。


(それでも、探す価値は十分にある)


 まずはここを徹底的に探索する。

 しかしその前にやるべきことが一つある。

 夜明けまではまだ少し時間はあるが、俺は手にした書類の内容に目を通し始める。

 明るくなるまで待った方が効率は良いだろうが、はやる気持ちを抑えることはできなかった。

(´・ω・`)今日は一巻の発売日でございます。なので紹介文をちょっと変更。

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なんでテーマパークに軍事機密が?
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