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【書籍化】死にたがりの王女【コミカライズ進行中】  作者: 有沢ゆう


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7/10




「シリル様、先日の結果がこちらに」

「ああ……最優先で確認する、一番上に置いてくれ」



父王への報告を前に、シリルの部屋はひどい有様だった。

様々な書類が積み重なり、一人で全てを把握できない状態だ。

側近のオリマーと、従僕の二人が手伝ってくれてようやく、少しずつ仕事が進んでいる。


全ては、ウエンディ・リー・ダウセットがこの国にやって来た時から始まった。







現在、このアウリラが所属している連合国は、細切れの小国をまとめあげるのに武力を以て大ナタをふるった王のもとに成立した。

小国が乱立した時代がおおいに過去になり、時代がくだるにつれ、領土が小さい国は次第に苦しくなっていたのだ。

国内資源は限りがあり、輸出入には関税がかかり、他国を通るたびに通行税がかかる。

モノも金も、先細りが目に見えていた。

だからといって、無条件で隣国に従属することもできない。

そうなれば、苦しむのは国民だった。


それを、有無を言わせず自国の支配下においたのが、ティアドリィ王国だ。

疲弊するばかりの小国にあって、その武力は圧倒的だった。



同時に、戦略的にも彼らは巧みだった。

戦いをしかける傍ら、密かに使者を送り、苦しい現状を緩和する政策を約束したのだ。

各王族はどこかでそれを望んでいたのだろう。

ある程度の抵抗で、次々と支配下に降った。


結局、小国ごとの独立権を認めつつ、連合国としての関税、通行税の撤廃、自由な資源のやりとりが可能になった。

ティアドリィにはその一部が納められるが、地方国が苦しむ税率ではない。

気づけば、周辺の小国のほとんどは、連合国に吸収されていった。



アウリラはどちらかと言えば、ティアドリィに協力する側だった。

王同士が遠縁で、幼い頃には頻繁に行き来していた仲だ。

全てが始まる前に、二人は綿密に戦略を練り上げていたらしい。







さて、それであるから、アウリラにとっては連合国と、連合国に従属していない隣国との境目の国としての使命があった。

隣国とその周辺は、小国とは呼べない規模のある国だが、全てを賄いきれるほどの大国でもない。


そして、まもなく、自然災害が起こるはずであった。


30年前後ごとに起こるといわれる、大型飛蝗の大発生だ。

これが起これば、周辺の食糧庫は一気に空になる。

それを見越して備蓄している国は良いが、それでも不足する分を、全く対策していない国もある。

ウエンディの祖国、レヴァーゼもそのひとつだった。

歴史のある国だが、現王は無能である。

そういう評価だった。



これで、レヴァーゼだけが沈んでいくならいい。

問題は、そこから、飢えた民たちが難民としてこちらへ流れ込んでくることだ。

そうなれば、自国民でもぎりぎり足りるかどうかという食料を分け与えねばならない。

無視すれば、彼らは分け前を求めて暴動を起こす。

迷惑この上ない。


争いと、生まれるだろう死者、死体処理の手間、そこから発生する伝染病やその他もろもろで、余計な手間をとられる。

だから、まずは王族と縁付くことから始めた。

特に、レヴァーゼには、外交手腕が認められている王女がおり、彼女を取り込んでそこから政策に介入していく予定だった。


ところが。





「よろしくおねがいしまぁす」


やって来たのは、間延びした挨拶と、たどたどしい礼をする、ぼんやりした王女だった。

彼女が来ることは事前に知らされていて、その都度、契約違反であると告げていたはずだが、強引に送り込まれて来た。

これで約束は果たした、とでも言うつもりだろうか。


彼女の存在は知っていた。

レヴァーゼに送り込んだ密偵が、16年忘れられた王女の話をとっくに掴んでいたからだ。

しかしまさか、有能な姫をという要求にこれを差し出してくるとは。

王は呆れ、王妃は蔑み、重鎮たちは憤った。


「まあよい。これを理由に、あの国を連合国に取り込もう」


王が、むしろ手間が省けた、とでもいうように、そんな決定をしたことで、場は荒れずに済んだのだ。








最初の違和感は、ウエンディとの会話にあった。

レヴァーゼの所業を周辺国へ知らせると伝えた時、彼女は言ったのだ。


──二年はかかるでしょうねえ。


何に?

