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ドラゴンになりました、使い魔らしいです   作者: NHRM
成り上がり・建国編
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第三王子イグニス・ソレイユ

最初に思った事は気安さだった。

スルリと懐に入る様な気安さ、まるで仲の良い友人に会うかのような態度で俺達を見ている。


「二人、でいいんだよね。気配が薄くて分からないけど使い魔はいるんだろ?」


彼はそう言って答えを聞かずに部屋の中へと入っていく。

部屋の中にはテーブルとイスがあるのだが、そこにある魔道具でどうやらお茶を入れてくれるようだった。立ち止まるルージュに微笑みながら、どうぞと促した。


「王族が自分で茶を入れるなんておかしいだろ。でも、自分でやらないと気が済まなくてね」

「…………」

「話があるんだろ。さぁ、中に入りなよ」


警戒を怠らず、ゆっくりと歩み寄るルージュ。

その先は王子の対面にある、軽く引かれた椅子だ。

ニコニコと座るのを待つ王子に対して意を決したようにルージュは椅子に座った。


「さて、初めましてだね。私はイグニス・ソレイユ……名前的にはソレイユだからソレイユで呼んでくれ。いや、まぁ知ってはいるんだろうね」

「ルージュです」


楽しそうに、王子はテーブルに肘を着きながらルージュを見た。

王子、いやソレイユは目線を下げてから上げてニッコリと笑う。

観察している、そう感じた。


「私に用があるんだろ、話して欲しい」


知らない人間、それが外から侵入して来て普通ではない対応。

それは自信だろうか、何をされても平気であるかのような態度だ。

ゴクリ、とルージュが紅茶を飲む音が聞こえた。お茶を飲んでいる際も視線は外されない、やはり彼は俺達を観察していた。


「失礼、ヤンヤン出て来て」


俺は呼ばれてゆっくりと影から出て来る。

ピクッと一瞬だけ腕が上がったが表情に変化はない。

ただ、ほぉと小さな声が漏れただけだ。

続いて、目線が下に向く。その先は、パイルバンカーだ。


「あぁ、なるほど。それが話題であり君の理由だね」

「此方はパイルバンカーと言いまして――」

「お願いがあるんだろ。危険を犯してまでのお願いが」


ルージュの言葉は続かない。先に王子が答えを推測したからだ。

その通り、そう言うしかなかった。


「私達を、保護して欲しいのです」

「私のメリットを聞こうか」


どう答えるべきか悩み、言ったルージュの言葉を斬り捨てるようにソレイユは応じた。

それが現時点でパイルバンカーの提示が意味する事を理解しながら発せられたと言う事は、ソレイユは他のメリットを求めているのだろう。


「珍しいから持ってきたそれの製造法、権利、現物、情報、君は何を持ってお願いをするのかな。私でないといけないと言うならば、私以下の地位の貴族では無理な問題なんだろうね」

「それは……」

「保護、つまり後ろ盾だ。権力が必要ならば国内での商売か犯罪か、そして今夜の行動からして犯罪だろう。何かを犯しているか犯す予定、逃げる準備もしているようだね」


ルージュは固まったまま何もできない。噂なんて当てにできない、どこか馬鹿なのか。

その目は捉えて逃さないような視線を発している。


「言葉を選ぼうとしている、なら君は慎重になる理由がある。失敗できないならば、もうしてしまった。そして、この時期に貴族に知られ利用されると拙いかもしれない問題の大きな犯罪か――」


真に迫るようにソレイユは言った。


「――もしかして、君は我が国を敗走に追い込んだのかな?」


何かがヤバい。ルージュは咄嗟に立ち上がる、しかしそれより先にソレイユが動いていた。

対面から迫る腕、とっさに顔を逸らすルージュ。

光だ、床から光が発生していた。

足元、それも俺とルージュの真下が光る。それは、カーペットに隠蔽されていた光る魔法陣だ。


「ッ!?」


視線は下に向け飛び上がる、しかしそこにソレイユの避けられた腕が軌道を変えて迫った。

服を掴んで引き寄せる、ルージュの身体が宙を舞う。

背中から一回転して叩き付けられる、苦しそうな小さな声が漏れていた。

俺はそれに向かって飛び掛かった。ルージュを助けるためだ、だがソレイユは俺に向けて掌を向けて。


「発動」

「う……ぐっ!?」


何かが、数秒後に俺を吹き飛ばした。

視界が回る、衝撃が体に通る、そして数秒だけルージュが視界から逸れた。

俺は空中で体を捻り、床に着地する。視線の先は再びルージュへと向けながらだ。


「動かないで貰おうか、犬」

「お前……」


俺の視界には、抑え込まれるルージュ。

どこからか取り出したナイフを首元に、ルージュの背中にソレイユは乗っていた。

何をしているのか分からないが、並みの力で無いはずのルージュが暴れても動く事が出来ない。

何かの技なのかもしれない。


「良い目だ、不安かね。彼女の事が心配かな」

「どうだろうな」

「筋肉はついてないのに力強い、人ではないね。背中の翼から有翼種かと思ったけど牙と赤い瞳だから吸血鬼か。魔王の差し金かい?」

「それは違う」


何か手を考える、だが全てがルージュを巻き込みかねなかった。

奥の手として毒を撒き散らせるが、それは今までよりも状況を悪くする。

一度くらいなら死んでも平気、ならば静観するか突っ込むか。


「ナイフは銀製の祝福礼装、動けば彼女は死ぬだろうね」

「何が望みだ……」

「それは、どこで手に入れた?」


パイルバンカーに視線を一瞬だけ移して言った。

行動の理由はなんだ、正確に詳細を知りたかったからか?

