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宿敵の最後

GWの課題のせいで更新が遅れました、申し訳ない。

先に動いたのはナオキだった。

ナオキは魔法を多重展開して、自身の周囲を攻撃で固める。

それは魔法で出来た氷柱、それが合計で四本ナオキの周りを滞空していた。


俺は構わずそこに突っ込む。

狙いは顔面へのストレート、何があっても殴りきって地上に落とすのだ。


「ハッ、小物が失せな!」


軽く薙ぎ払う様に、ナオキの視線に合わせて氷柱が舞う。

右、右、左、下、俺は全ての攻撃を視認してから動作に入った。

右腕を振りかぶり、最小限の動きで避けるのだ。


既に視認したため、ナオキの攻撃を掻い潜るのは容易だった。

一本、二本、と身体を傾ける事により回避した俺は最後の四本目を抜けて、ナオキの眼前へとやって来た。


「貰ったァァァ!」

「残念だが、無理だ……」


突如、胸に衝撃が発生する。

何だ、と見れば俺を貫く氷柱があった。

氷柱が刺さっていたのだ。


「馬鹿な……」

「いつから氷柱が四本だと思っていた?」

「魔法で隠していたのか……だが、問題ない」


俺は氷柱が刺さった体で、ニヤリと笑った。

目的は達成できるから、と確信したからである。

ナオキの背後、そこには影があった。

落下してくるその影、その正体は……


「ちょっと、借りてくぞ」

「ッ!?」


それは魔王の物だった。

背後で声がした為に、ナオキは振り返る。

しかし、それは数拍遅かった。

テレポートにより、瞬間移動した魔王は背後から抱えられたペトロに触れると再びテレポートしたからだ。


一瞬の犯行に、ナオキは振り向いてから何があったかを把握する。

だが、目の前には何もおらず自身が持っていた重みの無さにペトロが奪われたと把握したのだ。

ほんの少し、意識が逸れた。

それは、俺にとってチャンスでしかなかった。


俺の肉体が揺らいだ。

陽炎のように、俺自身の身体が幻の如く移動する。

肉体を炎へと変化させたのだ。

俺を貫いていた氷柱は溶けて、炎の塊がナオキの目の前に現れた。

そして肉体は再構成される。


「油断大敵だ、オラァ!」

「ぐっ、しまった!?」


意識が逸れた一瞬がナオキへの攻撃を許した。

俺の右ストレートが奴を捉える。

ナオキは咄嗟に両腕をクロスさせて防いだが、それでも攻撃が当たったことに代わりは無い。

そのまま地上へと向けて落ちて行くしかないのだ。


「さぁ、次はお前だぜデカブツ!」




地上では、二人の人物がそれを見ていた。

ドラゴンに殴られて落ちてくるそれを、二人はようやくと言った顔で迎え入れる。


「いよいよだ」

「全ての眷族よ、私の力となれ!」


ルージュの宣言と同時に、周囲のあちこちから光の粒子が集まってきた。

それは吸収されるために還元された眷族達、ルージュの命のストックともなる魂の輝きだ。

帝国だけでなく、敵味方関係なく近い者達から吸収されていく。

その様子をソレイユは見ながら言った。


「行くぞ、ナオキだ!」


ソレイユの声に従い、ルージュは軽く頷き一歩踏み出す。

その瞬間、大地を蹴ったその足はルージュの身体を大きく前進させた。

ただの一歩で数メートルの跳躍、吸血鬼の為せる怪力だから出来る前進だ。

駆ける足は、その距離を縮めて行く。

見えた、ルージュは頭上を見上げながら落下するナオキに視線を合わせたまま詠唱を開始する。


魔法とは魔力を持って意志を顕現させる力、その本質はイメージだ。

言葉にする、何かを媒体にする、そうしてイメージした物を具現化するのだ。

故に、ルージュは自身の懐から自分の血で書かれた蔵書を取り出して詠唱を始めた。

自身の血を媒体に、文字と言葉でより強力にイメージを固定する。

意志の力をより強固なものとする。


