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(´・ω・`)歯磨き粉が目に入った。思いの外痛かった。あと今回からまた短めに戻して再開。あとがきにおまけもあるよ。今年は花粉症なのかくしゃみと鼻水がきっつい。
鬱蒼とした森をかき分けるように進む。
精霊剣の奪取を諦め、冬に備えるべく移動を開始してから早二日――旧帝国領南西部にまで到着した。
この周辺に足を踏み入れるのはこれが初めてとなるが、以前南部に移動した時と同様に密度の濃い樹木で度々足が止まってしまう。
「生態系が南部に近いのはわかったが……密度はこちらがやや上か?」
地味に湿度が高い気がすることをぼやきながら、隙間から覗く青空を見て、今日一日は天気が崩れることはないだろうと安堵する。
道を作り、時には迂回をしながら進路を南西に突き進む。
この分だと自然の浸食具合も酷いことになっているだろう。
無事な建造物など見つかることはなさそうだ、と大きな溜息が出てしまう。
そんな時に丁度木が生えていないスペースを発見し、思わずそちらに立ち寄ってしまう。
「あー、ここは元駐車場か何かか?」
植物に覆われているとは言えど、崩れた屋根を始めとする僅かに見える残骸が辛うじてかつての面影を残している。
小休止するには良い場所と判断し、移動を一時中断して周囲を調べて回る。
植物に完全に破壊されていないとなれば「単純に舗装された地面ではないのではないか?」と思ったからだ。
なお、結果は言うまでもなく何も見つからなかった。
ただ単に偶々そうなっていただけのようだ。
軍事施設でも近くにあったのかと少し期待していたのだが、わかったことと言えば元々は結構な大きさの駐車場だったらしく、ここが中心部分だから緑化が遅れていた可能性が高いということだ。
車が一台もないのは所有者が乗って逃げたからだろう。
今のところこの場所を有効活用するアイデアは思い浮かばない。
「こんな場所があった」と記憶しておくだけで十分だ、と移動を再開。
それから程なくして緑に覆われた巨大な建造物を発見した。
思わず口を開けて見上げてしまったが、この建造物跡――俺の記憶が確かならば帝都を除けば最大規模で作られた総合施設の入り口のはずである。
一部原型を留めている巨大なアルファベットからの推測ではあるが、それ以外に該当するようなものを聞いた覚えはない。
「貴方の欲しい物が全て手に入る」をキャッチコピーとする複合型サービスエリア「アルマ」は多数の企業が出資し、優に百を超える店舗数を誇るテーマパークだ。
(まあ帝都に住んでた俺には縁がない場所だったけどな)
全く以て身も蓋もない感想を抱きつつ、この新たな発見は俺に一つの希望を齎した。
さて、この「何でも揃う」をテーマに作られたアルマだが、そこにあるのはお店だけではない。
ショッピングは元より、映画鑑賞やスポーツを初めとする各種レジャー施設も用意され、その外縁部には幾つものホテルが並び立つ。
観光地としての成功こそ収めることができなかったものの、その収益は決して悪くはなかったと聞いている。
ならばここには大量の物資が運び込まれていたことになり、まだ使用に耐え得る何かが残されている可能性も十分考えられる。
帝都は吹き飛んでしまっているが、それに次ぐ規模である。
これが期待できないわけがない。
「迷宮」とまで揶揄された地下街の存在も、俺の新たな拠点候補として非常に心強い。
「温泉を探してこちらまで足を運んだが……こっちを優先しても良いな」
少々距離はあるが、道さえ作ってしまえばいつもの監視拠点への往復が現実的なものとなる位置であることもポイントが高い。
ここの資材を用いて中間地点に何か設ければ毎日の往復すら夢ではないのではなかろうか?
そんなことを思いついてからの行動は早かった。
緑をかき分けいざ出陣。
ここが俺の新しい戦場である。
植物の浸食が激しいことに一抹の不安を覚えるが、テーマパークを囲う壁が中々良い仕事をしてくれていたらしく、中は思ったよりも酷くない。
つまり連中がいる。
(南は……オークだったか)
本日よりここは正当な後継者である帝国臣民であるこの私が受け継ぐ。
許可のないものは力づくで排除する。
ところがそんな風に意気込んでみたはよいものの、ゴブリンもオークも見つからない。
いや、生きている連中が見つからない、と言うべきか?
色々と見て回った結果、どうやらここはゴブリンとオークが縄張り争いをしている真っ最中の土地である可能性が浮上してきた。
(なるほど、植物が刈り取られているような部分があるのはその所為か)
ここであることに気が付いた。
俺がこのテーマパークに入ったのは東口。
そして現在位置はそこから南――中央からは距離があり、北側から来ていると思われるゴブリンがここまで進出していることになる。
つまりここで行われている「ゴブリン対オーク」はゴブリンが優勢。
「エンペラーが死んだからオークが各地に散って、むしろそっちが優勢になりそうなもんなんだが……
はてさて、一体何が起こっているのやら?」
フロン評議会の戦況が上手く行き過ぎていたとしても、ここでは距離があり過ぎる。
統率個体の有無もあるだろうが、オークを統率していた遺伝子強化兵がいるならば、と考えてしまう。
「……調べるか」
仮にそうであった場合、友好的な接触は可能か否かを知っておきたい。
問答無用で捕食を試みるほど獣ではない。
情報の交換、共有はでき得るならばやっておかねば後悔する恐れがある。
相手側にその意思があればの話ではあるが、何も知らない状態であるならば可能性は十分にあるはずだ。
そんなわけで探索に隠密を追加。
擬態能力を使用して、周囲に溶け込みながら北へと進路を変更する。
するといるわいるわ緑のアレ。
捕らえたオークを見世物のように扱い、縛り付けて的にして遊んでいる。
取り敢えず、ここはゴブリンとオークが争う地であることは間違いないようだ。
幸い、人類種がここに運び込まれたような形跡はなく、数の多さから女王がいることは確実であり、それに加えて何かしらのイレギュラーが存在しているように見受けられるくらいには、妙な統率が確認されている。
しばらく観察しながら奥へ奥へとこっそり進む。
まずは女王の位置を把握しておきたいが、地上にいるか地下にいるかで発見にかかる時間がかなり変わる。
擬態能力の制限時間内に見つけることができれば良いのだが……そうでない場合は一度引くべきか否かが悩みどころである。
(´・ω・`)情報公開よー
はい、知ってる人もいるでしょうがコミカライズでございます。
公式HPやTwitterでも情報が出てる頃合ですので、そちらでも確認ができます。
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原作:橋広功
漫画:北島あずま
構成:雨銛 ※ヨミ:あまもり
キャラクター原案:みことあけみ
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まだ先の話ではありますが、漫画版の本作もよろしくお願い致します。