何故そこまで執着する。


「俺が仲間と作った」

「犬、だが骨格が違う。鱗も垣間見えるが、チグハグな形。お前、キメラか?」

「そこまで分かるのか!?」

「いや、まさか、だが……」


初めてはっきりとソレイユは驚愕の表情を向けていた、それは俺の存在を認識して何かに気付いたかのようだった。

そして、試すような声音で俺を見ながら単語を口にした。


「ベイハイダオ、チャンチ、ドンジン、ジンドウ、何か聞き覚えは?」

「中国語、なのか?」

「君は、もしや転生者なのか?キメラドラゴンに憑依しているのか?」


俺はその言葉に口を開ける。言葉が出ない、まさかという考えが浮かぶだけだった。

だが、その反応は彼の中で確信を与える物だった。彼は、そうかと口角を上げて俺を見ていた。

笑顔だ、今までの作り物めいた完璧な物とは違う微妙な笑顔だ。


「今から彼女を解放する、もう襲わないし戦わない。もう一度、話をしよう。ここは防音だから見張りは来ないしゆっくりと、そして貴方の名前を窺いたい」

「ヤンヤン……だ、今はそれが名前だ」

「なんか、パンダみたいですね」

「だよな~」




拘束を解除されて涙目で不貞腐れているルージュを横目に俺達は歓談する。

前世の話や、今の生活などだ。

面白い事に、ソレイユの前世は俺の前世のパラレルワールドだった。

そしてナオキのでもある。


「纏めると、中国が世界を征服してるんだな」

「最大国土を保持して経済支配していると言うならばそうだろうね。日本だっけ、遣隋使の頃からの歴史に相違点があるから私は知らない地名だね。そもそも歴史に詳しくないと分からないかもしれない」


ソレイユの前世、それは日本が中国と初めて接触した所から分岐した世界だった。

歴史のあらゆる分岐点で中国がリードした世界。

簡単に言えば、中国勝ち組ルートの世界だった。


他にもナオキの事や転生者の話をした。

ソレイユは自分がいる世界は異世界だと認識していたが物語の世界とは認識していなかった。

だが、勇者の正体は予想していたようだった。


「可能性の話だからね。予言は当たってるしね、指輪も手に入ってるよ大臣が殺したら持ってた」

「お前、結構恐いな」

「もう、暗殺が三桁を越えた時点で人間を信用してないからね」


まぁ、同郷だから多少は信用するよ。そう彼は笑いながら言った。同郷、なのかな……


「それで、保護の件だっけ。結構無理かな、情勢が安定したら私は……俺は国の礎になる」

「どういうことだ、情勢?」

「簡単な話、予言の通りになっている。テラ王国のタヌキが独り勝ちだな。それで、タヌキが俺を求めてる。魔力はあるが魔法は使えない特別な存在かもしれない俺を……」


素の自分なのか、不機嫌そうにソレイユが語る。

この世界の奴らは馬鹿だから俺の価値を理解してないとか。

タヌキ、っていうかテラ王国の王様がなんか腹黒いこと企んでるとか。

様々な考察で自分が行きついた事を話す。


「恐らく、アリアって人と俺とペトロってのは特別だ。そして、無属性魔法使いって奴だろうね。強力な力を使って世界征服でもやりそうだ。今、世界が変わったからね。魔王の進行でいまや大国として機能できるのはテラ王国だけだ。ウェントスは今度の戦で弱体化、複数の小国とテラ以外の王国は同等の戦力になるね。そしたら、テラ王国を止める事は無理だ」


パワーバランスの崩壊、そしてそれを利用する形で動かしているのはテラ王国の王様だろうとソレイユは言った。

ソレイユも何とかしようとしたが政策は上手くいかなかった。

自分が知る知識での発展はナオキと真逆の失敗に終わったからだ。それが、うつけや馬鹿と呼ばれる理由らしい。


「急激な変化は無理みたいだったよ。邪魔になって殺されかけたりもしたね、今じゃ殆ど俺の身体は魔道具だよ」

「マジかよ、お前自分の身体改造でもしたのかよ」

「魔法があるからトンデモ医療で可能なんだよ。高い魔力を運用するなら合理的だろ」


俺を弾いた技も魔道具の義手によるものだったらしい。

そして、自分の権力が使えないと言うことだった。


「無駄、だったって事よね。私は分かってないけどヤンヤンはやっぱり普通じゃないのね」

「まぁ、おかしいとは思ってたもんなお前」

「取り敢えず、帰りましょう」


ルージュは疲れた感じでバルコニーに向かった。

残念だが、お別れのようである。


「あっ、俺も連れてってよ」

「やだ!」


別れを惜しむ俺の傍らでソレイユを無視してルージュはバルコニーから飛び立った。

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