「第一章から三章の術式解放、敵を捕捉!星よ、我が眼前に現れて敵を葬り去れ!」


片手に持った本を掲げながらルージュは命令した。

声は魔力を通して変質する、本は詠唱を補助して変質を加速させる。

変質した魔力はナオキの頭上へと集まり、そして一瞬で巨大な星を生成した。


落ちてくるナオキを追う様に空から降ってくる巨星。

それは赤い光芒を放ちながら飛来する。

ナオキは悪意のある魔法攻撃を吸収する、ならば落ちろと命じただけの大規模魔法はどうだろうか。

複数のプランの中からルージュは最初の一手を打った。


しかし、ナオキに触れる瞬間。

巨星は幻のように、最初からないかのように消え去った。

ソレイユの慌てた声が聞こえる。


「ダメだ、アレはオリハルコンだ!?」

「オリハルコン!?」

「あぁ、クソ!奴は自分の弱点をオリハルコンで克服したんだ。アレは悪意とかそういうのは関係ないからな!」


ルージュ達の思いも知らず、攻撃を受けたはずのナオキは地上へと墜落する。

クレーターを作り、周囲に砂塵を巻き起こしながらナオキは現れた。


「プランBだ!」

「分かったは、第四章から第七章までを術式解放。炎の精霊よ!その抱擁を持って包み込み、全てを焼き払え!」


再びの大魔法、それは短縮されて顕現する。

前もって詠唱する事により、少ない詠唱で発動されたそれは地上に陰りを齎した。

その正体は、まるでマグマに人型を与えたかのような火の精霊。

それが、ルージュの後ろに湧き出るように顕現したのだ。


「やっちゃえイフリート!」

『オオオオオオオオオ!』


震えるような声がした。

精霊の声に反応する様に大地は沸き立ち、地面が揺れる。

それは地面の下を胎動するマグマによる物だ。

マグマはナオキが落ちた事により出来たクレーターとルージュ達を囲むように地面から出て来た。

それは、マグマによる半円状の檻だ。

プランB、それは酸素不足による窒息死である。


「ソレイユ!」

「了解!」


ソレイユは答えるように死霊達を前進させた。

死霊達は維持する事や操作する事に魔力が掛かる。だから、攻撃は通ると予想された。

それは呼ぶだけに魔力を使っているに過ぎず、ナオキを攻撃できるのではという予想からだ。


「痛てて、クソどうなってやがるんだ……」


クレーターからゆっくりと立ち上がるナオキに向かって半透明の死者の群れが向かって行く。

それはミイラのような姿をした、干乾びた人間達の霊魂。

生者を呪う死霊の群れが、ナオキに向かって飛んで行く。

しかし……


「ゴースト!?浄化の光よ!」

「チィ、奇跡を修めていやがったか!」


その攻撃はナオキの身体から発せられたオーラのような物によって、全ての死霊が成仏すると言う結果で終わった。

その結果に、ソレイユは悔しげに舌打ちする。

そして、その攻撃によりナオキは二人の存在に気付いたのだった。


「何だお前ら?いや、魔王の配下だな」

「覚えてないの……いいわ、ソレイユ次の作戦を決行して!」


ルージュは自身の攻撃が時間の掛かる行為だと分かっていた。

故に、ソレイユに精霊を維持する自分を守りながら戦う事を命じた。

彼は軽く頷き、杖を構える。

そして、自身を強化する支援系統の術式を組み上げ魔法を発動した。

結果、素人であるソレイユは一介の武人の如き身のこなしで進む。


「チッ、死ねよ!」

「ハァァァァ!」


大ぶりの上段攻撃を容易く見切り、ソレイユは懐に飛び込んだ。

杖は先端が輝き、魔法を込められた先端が向かって行く。

そして、剥き出しの頭部へと杖のフルスイングが当たった。

その衝撃に、ナオキは回転しながら地面へと叩き付けられる。


「よし!」

「テメェ……グッ!?」


立ち上がり怒り心頭だったナオキ、だがその体は立ち上がった瞬間激しく震えて肉体の内側から大量の血を爆発する様に噴き出す。

