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君と、もう一度。  作者: れんティ
林間学校編
25/126

林間学校:番外

 「あさ兄ちゃんたち、今頃何してるかなぁー?」

二人減って、妙に人口密度が低くなった気がする部室。その中でいつもの席に座りながら、あたしは意図せずしてそんなことを呟いていた。それがちょっと未練がましかったのは、気のせいだと思いたい。別に、一緒に行きたかったなんて思ってないし。きっとあさ兄ちゃんはちづちゃんと二人で楽しんでるんだから、そこに割って入ったらあたし嫌な奴みたいじゃん。そんなことしたらあさ兄ちゃんに嫌われちゃうよ。

 「二日目の、夕方だから……螢、私たちは去年何をしてたかしら」

「……二日目は、丸一日班でハイキングじゃなかったか?」

「あ、そうだったわね。懐かしいわ」

「班ってことは……やっぱりあさ兄ちゃんとちづちゃん一緒だー!」

「もうしょうがないよ。あの二人が同じ班なのは今更どうこうできるわけもないんだから」

栄介君の正論にぐうの音も出ない。ただ、反論できないからと言って文句が収まるわけでもなく。発散できない鬱憤は胃の辺りに沈殿した。今度あさ兄ちゃんにカラオケでも一緒に行ってもらおう。でも歌うのがあたしだけなんだよなー。ちょっとつまんない。

「――――で、二人とも構成は決まったの?」

無言で栄介君と顔を見合わせる。

「「あ、あはははは……」」

二人同時に乾いた笑いを漏らす。その反応だけで、亜子先輩は進行状況を見抜いたみたいだった。ううむ、鋭いんだね。

「はい、がんばってね」

「美味くいかないなら、とりあえず思いついたキーワードとか全部書き出してみるといいぞ。その中から使えそうなのを取り出してつなげればいい。

「はい! ありがとうございます!」

 それから時計の針が半周した頃、あたしは机に突っ伏していた。

「……出尽くしたよ……あたしの頭は捻りすぎてねじ切れちゃったよ……」

「そんなわけないから。ほら、今度はこれをつなげないと」

淡々とあたしの発言を訂正した栄介君が、シャーペンの尻でノートを叩く。そこには、箇条書きで書かれた、あたしたちのアイディアが一ページ分縦に連なっている。ざっと三十個。良くこんなに出したと思う。やっぱりあたしの頭はねじ切れたんじゃないかな。

「へぇー、一杯出したなー。ジャンルはどうするんだ?」

「これからです。ネタを踏まえて、書けそうな物を」

「なるほどな」

後ろから覗き込んでいた螢一郎先輩が、納得したように自分の席に戻って行く。様子を見に来ただけみたい。ご苦労様です。

「じゃあ、どんなのが書きたい?」

「ラブコメがいいなー。けど、栄介君はどんなのがいいの?」

「僕は、何でも。主にやってるのはファンタジーとかSFとかだけど、恋愛物もやったことはあるし」

「じゃあ、ファンタジーでいいよ。けど、短めの方がいいよね」

「そうだね。ファンタジーなら、この『魔物』とか使えるんじゃないか?」

「あ! じゃあ、この『冒険』とか『お化け』とかもじゃん」

 頭の半分で栄介君との創作に興じる間、もう半分では別のことを考えていた。

 ――――あさ兄ちゃんたち、今頃何してるかな

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