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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第70話 最後の試練

第70話を読みに来ていただきありがとうございます。

 明里さんがいなくなってから二ヵ月が過ぎた。今まで当たり前のように明里さんと彩香さんが何度も入れ替わる様子を見てきたからか、ずっと彩香さんが出ていることに最初違和感を感じていたが、やっと慣れてきた。そして、僕自身ようやく、明里さんとの思い出を楽しく振り返られるようになった。

 彩香さんとは仲良くやっている。しかし、どうしても明里さんに抱いた感情を彩香さんに抱くことは出来なかった。きっと、僕自身が明里さんと彩香さんを別人として考えているからなのだろう。でも、それでいいかなと今は思う。明里さんは僕の初恋の人、彩香さんは仲のいい友達。割り切って接することも悪くない。



 家に帰ると自室の机の上にメモが置いてあった。どうやら真二が書いたもののようだ。

 そうか、今朝少しの時間だけ珍しく真二が出てきて、何をしていたのかなと思っていたけど、これを書いていたのか。真二は基本、入れ替わったときにあったことは連絡ノートに記している。けれど今回みたいに大事な連絡はメモ帳に直接書いて机の上に置いていることが多い。つまり、今回も何か大事な話か連絡があるのだろう。

 僕はそう思い、そのメモの内容を確認する。


『明里と彩香が一つに戻ってから、二ヵ月が経ったな。英一はその間、俺の力を借りることもなく、一人で辛いことを乗り越えていった。強くなったな。もうきっとこの先一人でも大丈夫だろう。

 そこでだ、最後に俺が預かっていた両親の記憶を英一に返そうと思う。その記憶を目の当たりにして、取り乱したりはするだろうが、英一自身の力で乗り越えたなら、俺はもう消えようと思う。

 する、しない、は英一の自由だ。両親の記憶が欲しいならやればいいし、まだ乗り越えられる自信がないならやらなくてもいい、英一の好きにしてくれ。

 最後に断っておくが、俺に遠慮なんてするなよ? 俺はずっと、英一が一人で生きて行けるようになることだけを望んでいる。俺自身が消えることはその望みが叶ったということで喜ばしいことなんだからな』


 僕はそのメモを読んでにやりとする。

 ついに来たか。僕はずっと前から両親の記憶が欲しかった。富永さんの母親が明里さんや彩香さんを大事にしていたり、通りすがりの親子の仲が良さそうな様子を見たりするたびに、僕の両親は僕のことを大切にしてくれていたんだろうか、といつも疑問に思っていた。

 やる、やらないは自由? もちろんやるさ、今まで無理やり思い出そうとするたびに真二が出てきて、それを止められてきたけど、遂に真二から許可が出た。今の僕なら記憶を取り戻しても問題ないと真二に思われたんだ。ようやく、両親のことが分かる。僕が大切に育てられていたのか、どうして亡くなったのかなど全部。

 待っていてよ真二、その記憶かならず乗り越えて、もう僕一人で生きていけると証明してみせるから。

第70話を読んでくださりありがとうございました。

次回いよいよ、英一の過去が明らかになります。



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