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117

(´・ω・`)別視点入れるつもりが間違ってこっちを書いてしまう。次は別視点で117に入れるかも。

 こういった現象を何かの法則と呼ばれていたのは記憶にある。

 しかしながら、極々普通レベルのゲーマーであった俺の場合、もっとしっくりする呼び方が存在する。


「物欲センサー、こんな姿になってもあるんだなぁ……」


 エルフの里から近い位置に拠点を探せど見つからず、カナン王国へと向かい北へ進路を取ったところ探し物が見つかった。

 それは緑に覆われた建造物――未だ原型を留めていることから、頑丈に作られていたものである可能性が高い。

 一度拠点に戻り、必要な物だけ持って北へと移動中に木の密度が低い部分を見つけたから近くに来てみればこの発見だ。

 周囲には既に自然に浸食され最早何であったか判別不能となったオブジェクトがあり、瓦礫には緑の化粧が満遍なく施されている。

 念のために何かしらの施設であったと思われる範囲を見て回る。

 無事な建造物は一つだけ……だがその一つも自然の浸食が激しく、使用可能かどうかは中を見てみないことにはわからない。


(……形状から察するに倉庫? いや、恐らくここは元軍施設。となると、倉庫というよりは車庫か)


 この巨体でも十分に入るサイズの入り口を見てそのような結論を出す。

 シャッターを開ければその正体も判明するが、その前に周辺の状況をしっかりと確認する。

 この建造物が入り口を作成した際に倒壊しないという保証はない。

 折角見つけた新しい拠点候補地である。

 単純なミスで失うことがないよう、しっかりとチェックをしてからシャッターをこじ開けさせてもらう。

 ということで約30分ほど建造物の周りをグルグル回りながら破損状況を調べた。

 その結果、窓は割れていたがそれ以外は概ね問題なしと判断。

 素人が見た目で判断しているので確実なことは言えないが「多分大丈夫だろう」くらいの安心感は手に入った。

 あと窓があった場所から覗き見たが、中は物資がほとんど残されておらず、ここが倉庫だったのかそれとも車庫だったのかはまだわかっていない。

 そんな訳で「がっがー」とシャッターをベキベキ音を立てて持ち上げる。

 普通に喋ることができるようになったが、つい癖で鳴き声を発してしまう。

 左右のバランスを調整しつつ、力業でこじ開けたため大きく変形したシャッターを潜り抜け、中に入って一言。


「……自然パネェ」


 窓が割れているから中もある程度浸食されてるだろうな、くらいに考えていた。

 取り合えず想像の5割増しの惨状に俺は大きく溜息を吐く。

 窓から見た感じではそこまで酷くはなかったのだが、全体が見えるようになるとがらりと感想も変化する。


(これは使えるようにするのに時間がかかりそうだ)


 この状態であっても貴重な屋根のある建物。

 見逃すという選択肢はない。

 早速中を調べてみるが――やはりと言うべきか地下施設はなかった。

 色々と発見したものはあるが、当然それらの中に有用なものはなく、車両を整備する際に用いられる道具や予備のタイヤ等からここが車庫であると判断する。

 戦車も入るだけあって中は広く、俺が軽く動けるくらいには余裕がある。

 だが所詮は大きな車庫。

 頑丈に作られていたから残った――ではなく、運が良かったから残っていたのではないかと考えさせられる天井の歪み具合を下から見上げ、本拠点にするには少し不安があることに溜息を吐く。


