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メアリが辛いのはどう考えても俺が悪い

事態が急激に変わってしまった為に俺はこれからの対応を考える。

やはり、まずは石化した餓鬼どもの確保だ。

コカトリスが群れでいるとは思わなかった俺の作戦のせいで、危険な目に遭わせてしまっているのだ。

責任を持って助け出さないといけないだろう。


俺は羽ばたきながら思考する。

上空から見ることで分かったのだが、コカトリスの魔眼は常時発動ではないようであった。

理由として、コカトリスの周囲が全て石になっていないからだ。犇めくほどに無いにしろ、数匹が群れで移動しているのだ。その視線の数は、周囲を埋め尽くすだろう。

だが、周囲の一部が石になっているが全てではない。また、孤児の周囲のみ石化していることから自分の意志で操作できる能力かもしれない。

この世界で言うならば、魔力が魔眼を媒体に石化する視線を作っているんじゃないだろうか。


このことから認識されない奇襲ならば姿を見せても平気だろう。

まぁ、そんな危険な賭けには出ないのだけどな。


「最初からこうすれば良かったんだよな」


メアリから怒られそうだが、手っ取り早い手段でありそんなことを気にして文句を言う団体はこの世界にはいない。文句があっても平民は貴族に逆らえないからな。

最後の孤児が石化するのを見て、俺は息を吸い込んだ。

滞空した状態でタメを作るように鎌首の状態で森を見る。


「ポイズンブレスだ!ブゥゥゥゥゥ!」


胸からから込み上げる毒物を吸い込んだ空気と共に圧縮して吐き出す。

ただし、感覚としてはプロレスでおなじみの毒霧だ。

俺のリアル毒霧を農業用の殺虫剤を撒く飛行機のように散布していく。村には霧状の毒がドライアイスの煙のように降り注ぐ。

コカトリスは視線と吐息に猛毒を持つと言うが、恐らく石化の視線と言う事なので此方の世界のコカトリスは石化する視線と吐息、それと石化耐性を持っているんだろう。故に俺の毒霧は効くはずである。


そんな事を思いながら毒を散布していると変化が訪れる。

まず家が腐食してきた、建物が音を立てながら崩れ出したのだ。

そして村に生える野菜、雑草、森の木々。これらが触れた先から浸食される様に枯れていく。


……えっ、俺の毒ってこんなにヤバかったっけ?


暫く使ってなかった毒の強さに慄きながら、ぐるりと村の外周を飛んでいく。

外側から内側に向けて円を描くようにコカトリスを追い詰めるのだ。差し詰め絨毯爆撃だろうか?

爆撃じゃないけどな……


「あっ、お前ら逃げろよ」

「え?ちょ、こっちくんな!」

「何してんすか、嘘でしょ!?」


外周近くで毒を散布しているうちに騎士を見つけて思い出したように忠告する。

俺の毒は解毒する方法が無いのだ。まぁ、俺の血液から抗体でも見つければ別だろうがな。

重い鎧を身に着けて、暗闇から俺の声を聴いた騎士達が何をしているのか気付いて慌てて逃げ出していた。

一人、鎧を着るのが面倒だったのかローブで来ていた奴が一番早く逃げ出していた。


俺の革新的作戦は実に順調に終わった。

村の家屋はすべて腐り落ち、至る所に汚染された毒沼を作っている。

森や畑があった場所は枯れた植物だけとなっており、枯れ木の下に横たわるコカトリスは美味しそうだ。

随分と見晴らしがよくなったが、コカトリスも食べても平気そうだし結果オーライである。

こうして、村に訪れた災害は幕を閉じるのだった。

よし、じゃあ食べるぞ!