彼女の意図は分からなかったが、それは確かに、レヴァーゼとの交渉と準備を経て、開戦から戦勝に至るまでの予想期間とぴたり同じだった。

呪われた姫という噂は、噂でありながら、ほとんど事実と見ていい。

彼女はろくな言葉遣いもできず、子供のような返答しかしない。

きっと意味などないのだろう、とその時は思った。



少しだけ、彼女が自分を『呪われた姫』だと自覚しているようだったのが気になった。

そんな女を娶るシリルを、憐れんだのだ。

蔑みのためのその言葉を、誰に言われたのか。

面と向かって言われたのではないか。

彼女の故郷での扱いを考えると、不思議ではなかった。


哀れなのは、彼女を迎えるシリルではなく、そのように生きてきた彼女ではないか。


しかしシリルは王子であり、そうやってぼんやりと微笑むウエンディにかけられる言葉は、持ち合わせていなかった。

少しでも普通の生活をと、教育を与えたかったが、父王には時期尚早と却下された。

それで仕方なく、物語本などを与え、識字の練習をさせるくらいしかできなかった。

読めませんなどと嫌な顔をしながらも、彼女は乗馬のためにそれを読んでいて、呪われていないのでは、という疑いが濃くなる。


それ以上は何も出来ない。

彼女が呪われている前提で、レヴァーゼとの交渉が進んでおり、そしてシリルはその当国の王家の人間だからだ。


もしや彼女をいけにえにしているのは、自分も同じなのではないかと、そんな葛藤にさいなまれた。

彼女のささやかな要求を満たしてやるのは、罪悪感からなのではないか。

自分の心境を突き詰めることは、他国との緊張が続いている状態では得策ではないと思われた。

彼女に優しくすることは、土壇場で交渉に負ける未来につながっている気がした。




シリルよりもはっきりと彼女を憐れんでいたのは、宰相のウォーカだった。

粗末な部屋に住まわせることを最後まで反対していたし、彼女の様子をたびたび見に行っているようだった。

暇つぶしを要求してきたウエンディに、乗馬を提案したのも彼だ。

動物が好きなようだ、と。

まるで小さな子供を気遣うように言う宰相によって、じわじわと罪悪感のようなものを植え付けられたと言っていい。

だからこそ、王も王妃も、ウエンディに対しては最低限の礼儀を保ったのだ。






結局、何度かの予告と、宣戦布告を経て、レヴァーゼに攻め入るまでの期間は短縮され、一年半と少しとなった。

こちらの予想より、相手は無能であったのだ。


ウエンディとダリアを交換しろ、という通告は、元より受け入れられるとは考えていなかった。

要は、レヴァーゼが連合国の要求を拒否した、という事実を作れさえすれば良かった。

だが、ある意味では最後の慈悲だった。

それを彼らは撥ね付けた。


連合国側は一枚岩だ。

全ての国がレヴァーゼへの輸出品の値を吊り上げ、レヴァーゼからの輸入を減らすと、効果はてきめんに現れた。

連合国に加盟していない国が、少しずつレヴァーゼと距離を置き始めたのだ。

やがて世界から孤立していると気づき、ようやく焦ったように、ダリア王女を送ると打診があった。

それは王の署名ではなく、宰相と重鎮たちの連名だった。

当然、受け入れはしない。

代わりに、賠償として国土の3割を要求した。

これも、断られることを見越しての要求であり、ある種の言いがかりに近いものの、契約違反の決定打としては有効であった。


そしてとうとう起こった、大飛蝗の大量発生に、レヴァーゼはなんら対策を打ち出せないまま疲弊していく。



向こうの上層部の意思決定がばらばらで、ほとんど内紛に右往左往している間に、こちらから攻勢を仕掛ける。

決着はあっという間だった。

レヴァーゼ王と王妃は捕らえられ、宰相、それと第一王子と王太子、さらにくだんのダリア王女とが、共にアウリラへと移送された。

彼らには、内情と現在行っている政策、懸案事項などを聞き取りし、今後の国の方針を立てる情報源となってもらう。

その後は、王の判断だ。

とはいえ、おそらく処刑だろう。



ウエンディをどうするか。

それについては正直、予想が立たなかった。

彼女はいわゆる呪われた王女であり、彼女に責任はほとんどない。

王族としての責任、という意味ですら、ウエンディにはないも同然だった。

判断力も社交術もない、なにもない王女。





ところがだ。





次に起こった異変は、ホール子爵の来訪だった。

国内は風通しが良く、レヴァーゼを攻めること、すぐに落ちたことは、貴族連中には都度都度知らされている。

彼が面会を求めたのは、その直後だ。


今回の戦の準備に、彼の領地が持つ鉱山の働きが大いに貢献した。

それもあり、忙しくはあったが、王は無理をして面会の時間を作ったのだ。



「ウエンディ王女殿下はどうなりましょう」


戦の勝利を祝う言葉の後、お忙しいでしょうから本題を、と言って彼が告げたのは、そんな疑問だった。

意外な話題だった。