「仮拠点、だな」


 この手の軍事施設は共和国側には複数あると睨んでいる。

 もっと状態の良い場所を発見するまでの繋ぎと考えれば、この発見も無駄ではないだろう。

 一応何か使える物はないか探す予定だが、この状態を鑑みれば恐らく何も見つかることはないと思われる。

 それでも「探さない」という選択肢が俺の中にない。

 現状、たとえ万が一でも可能性が存在している限り、しないというわけにはいかないのだ。

 目的そのものではなくとも、そこに至るヒントがあるかもしれないという希望がある。

 補足すれば俺のような遺伝子強化兵が「何処」に投入される予定であったかを考えれば、共和国側にある軍事施設に手掛かりがあってもおかしくはない。

 以上の理由から何かないかと雑草の絨毯が敷かれた元軍事施設を歩き回っているのだが……目ぼしいものは何も見つからなかった。

 前のように隠し部屋でもないかと建造物があった場所は念入りに調べてみたのだが、瓦礫の撤去作業と相まって本日はここで仮拠点の使い心地を早速調べることになる。


「布団一式はまだ向こうに置いたままなんだよなぁ」


 流石に持ち運びができる量ではないので、寝具や一部の日用品は未だ前の拠点跡にある。

 一応盗まれないように残った地上部分を倉庫になるように工夫したが、あれくらいならオーガでも除去できるので安心とは言い難い。

 もっとも、オーガが瓦礫を除けるかと言えば答えは「いいえ」だ。

 不十分な寝床ではあるが、荷物を枕に横になるとしよう。




 さて、一夜明けてこの仮拠点の感想を一言で言おう。


「ダメだな」


 何がダメかというと風が吹くと音が煩い。

 どうも隙間部分が絶妙な状態らしく、天井の軋み具合と相まって、この良く聞こえるお耳では最早騒音と大差ない。

「雨風を凌げることができればそれで良い」などと思っていた俺が馬鹿だった。

 ということで、ここは「緊急時以外使う気の起きない避難場所」ということで落ち着いた。

 一応資材置き場くらいにはなりそうなので、何かしらの目印は必要だ。

 また、この森の中で木が少ない場所というのも何かに使える可能性がある。

 とまあ、肯定的な意見を出そうとしてみたが、これくらいしかでなかった。

 一日費やして出た結論がこれでは時間を無駄にした感が否めない。


「……北に行くか」


 後ろ頭をポリポリと掻いて呟く。

 まずは香辛料が欲しいところではあるが、一つ気になることがあるのでそちらを優先する。

 少しの寄り道で済む場所なので時間はそれほどかからない。

 翌日の朝には街道を見つけたのだが、目的地からはずれている。

 最近ちょっと走りながらの方角修正に自信がついてきたところだったので少しショック。

 東へと移動を開始してしばらくすると目的の場所が見えてきた。


(ここに来るのも三度目、か……)


 兵士がいた洞窟の前には何もなく、初めてきた時よりも人の気配を感じない。

 周囲を見渡すが人がいるような痕跡すら見当たらず、少なくとも俺の感知能力の範囲内にはいないと断言できる。

 いなくなった理由は考えない。

 知ったところで特にメリットがないからだ。


「さて、香辛料が欲しいならまたあのルートに張り込むことになるわけだが……」


 果たして同じ手は通用するのだろうか?

 被害があり、その原因を排除できていないというのであれば、別ルートを使用するのは当然だ。

 ともあれ、東に向かうことには変わりない。

 道中に面倒なイベントが起こらないことを祈りつつ、街道が見える距離を維持しつつ森を走る。

 そのまましばらく順調に進んだは良いのだが、記憶に間違いがなければもうじき新たにできた町に近づく。

 南部開拓のための前線拠点である以上、傭兵が集まるのは当然であり、彼らがその周辺で活動していることを考えれば、日が高いうちに通り抜けるのは発見される恐れがある。


(目的達成のためには俺が来ていることを知られるのはよろしくない。夜まで待つか、擬態能力を使って進むか……)


 擬態能力は便利だが制限時間付きである。

 ここで使うのも悪い選択ではないと思うが、それで発見されれば能力がバレる可能性が高い。

 以前のように幾ら姿が見えなくとも、魔法での探知には普通に引っかかる。

 となると、稼ぎ時である真昼間に動くのではなく、能力を使用し通り抜けるにしても時間をずらすのが正解だろう。

 そんな訳で町から十分に距離を取り、森の中で潜みながら魔法の練習を開始。

 ちなみに移動中もなんやかんやで訓練をしており、現在では指先から二ヵ所同時に火が出るくらいには上達した。

 但し、魔力量は相変わらず。

 一発芸から抜け出る日は果たして来るのだろうか?

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[一言] 世界だろう→正解だろう
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