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ドラゴンになりました、使い魔らしいです   作者: NHRM
成り上がり・建国編
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カオス平野と死者の群れ

騒動は太陽が昇る前に終わった。

事情を説明し、獣の皮を服として貰いソレイユは話をする。

所謂、今までの経緯という奴だ。


「では、貴方はモンスターになってはいるが第三王子のイグニス・ソレイユなんですね?」

「そうでもあるが、私はもう王族ではない。ソレイユ、ただその人なんだ」


どうやら拘りがあるらしく、イグニスの名を使わせたくないようだった。

どうしてあんな凶行に出たのかと言うと、テラ王国に人身御供されるのは嫌だったためだ。

賠償金の代わりに身柄を差し出せと言われて、本人の預かり知らねところで決められたのに腹が立った。

そして、差し出された自分に起こる何かによっては死んだかもしれない事。

それを回避するには仕方なかったらしい、ソレイユはそう説明してくれた。


「困った、夜なら見えにくいから誤魔化せるが明らかに人外だからな」

「アクア王国には聖職者が多いんだろう、では小国か。いっそ、エルフの森でも……いや無理だな」

「小国かにゃ……」


ルージュの持ってきた問題に頭を悩ませる一同だった。

そんな姿を見て起きながらソレイユはカタカタ歯を鳴らしながら笑って言う。


「居場所が無いなら作ればいい。紅の帝国だったか?ルージュは女帝だったんじゃないのか」


その言葉にキョトンとしていたルージュは見る見るうちに顔を赤くする。

黒歴史を暴露された瞬間だった。


「わぁぁ……」

「おい、そんな話聞いてないぞ」

「いぁ、違ぁ……」

「フッ、女帝か。エルフの若者に多いな、そういう夢見る奴」


ガン、と頭をぶつける音がした。

エリーの一言が止めとなり、声にならない奇声を発しながら悶え始めた。

恐ろしい病の記憶が今、呼び起こされる。


「いやぁぁぁ、やめてぇ……」

「俺は不死者だからな、安全は作るしかないのだ。国家には土地と人と力が必要だ。領地、人民、主権。治める土地と住み着く国民、そして他国に認めさせる力。このまま世界はテラ王国が上位にその他の国が下位になる。果てない戦争の時代が来る」

「何を言っている、勇者が魔王を倒すのだろう?」


ソレイユの言葉にアリアが噛み付く。後ろで悶えるルージュは二人とも無視だ。

アリアの言葉を鼻で笑って小馬鹿にしながらソレイユは答えた。


「愚か者が、そんな事してみろ。次はテラ王国とその他の国が戦争する。あの国は強すぎる、だが圧倒できる程ではない。共同戦線でも張って輸入を止めれば殺すことも可能だ。いま成り立っているのは人類の希望と言う立場あってこそだ、人は強大な敵を前に強大な味方を殺せないだけなのだ」


だから、何らかの手段を持って勇者は魔王と戦わなくなるな。そう、ソレイユは締め括った。

アリアはその言葉を聞いて、確かにと納得しながらソレイユを睨みつける。

多分、そこまで馬鹿にしなくても良いだろうと思っているのだろう。


「更に言えば俺の目的は他にある、近年の急成長は偏に勇者が出現したからではない。その前からもテラ王国は国力を増してきた。小さな発展の連続で巧妙に隠されて馬鹿どもは気付いていないが、始まりはエルフから始まった」

「どういうことだ!?」


エリーがその言葉に、何故エルフが関わっていると驚愕していた。

それを楽しそうに眺めて、たっぷり時間を掛けてからソレイユは説明する。


「現テラ王の父親の政策、製造業の発展の為の行動であらゆる被害があった。それは原住民に対してからか記録は少ない。また、彼らの事情も分からないために調べるのに苦労した。だが、私は見つけたのだよ奴隷から齎された情報によって世界の分岐点となる事件について。それは、エルフの宝が盗まれたと言う物だ」

「それは……」

「確信したのはテラ王国に現存する不壊の双剣でだ。現在はドラゴン狂いの姫様が持っているらしいが、問題はそこじゃない。世界を司る精霊が封印された本、予想ではアカシックレコードであろうそれが発展の理由だろう」


俺以外のメンバーは首を傾げるが、俺はその意味が分かった。

アカシックレコード、それは簡単に言えば世界の始まりから終りまでの歴史。

運命と言われるような物である。それを本と言う形で読む事が出来るならば、自分に都合がいい形に改変出来るかもしれない。もしかしたら修正力というような本来の形に戻す力が働くかもしれないが、それを利用する形で利益を出せば問題はない。


「もしテラ王が持っているならば、俺はそれを手に入れたい。奴の行動原理が全て分かるはずだ、世界の真実がそこにあるだろう。ならば、力が必要だ。数も質も優れた国家の建国が必要なのだ。奴の企みが何だか知らんが、俺の行動が見通されていようが、運命が決まってたとしても俺は生まれたからには抗わないといけない。何故なら、俺は生きているのだからな!」