おそらく、貢献度に見合った褒賞を要求するつもりだろうと考えていた王は、珍しく言葉に詰まったほどだ。


「どう、とは?」

「かのかたが、王のお求めの王子妃様でなかったことは承知でございます。

 それが、この戦の発端であったことも。

 であれば、当然、婚約者候補というお立場も自然、消滅したことと存じます」

「何が言いたい」

「王女殿下の助命をお願いに参りました」


それは、いち領主としても、子爵としても、立場をわきまえない発言だった。

当人もそれを自覚しているのだろう、鉱山契約時の余裕のある態度はどこへやら、汗をたっぷりかいている。


「……そなたの国への献身ぶりは承知である。それに免じて、理由だけは聞いてやろう」

「ありがたく……。

 その……王女殿下は……ウエンディ様は、本当に呪われた王女でございましょうか」


そう言って、彼は、ウエンディが領地へ視察に行った際の一幕を語った。

その話は同時に、彼の妻と娘が、当時は少なくとも王族の一員となろうとしていたウエンディに、危害を加えようとしていたという懺悔でもあった。

下手をすれば今からでも処罰できる罪だ。

ゆえにだからこそ、それは決して嘘ではなく、本当にあったことだと思われた。




「あの娘が、護衛のブーツの状態から待遇を見抜き、危機を回避してみせた、と……」

「護衛本人が、一言一句覚えておりました。それくらい衝撃だったのでございましょう。

 彼は、王女殿下のお言葉で、自分たち兵士の待遇がおかしいと認識し、私に直接訴え出たのです。

 それで、妻と娘が、防衛費を使い込んでいた事実が発覚いたしました」


そういえば、そんな話もあった。

あれは、妻と娘を隔離するための作り話だと思っていたが、本当だったらしい。


呪われていると噂のウエンディが、威厳のある態度と言葉で護衛を諭したというのは、にわかには信じがたい。

しかし、この子爵に嘘をつく理由もまた、ないのだ。



「いいえ、むしろ、呪われた姫のままで良いのです。

 かの方には、政治的責任はない。そのように周知されましょう。

 王は、ウエンディ様を憐れみ、余生を穏やかにすごせるよう取り計らったと、そうなるよう、お願いをしに参りました」

「つまり、お前が面倒をみる、と?」

「さようでございます。当家で、きっとお幸せにゆっくり過ごしていただけるよう計らうつもりでございます」


王はもちろん、その場で断ることも受け入れることもしなかった。

懸案事項の一つであり、他の王子や王女の処遇も含めて、総合的な判断が必要だった。

ホール子爵には、そのような要望があったことは心にとめておく、とだけ伝え、領地へと帰した。

思えば、その際に同行していた護衛が、あの時の護衛だったとシリルは思い出す。



あの時、男だけのシガールームに、臆することなく入り込み、ウエンディが領主の妻と娘に陥れられようとしている、と耳打ちしてきたのは、彼女の侍女だった。

意味は分からなかったが、侍女の真剣な様子に、シリルはすぐさま駆け付けた。

妻子と問題を起こされては、契約に問題が生じるかもしれないと懸念してのことだったが、同時に、ウエンディを守らなければならないという使命感があったのも確かだ。


微笑むだけでいい、と言ったのは自分だ。

それは、自分がそれ以外の全てを負ってやるという宣言であったのに。


駆け付けると、ウエンディはにこにこしていて、その前に護衛がぼんやりと佇んでいた。

おかしな空気だったが、詳細は誤魔化された。

ただ、妻と娘がウエンディに対して敵意があるようなことは確かだったので、釘を刺しはした。


あの護衛。

何をするつもりだったのか。

今更だが、あの妻と娘の思惑に思い当たり、怒りに腸が煮え返った。






王は、その子爵の話を戯言と切り捨てることはなかった。

戦争処理の合間を縫って、ウエンディにつけていた護衛を呼び、話を聞いたりもした。


「僭越ながら私も、王女殿下が呪われているということについては、半信半疑でございます」

「なぜだ、一日のほんの30分、裏庭に付き添っているだけだろう?」


シリルはその話に同席していたため、思わず口を出した。

彼女が呪われていないとしたら。

それは、シリルの葛藤が、さらに大きくなる予感をはらんでいる。


呪われておらず、全てを理解し、己の立場を知っていての振る舞いだとしたら。

彼女に向けた言葉も態度も、アウリラはなんらレヴァーゼを責められない。



「……あきらかに待遇の悪いあの、日当たりのほとんどない簡素な部屋で、なんの文句も言わない王女なんて、普通じゃないだろう」


はあ、と騎士は答えた。


「普通か普通ではないかと言われれば、普通ではございませんでしょう。

 ですが、普通ではない方のほとんどは、様々な要望を口にされるのではないでしょうか。

 黙って受け入れていたことこそ、ご自分の立場をはっきり理解されているのだなと、騎士団の人間はそう思っておりましたが」


あのぼんやりした様子から読み取るには、好意的にすぎるのではないか?

