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(´・ω・`)お待たせ。700話オーバーの作品を頑張って読破。睡眠時間足りてない、眠い。

 色々と不安はあれど、現状俺が考えることは一つ。

「如何にしてこの状況を利用するか」である。

 とどのつまりはどうにかしてこの膠着(こうちゃく)状態を打破しつつ、己の利益へと誘導するかというとても単純な話だ。


(ビキニアーマーのインパクトが強すぎてちょっと話を聞いていなかったのが悔やまれる)


 少々情報に穴はあるが、簡単に言えば「大森林には『悪夢』レベルのモンスターがいるので手を出せば種族の危機」VS「放置すれば第二の帝国が生まれる可能性があり、その芽を摘むため森を自国領土とする」の戦いだ。

 どちらも引く気は一切なく、前者の主張を行う6号さんは俺を巻き込んででも後者の意見を叩き潰したいらしく、相手側も最早言葉は不要とばかりに殺気立っている。

 状況的には「いつ攻撃されてもおかしくない」と言ったところである。

 その理由の一つとして「俺を倒せば理屈が破綻する」という条件ができてしまったことが挙げられる。


(なんという物理的論破。拳で殴って解決するのは少年時代までと相場が決まっている)


 文明人らしからぬ解決方法を選択するなど蛮族だけで十分だ。

 そしてここに都合良くモンスターが一匹……しかしそれをすると今度は6号さんの主張に反することになる。

 つまりは手詰まり。


(こちらからは動けないのが痛い。かと言って先手は取られたくはないし……)


 威力は劣るとは言え、あの精霊剣のお仲間と思しき弓に狙われている現状では不用意に動けば即開戦もあり得る。

「この状況で俺が利する行動とは何ぞや?」と至極真っ当な疑問を思い浮かべ、取り敢えず条件を並べてみた。


・自身の身の安全

・今後の身の安全


 真っ先に思い浮かぶのがこの二つと言うのが現状を物語っている。

 それプラス今後の取引と川という有用な地理の共有と言ったところが、目下俺が目指すべき利益と呼べる範囲であろう。

 詰まるところ、今は6号さんの思惑に乗っかる以外の選択肢ではこれらの目標は達成できない。

 俺は「やれやれ」と言った様子で荷物を下ろし、そこからある物を取り出すと睨み合う両者の間に入る。

 こちらの動きを見ていたゼサトのエルフは警戒を強め、いつでも合図を送れるように構える。

 6号さんは俺を下げようとしてくるが、残念ながら待ち続けてもこの状況は良い方向に転びそうにないので介入させてもらう。

 まずは手始めに指に引っ掛けたそれを彼が見える高さまで持ち上げた。


「……何のつもりだ?」


 俺が荷物から取り出したのは宝石の付いたネックレス。

 確か魔術国家であるセイゼリアでは宝石は触媒として用いられる貴重な代物であったと記憶している。

 ならば同様にエルフにとってもこれは価値のある物のはずである。

 仮にそうではなかったとしても、金銭的な価値は間違いなくある。

「賄賂です」とでも言えるユーモアはあってもよかったが、それをすれば贈収賄の現行犯になってしまう。

 なので俺はこのように彼を説得する。


「こう言った物品や今回運び込まれた資材がエルフの里でも価値があることは知っている。それを安全に、言わば人的被害なく手に入れることはそちらにとっても悪い話ではないはずだ。物が物だけに防衛戦力の拡充にも使えるだろう。今、ここで決着をつけるというのであれば、こちらも覚悟を決め戦うことになるが……果たしてその結果の損害は許容できる範囲かね? 一言言わせてもらえるならば『焦りすぎだ』な。そちらの主張も理解できるが、この森はそう簡単には人間の手に落ちない。それがわからないはずもないだろう」


 大体そんな感じのことを必死こいて紙に書いている。

 睨み合うエルフのお偉方二人の間に入り、明らかにサイズの合わないペンを指で摘まんでメモ用紙に言いたいことを書きなぐるモンスターというシュールな光景を前に、流石の二人も冷静さを取り戻してくれたようだが、俺としては説得ではなく、その姿を見てそうなったことに一言言わせて頂きたい。


