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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第69話 手紙

第69話を読みに来ていただきありがとうございます。

 次に僕が彩香さんたちの病室に訪れたのは、明里さんが消えて、一人の人格に戻った後だった。

 彩香さんから渡したいものがあるから来て欲しいと言われたので、訪れた。

 病室の扉の前に立ち止まり、この扉を開けたらいつもみたいに明里さんが出向いてくれるんじゃないか、そう思いながら扉を開けてみる。しかし、やはりそこにいたのは明里さんではなく、彩香さんの方だった。

 それから彩香さんから一通の手紙を貰った。彩香さん曰く、あの日僕が帰ってから、明里さんが出てきて、最後に書き残したものだそうだ。

 僕はそれを受け取り、すぐに病院を後にする。明里さんと彩香さんが一つに戻ったということで、どうやら明日にはもう退院するらしい。彩香さんは退院の準備で少し忙しそうにしていた。それに僕自身、ここに長居すると、明里さんとの最後の出来事を思い出して泣いてしまうような気がした。いつかは忘れられない思い出にしたいが、今はまだ、明里さんのことを思い出してしまって、寂しくなってしまう。


 僕はどこにも寄らず直接帰宅し、早速彩香さんから受け取った明里さんの手紙を開く。

 そこには綺麗な文字でこう書いてあった。



『佐々岡 英一 様

 この手紙を読んでいるということは、私がいなくなって、彩香から受け取ったということですね。その後をいかがお過ごしでしょうか。

 なんてね、堅苦しい文は終わりにして、ここからは普通に書きます(笑)。

 英一君のことだから、私がいなくなって寂しい思いをしているんじゃないかと思って、少しでも励みになればとこれを書いています。あと、最後に英一君と会った時のことを少し書けたらなと。

 実はあのとき、英一君が最後に私と会った時、英一君が私を選ばないことは分かっていたの。英一君が私のことを好いてくれていたのはずいぶん前からわかっていたし、多分私が英一君のことを好きだったことも知っていたと思う。でも、だからこそ分かっていたんだ。英一君のことが好きで、英一君の行動とかをずっと見ていたからこそ、優しい英一君は好きだからという理由だけでは絶対に私を選ばないということは。

 彩香に入れ替わってから話していた、彩香を選んだ理由、私も聞いていたよ。やっぱり英一君は『好きな方』ではなく、『生きるべき方』を選んだね。自分の気持ちを押し殺してまで。

 でも、私はそんな優しい英一君が好き。だからあのとき、英一君が彩香を選んでくれて少しホッとしたの。私を選んでいたら少なからず失望していたと思うから。だから『ありがとう』と言った。評価を落とすことなく、大好きな英一君のままでいてくれてありがとうって。

 私はもうじき消えちゃうけど、英一君はいつまでも私のことを引きずらずに、新しい恋を見つけてね。彩香でも、別の人でもいい。今度は私たちの幸せのためじゃなく、自分の幸せのために頑張ってね。

 いつか英一君が心から幸せだと思える家庭を築けることを、彩香の中からこっそり見守っています。


  20○○年8月21日

                               富永 明里


 追伸 たまに、本当にたまにでいいから、私のことを思い出してくれたらうれしいなあ』 

                                       



「わかった……」


 悲しさのあまり大粒の涙を零していた僕には、そう呟くのが精いっぱいだった。明里さんありがとう。いっぱいいっぱいありがとう。明里さんと過ごした時間は僕のかけがえのない宝物だよ。そして、選んであげれなくてごめん。それでも僕は君のことを永遠に忘れないよ。約束する、絶対に忘れない。いつか僕が死んで、彩香さんも亡くなったら天国で会おう。副人格だから行けない? そんなことはない、絶対に会えるよ。だからそれまで少しの間お別れだ。


「また会おう、明里」


 明里さんからの手紙は強く握られてクシャクシャになっており、一部は涙がこぼれて滲んでいた。

第69話を読んでいただきありがとうございました。


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