そう反論したかったが、それは彼女の好感度が高いという証左に思え、口に出来ない。


「それに、王女様の取り入れていらっしゃる運動は、いずれも機能に優れたものでございます。

 関節をほぐし、筋を伸ばす、的確な柔軟運動は、筋肉の機能が分かった方のものでしょう。

 我々の訓練には及びませんが、最低限、効率的に体を鍛える運動です。

 護衛の中には、真似する者も多数おりますよ」


確かにそうだ。

彼女が運動をしたいと言い出した時は、無理に閉じ込めておくよりは少しガス抜きが必要だろうと認めた。

その後、マットを要求し、あられもない恰好で柔軟のような動きを始めた時は、止めようとも思ったが、どうせ呪われた姫だからと放っておいた。

子供がひっくり返って遊ぶようなもので、護衛も自分も、女として彼女を見てはいなかったからだ。


「また、時々部屋から、異国の歌が聞こえてきます。

 どこの言葉かは分かりませんが、不思議な旋律の歌です。とても、無学な人間のものとは思えませんが」






それら証言とともに、擦り切れるまで読まれた子供用の本のことを、一応、王に伝えてはおいた。

しかし、仕事は山積みで、ウエンディの処遇は、ぎりぎりになってもまだ決まらなかった。

そして、結局、彼女の家族である、レヴァーゼ元国王を始めとした面々が明日到着するというその日になって、ようやく呼び出しをすることになった。








お前の国は、戦に負けた、と告げた。

王も王妃もその他重鎮たちも、そこはかとない居心地の悪さがあった。

子供相手に、なにかむごいことをしているような気持ちになった。



彼女に関しては何も決まっておらず、とにかく、下手に家族と顔を合わせないよう、謹慎を申し渡した。

彼女が、故郷が消滅することを知ったのは、その時のはずだ。


きっと悲しむだろう。

それともそれすら分からないか。

だとしても、シリルは、振り向いた彼女に手を差し出したいと思った。

この変わり者の王女を支えるのは、今や、自分しかいないのだと。



そして。

そして彼女は。


いままでのぼんやりとした表情を一変させ、張りのある美しい声と、見事な口上で、その場を圧倒して見せた。

堂々としたカーテシーは、運動のうの字も知らない王妃よりも、よほど見応えがあった。

仕草も、下の者を使う口調も、もはや呪われているとは信じられない。




彼女が立ち去った後、王の御前であるにも拘わらず、重鎮たちがざわめいていたほどだ。


「……明日、レヴァーゼの者たちとともに、帳簿や資料も大量に届く。

 国策をまとめる傍ら、ウエンディ王女についても調べておけ」


しばらく黙っていた王は、そう言った。





その謁見室を出ると、この場にいるはずもない侍女の姿があった。

ウエンディ付きの侍女だ。

さすがに顔を見覚えていたので、どうしたと声をかけた。

彼女が差し出したのは、布の袋である。

そして、


「ウエンディ様は、毒をお持ちでございます」


と言った。

周囲にいた人間が騒ぎだし、王子を狙うつもりか、いや王か、重大な犯罪だ、捕まえてやはり死刑にすべきだ!などと口々に言う中、侍女はまったく動揺することなく、


「自害するようにとレヴァーゼ王より賜ったものでございます」