「うーまーいーぞー!フライドチキンの味が生なのにするとかコカトリス最高だな!百匹ちょっとしかないとか残念すぎる、もっといればいいのに」

「きゃぁぁぁぁぁ!?なんで私の被害予想より酷くなってんのよ!村ひとつ消えてんじゃないの、ざけんな!?金銭収入が無い!っていうか平民の住居のせいで出費が!」

「えっと……食べる?」

「うっ……ぐすっ……ひっく……ひうっ……」

「おいやめろ、悪かった。俺が悪かったから泣きながら魔法を撃たないでくれ!やめろ、やめ!やめて、お願いしますやめてください!」




件のコカトリス騒動が終わって村は綺麗になった。文字通り綺麗サッパリ更地である。

メアリは教会の神父達を集めて多額の寄付によって浄化の魔法で綺麗にしてもらっていた。

教会は病院だけでなく清掃のような物もやっているようだった。

災害は支援金が貰えるらしいのだが、今回は俺のせいで無しになった。

しかしコカトリスの大量繁殖という名目で情状酌量の価値ありと判断され、ある程度は纏まったお金を貰えるそうだ。少なくとも三年で元は取るつもりらしい。一件落着である。


「な、何サボってんのよー!働きなさいよー!」

「げっ、もう来やがった!?」


今はと言うと、肉体労働しろと俺も駆り出されて毎日のように平民の手伝いをしている。

そんな俺達の元にアイツらが来たのはコカトリス騒動から数日たった頃だった。


「手紙、誰から?」


ある日の事、書類の山の中でメアリが悪戦苦闘しているとルイスが手紙を持ってきた。

あて先はメアリ、送った相手はペトロだ。


「知り合いかい?ヤンヤンがイベントがどうの騒いでいたよ」

「先輩よ……心配して来てくれるんだって」

「も、もしかして!あの領地のご息女かい!?」

「うぅ、そうよ……」

「イィィィィヤッフゥゥゥゥ!」


少し引き気味に肯定すると、案の定ルイスが狂喜乱舞してしまい頭を抱える。

どうしてこんなやつが婚約者なんだ、と。

頭を抱えながら、煩わしそうに手紙を読む。

そして、思わずため息を吐いた。


実家に帰り、父が開拓地へと左遷されてからメアリは実質当主として動いていた。

周囲の貴族には辛酸を舐めさせられ、悔しい思いを何度もしていた。

腐っていながらも父は貴族としては真っ当だったのだ。

現在、ドレッド領は周囲の貴族から舐められており様々な妨害や嫌がらせを受けている。

この間報告にあった山賊など、明らかに新品の武装をしており何者かに支援されていたはずだ。


そんな場所にお忍びでもなんでもなく、公爵の先輩が押し掛けてくるのだ。

まず借金をしてでも出迎えをしなければ対外的に立場が危うくなる。

また、特別な農法を教えに来ると言うがリスクを考えるとドレッド家にはそんな余裕はない。

土地ごとに環境が違うのだから同じ結果が出るか分からないのに危険な投資などできない。

しかも、それをネタに周囲の貴族に今度は揺すられるかもしれない。現在、借金をしている身であるので相手の方が立場が有利だ。


「本当忌々しい、助けに来たのか窮地に追い込みに来たのか……」


少なくとも控えめであるペトロ先輩はそれくらい気付くはずである。

怪しい、絶対ナオキって奴が怪しい。そもそも、アイツが現れてからというもの――


「よそう、嫉妬何て醜いだけだわ……」


少しだけ零れそうになった涙を服の裾で拭い、メアリは胸を張って屋敷の者達に指示を出した。


「公爵家が来ることが決定したわ。時間は無いけど、準備を開始しなさい」

「しかし、予算と時間が」

「食事にだけ力を注ぎなさい、ウチは食道楽の蜥蜴のせいで料理だけは自慢なんだからお金もそこだけに絞ってたくさん作るのよ!形式は立食、紹介状を書くからすぐに連絡しなさい!」


早々と捲し立てる当主代理メアリ、彼女の苦労はまだ続くのだった。


「ヤンヤン、山に行って何か狩ってきなさい!」

「えー、やだよめんどくさい」

「良いから、食事抜きにするわよ!この馬鹿トカゲ!」

「分かったよ、もう……」

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