胸を張る、腰布とマントだけの全裸の男がそこにいた。

何か、ダメな気がする台無しな光景だった。


「おい、拍手喝采はどうした」

「はい、解散。馬鹿はほっといて出発するぞ」

「おい、待て。俺の話を聞いた感想はないのか、あっ、ちょ、待ってください」

「何してる、速く行くぞ」

「えっ、一緒に行っていいの!?行く行く!」


冷たくアリアに扱われているのに、ホイホイ付いて行く全裸の姿が其処にはあった。

チョロい全裸である、まさかこれが歴史の一ページに記される事だとはまだ誰も知らない。

俺もだったらいいなと思うだけだが、もしかしたらという凄みが奴にはあった。




俺達の進む場所はソレイユの言葉によって決まった。

当初、どこかの小国に行くつもりだったが良い場所があると言われてある場所に向かったのだ。

それは、名前がない国。国と言うには混沌とした平野。集落同士が絶えず争い繁栄しては滅亡する、争いを繰り返す広大な大地。人は名もなき国カオスと呼んでいた。


「いやぁ、良い場所だな。今はジーヴァだっけな、どうせ名前変わるんだろうな」

「どこが良い場所だ!もう何回襲撃にあったと思ってるんだ」


俺達は馬車に乗って、カオスという平野に来ていた。

国が出来ては無くなる事から名も亡き国、混沌とした様からカオス、名も亡き国カオスやカオス平野と呼ばれる土地だ。

今はケンタウロスが一番の勢力らしく、ジーヴァという名の国として周囲には喧伝しているらしい。

最も貿易など出来ないので、他国には平野としてしか認められていない。

地図に描いては消えるこの土地を、いつしか誰も地図に残さなくなった。

地図の中の空白地帯、カオス平野の誕生だ。


「ここは常に戦いだ、強い者達が多く人種は様々、そして誰もが目を向けない無法者の土地だ。力こそ全ての弱肉強食、我らが紅の帝国を作――」

「うわぁぁぁぁん、殺してやる!」

「――ハッハッハ、神聖武器に触れられぬ貴様に俺は倒せまい。良いではないか、帝国だ。ヤンヤン経由だが新しい概念。王国しかない時代を発展させるに適した名前だぞ。帝国って言うのは俺の中では軍事力を持って自国と他国を支配する国だ、支配国の対応で滅びる事もあるがそれもあるまい。嫌がらせにルージュ帝国にしてやろうか?」


まぁまぁ、と仲間たちに抑えられながらも激怒するルージュ。

しかし、ソレイユは涼しい顔だ。


「これから俺達は集落だ。あとは戦い支配する、だが出来るだけ殺さないで支配する。圧倒的な力で恐怖を与え、慈愛の心で国民とするのだ。そうすれば勝手に訓練していた兵隊が集まる。主権なんてものは、癪だが俺が王族でだった事からでっち上げよう。領地も申し分ない、立地条件も大国が殆ど近くでないから素晴らしい。奴らは安定志向で危険地帯の近くにいないからな」


どうやら既にソレイユの中で構想は出来ていたようだった。

コイツの語る行動理念、リスクを考え最小限の労力で最大限の利益を出す。

その中で最も効率がいいのではと考えたのがここにいる理由だった。


「流石に住み着くのは無理だろ、私としては予定通り珍しい物を交易して手土産に他の小国に行くつもりなんだが」

「馬鹿め、俺はリッチだぞ。死者を操れば生臭坊主以外に無敵の軍団を作れるのだ。寄付だけで生きてる奴らが生き残れない環境で、俺の戦力は最強である」

「全裸なのに出来る全裸だったにゃ!」

「おぉ、カシスよ!もっと褒めるのだ、俺は偉大なる存在だからな。まぁ、王族は面倒だから全部ルージュに押し付けるがな」

「何でよ!なんで私の名前が出て来るのよ!」


再び喧嘩が始まり、決着は尽かない状態が再び起こった。

馬車の中は常に騒がしいのだった。




カオス平野に来てから数日が経った。食料を食いつぶして、適当に襲撃してくる奴らから略奪したりして生計を立てていた俺達だが、遂に安定した食料庫を見つけた。村である。


「ヒャッハー!村だぜ」

「待て待て、どこに行く全裸」

「フッ、今日の俺は服を着ている」

「なん……だと!?」


ほれほれ、とマントの中を見せるソレイユと固まるアリア。

その横で尻尾を揺らすカシスがいた。どうしたのだろうか。


「どうやら、狼系の獣人の村みたい。肉の匂い」

「あぁ、肉が欲しかったのね」


尻尾があるとこういう所が分かりやすい。

しかし、獣人の村か。戦うには骨が折れそうだ。


「奴らは早い、略奪なんて出来ないぞ。それより交易しよう」

「馬鹿め、ここに住むのだ。それに見せてやる死者の力って奴を!」


ソレイユが馬車から飛び降りる。

大地に足を着き、片腕を天に向けて挙げた。


「恨み、憎しみ、怒り、猛り、苦しみの果てに死した者達よ。我は死者の王、ソレイユである。己が情念と我が魔力を糧に顕在せよ。我に従いて、軍を為せ。我が声の元に集えよ同胞!」


バン、と挙げられた腕が地面に落ちる。それは片手を地に着ける形だ。

そして、引き上げるように後方に手は動いた。

手の先、そこには禍々しく黒い泥のような物。

それは、引き上がると同時に周囲に雨のように降り注ぐ。

金属を叩いたような音がした、何かが蠢く音がした。

雨が地に落ちるや否やそこから這い出る骨の群れ。

様々な骨格、犬のようであったり馬と人を合体させたようであったり、様々な種族の骨が禍々しい鎧を、武器を、持って現れた。その数は時間経過と共に増えて行く。


「見ろ、我が軍は圧倒的ではないか。無限に、死なない、感情のない兵士達。逆らえる者などいないのだ」

「やべぇよ、やべぇよ、全裸なのに強そう」

「ハッハッハ、ヤンヤンよ。そう慄くな、カッコいいだろ」

「ハァ……アンタ、別に長ったらしい台詞言わなくても軍団出せるって言って無かった?」

「馬鹿め、演出に決まっ!?うわ、何をするやめろ!」


再び喧嘩が始まったがそれどころではない、ソレイユの実力は改めてスゴイと思える瞬間だったからだ。


「あの鎧、無限に出せるなら売るべきよ!」

「魔力が切れたら消えるんだよ!」


おい、金勘定ってルージュお前もブレないねぇ……

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