その血は鎧の関節部分から溢れ出る。


「あぁぁぁぁぁ!がぁぁぁぁぁ!」


頭を抱え、悶え苦しむナオキ。

それは杖に込められた支援系統の魔法のせいだ。

肉体強化、感覚強化、その他様々な強化系の魔法。

それはソレイユによって既に自動で強化しているナオキの身体を更に強化した。

結果、肉体は強化された魔法のドーピングに耐えきれずダメージを負ったのだ。


「悪意のない攻撃だが、用法容量は守らないとな」

「テメェ……ぐぁぁぁぁ!うわぁぁぁぁ!」


ダメ押しとばかりにソレイユは杖で苦しむナオキへと攻撃する。

ナオキの肉体はオリハルコンによって傷を負う度に再生していた。

恐らく、再生する際にエネルギーとして魔力を消費するはずだ。

もしこのまま魔力が尽きれば、ソレイユの魔法を受けた状態で魔力はゼロになる。

身体能力はそのままだが、厄介な魔法は封じる事が出来る結果となるだろう。


「い……きが……苦しっ……」

「ようやくか」


既に顔は原型を留めていなかった。

内側からの爆発によって血管や眼球が破裂したのか、顔の形をしたミンチ状になっていたからだ。

だが、それでも鎧によって再生させられ死ぬ事は無い。

そんなナオキを更に苦しめるのは、ようやく効果を発揮した酸素不足だ。


ナオキはフラフラして胃の中の物を全て吐き出した。

酸素欠乏症による症状が出て来たのだ。

当然、呼吸を必要としないソレイユとルージュは問題ない。そして、ようやく苦しみながらナオキは倒れた。


ルージュはこの時、勝利を確信する。

ソレイユも同様であり、ナオキに背を向けてカタカタ笑いながらガッツポーズを取るほどだった。

ハメ技のような物だが、決まってしまえば簡単な物だ。


「ついに勝っ――」


喜びに打ち震えていたルージュを、それは絶望へと叩き落とした。

何故なら、ソレイユの後ろでナオキが立ったからだ。


「ソレイユ!避けて!」

「ッ、しまった!?」


ナオキの身体がドロリと溶けて液体となった。

そして、それはソレイユへと向かって行く。

黒い粘液にソレイユは囚われ、何かがヤバいとルージュは感じる。


「クソ、自分をモンスター化していやがった。所詮考える事は一緒か!」

「ソレイユ!」

「来るな!巻き込まれたいのか!?」

「それは、危険よ!早く助けないと!」


ソレイユは不敵に笑った。


「自爆魔法を発動する。運が良ければ再生するから心配するな、それより防御しろよ!」

「でも!」

「あぁもう、スケルトン!」


ソレイユは召喚したスケルトンで無理やりルージュを拘束する。

爆発に巻き込まれたら復活も難しいと思い、出来るだけ多くのスケルトンでルージュを捕まえる。

骨の海に飲まれながらも、必死に自分に手を伸ばすルージュを見てソレイユは苦笑した。

……気付かれたか。


おそらく、自爆魔法を発動しても通常通り復活する事は出来ないと分かっている。

直感としか言いようがないが、自分の存在を喰われているような何となくそんな気がするのだ。

人間からリッチになった時に味わった感覚に近い。

予想だが、魂に何らかの干渉をされているのかもしれない。

そう言う魔法を自分は使えないが、魔王が使えるのだ。

存在しない訳ではない。ナオキが使えても、いや能力で使えて当然だろ。

……だから、多分復活は出来ない。


「まぁ、でも悪くない人生だったな。どうせ三回目もあるだろし……ははは、そうだよ……」

「ソレイユ!」

「……じゃあな」


でも、これでルージュを殺しに来るやつは死ぬ。

仲間を守って死ねるなんて、俺ってばカッコいいな。

本当、最高の死に様だぜ……あぁ、もう少し馬鹿やってたかったな。




ルージュの目の前がソレイユの自爆魔法によって閃光に包まれた。

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