「コノ文章モ、チャント読ンデ」


 喉を抑えながらの発音の怪しいエルフ語で一部噴出した者がいるようだが、音の位置で誰かはしっかり把握できた。

 チラリと振り返って確認し、笑いをこらえる姿にイラっと来たのでその顔をロックオン。

 尻尾で投げた小石を大げさに避ける男を見たカシアルは大きく息を吐くと踵を返す。


「……言っておくが、認めるつもりはない」


 そう言って立ち去るゼサトの氏族に「忘れ物だ」と宝石の付いた装飾品を投げ渡す。

 少し惜しいがこれを渡せば貴様らも共犯よ――と思っていたのだが投げ返された。

 俺程度の浅知恵は通用しないらしい。

 ともあれ、あの状況を脱したことを喜ぼう。

 冷静になった結果「やっぱりお前殺すのが一番手っ取り早い」という結論を出されるのは困るが、実際その可能性が高そうなのが困りもの。

「これ闇討ちとかありそう」と心配になるが、それはこのままエルフの里に居続けることで起こるイベントだ。


「狙ってやりましたか?」


 6号さんの言葉に「そんな訳ない」と手を振って返事をする。

 しかし今回の件で彼が持つ危惧というのも理解はできるし、そのような視点があることを知ったことで、今後俺はエルフという種族の中の争いに巻き込まれて行くことになる。

 流石にそんなことに首を突っ込む気はとてもではないが起きない。


「新しい拠点を探しに行く」


 そう書いたメモを見せると6号さんに背を向け歩き出す。

「一度距離を取る必要がある」という考えは間違っていないだろう。

 そもそも新しい拠点が必要なのも事実である。


「待って!」


 思うところはあるが、ここは振り返らずに立ち去る。

 お互い利用し合うという関係である以上、深入りは厳禁だ。

 彼女の声を背に、俺は川を飛び越える。

 最後に聞こえたのは「いつか、必ず」という言葉――それが何を意味するかは、今は深く考えないようにしておく。

 しかしながら一部利害が一致する部分もあることは事実であり、それ故に彼女が言うように「必ず」また会うことになるのは間違いない。

 と言うか気づかれないように見るくらいは確実にする。


(あー、色々と惜しい。惜しいけど、ゴダゴダに巻き込まれるよりかはマシ……マシだけどやっぱり惜しい)


 どストライクな容姿の美女に文化的な食事、魔法と言う娯楽に残念な多目的玩具と切り捨てるにはあまりに惜しい。

 できれば俺の目的にも協力してもらいたかったが、それを求めるのであればむしろゼサト側の方が都合が良い。

 しかし彼らは俺の命を狙う可能性が十分あって手を取り合うのは到底無理。


「あー……世の中なんでこんなに儘ならないのか」


 誰もいない暗い森で独りポツリと呟く。

 返ってくる声はなく、ただ虫の鳴き声がどこからともなく聞こえてきた。


 


 翌朝――特に考えもなく森の中を彷徨い歩いたが、拠点となるような場所は見つからなかった。

 当然と言えば当然なのだが、研究施設やその入り口等も観ていない。

「行く当てもなくただブラブラと歩いていれば何か発見するのでは?」という甘い考えは即座に放棄すべきだったと後悔する。


「マッピング機能が欲しくなる」


 そう呟いた時、俺に天啓が舞い降りた。


「そうだ。これまでのように『実はそういう能力がありました』ってことがあるのではないか?」


 思い立ったら即実行――結論、なかった。


(うん、ゲームじゃないんだ。そんな便利機能をどうやって搭載するんだ、って話だよな)


 これまでの数々の実績から「もしかして……」と思わなくもないが、流石に我が祖国の技術でもこれは無理だったようだ。

 あれこれ試してみたが、うんともすんとも言わない。


「やっぱさあ……旧帝国領とか馬鹿みたいに広い土地を一人で探すとかどう考えても無理がある」


 やはり人の手を借りることになるのは確実だろう。

 その相手としてエルフを選択していたが、今回の件でそれが怪しくなってきた。

 となれば、協力関係となる相手が必要だ。


(……評議国、しかないわなぁ)


 選択肢がないと言うのも悩ましい。

 そして、今フロン評議国は間違いなくオークやモンスターを討伐しつつ北上している真っ最中だ。

 そんな中、俺が出ていけばどうなるか?


「あー『農場区画までは領土化して良い』って言っちゃってるんだよなぁ」


 今行くと変な誤解を与えかねない上、交渉相手が彼女だとするならば時期が悪いと言わざるを得ない。

 そうすると時間を潰す必要が出てくる。

 拠点探しも良いが、手持ちで足りない物がある。

 そちらの補充に向かってから、探し物しつつ南下すればそれなりに時間を使うことになる。


「んー……エルフと関わるにも時間を置く必要がある。評議国にも同じことは言える」


 やはり目指すは北だ。

 また適当にモンスターを間引いて、その代金をカナン王国で徴収することにしよう。 

(´・ω・`)地味にショッキングな出来事あり。痩せねば。

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― 新着の感想 ―
[一言] 喋れる理由の説明は?
[一言] なろうレベルの話をいくら読んでも大した肥しにはならないと思う、もちろんWeb上での展開などの参考にはなると思いますが。 私が最近感心した(凄い)物語は、「三体1」と博物館惑星永遠の森ですかね…
[一言] おっぱいがー
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