と続けた。

周囲は一瞬で静まり返った。

まるでいけにえのごとく、愛する賢い娘の代わりにウエンディを送り付け、その上、自害用の毒を持たせた?

なんという。

怒りとも憤りともつかない感情に、誰もが押し黙った。


そしてシリルは、駆けだした。

通い慣れた北側の棟の廊下は、長く、遠い。

あまりにも遠い。

そこを、全力で駆けた。

側近である騎士たちは付いてきていたが、文官のオリマーは付いてこられなかったほどだ。



押し開いたドアの先で、ウエンディは今まさに何かを口に含む寸前であった。





よくも間に合ったものだ。

あの侍女が少しでも遅れていたら。

後の聞き取りでは、ウエンディに逃げるよう言われていたらしい。

言いつけ通りに逃げていたら、ウエンディは死んでいただろう。



シリルのデスクの上には、その侍女から預かった布袋がある。

中には16個の宝石が入っていた。

レヴァーゼからの移送の馬車にどっさり載せられてきた資料によれば、それは、官吏が毎年手配していた誕生日用の宝石らしい。

小さくも安くもない。

しかし、ウエンディの髪の色でも目の色でもない、緑の石だ。

誰も彼女に関心がなかったという証拠に見える。


さらに、あの時シリルが叩き落とした、ウエンディが呑み込もうとしていたものが、確かに毒であったという分析結果も届いている。

捜索の結果、彼女の部屋からは他にいくつも毒が見つかった。


彼女の部屋に飾りのように並べられていた本は、幼児用と子供用の本で、いずれも擦り切れるほど読み込まれていた。

それは知っていたが、その本を、実母が用意したらしい記録があった。

この本だけを頼りに、彼女は生きてきた。

その様子はあまりに寂しく、悲しいものだった。








レヴァーゼ国王一家の取り調べは、遅々として進まないが、ある程度形になり、さらに向こうの宰相が協力的であったことから、ほとんど終わりが近づいていた。

記録として残すため、一応、全ての洗い出しをするつもりだ。


結果、やはりウエンディは何の教育も受けず、放置されて育ったと全ての記録が語っていた。

彼女が呪われているかいないかはもはや問題ではなく、彼女が『有能な外交に強い王女』ではないと示されたこと、それが全てだ。


そして王は、ウエンディ王女と、家族との面会を決めた。







脳内のお歌もれてた雪乃ちゃん

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― 新着の感想 ―
誰にも愛されず、 誰にも憎まれず、 ただただ生きるモノは人間ではない そう、ウエンディは自分で云ってましたよね、、、 ただ、せれでも周りの人はなんだかんだ見てくれてはいたし ウエンディ自身は祖国よ…
「脳内のお歌もれてた雪乃ちゃん」 この五七五が悲しいですね この作品への出会いと、作者様のご投稿にに感謝します ご活躍をお祈りいたします
宰相めっちゃいい人じゃん、騎士も子爵もだけど見てる人は見てんだなぁ〜 王子も素直じゃないし言葉はあれだったがなんだかんだで主人公の境遇に同情してたんだな。
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