第68話 決断の理由
第68話を読みに来ていただきありがとうございます。
明里さんから彩香さんへと代り、その彩香さんは困った顔をしながらこちらを見ている。
「えっと、もう彩香さん一人に戻った感じ?」
沈黙が気まずくて耐えられなくなり、僕が先に口を開く。
「いえ、英一さんが私を選んだからっていきなり消えるものではないわ。明里はまだいる」
「そっか……」
僕は下を向きながらそう答える。
「言いそびれたことがあれば今ならまだ明里と代われるけど、どうする?」
その問いに対して、僕は迷わず静かに首を横に振った。
「いや、いい。もう思い残すことはない」
「そっか」
「うん」
もう十分だ。沢山楽しませてもらった。最後に抱き合ったときの明里さんの温もりはきっと一生忘れないだろう。
「それはそうと」
彩香さんが話題を変える。
「英一さん、本当に私でよかったの? そりゃ私は嬉しいけど、英一さんはそれで悔いが残らない?」
今彩香さんから言われて思い出した。そういえばどうして彩香さんの方を選んだのか、僕はまだ彩香さんにも明里さんにも伝えていない。
最初に彩香さんを選ぶと告げた時、一緒に理由も話すつもりだった。けれど明里さんが予想していたより平然としていたから。いや、心の中ではショックを受けていたのかもしれないけど、とにかく僕が予想していた反応とは違ったから、驚いて言いそびれてしまっていた。
まだ、明里さんと代れるということはきっとこの会話は明里さんも共有できるはず。
この最後のチャンスを活かしてちゃんと話さなきゃ。
そう思い、僕は意を決して、話始めた。
「正直、物凄く迷ったよ。明里さんを残したいという想いと、彩香さんを残すべきだという使命感が同じくらいで、自分でも決めきれないくらいだった。
途中、好きだから明里さんを残す、という理由は当たり前のことであって、悪いことじゃないとも知り、その時は明里さんの方に傾いた。
でも、たまたま知らない親子の将来の話が耳に入って、そこで彩香さんの願いを思い出したんだ。
彩香さんは当初、昔の生活に戻りたいと願って明里さんを作り出した。でも、今となっては、それは明里さんでも彩香さんでも、どちらでも出来る。もちろん、それだけなら明里さんが残ってやればいいけど、僕は見ていたから。彩香さんが頑張って、努力して、少しずつ昔の性格に戻れるように、過去の辛い記憶とも向き合って取り組んでいたのを、明里さんを除けば僕が一番知っていたから。だから、その努力を僕の手で無駄に終わらすことはどうしても出来なかった。明里さんとずっと一緒にいたいという想いより、彩香さんを残して自分自身の手で願いを叶えて欲しいという想いの方が勝ってしまったんだ」
僕は一気に、話すつもりだった理由を喋り終わり、最後に一言付け加える。
「だから、彩香さんを選んだことに後悔はないよ」
ふと彩香さんの方を見ると、彩香さんは、きょとんとしており、その後涙を流しながら喜んだ。
「英一さん、ありがとう。英一さんが私のことそんな風に思ってくれていたなんて知らなかった」
次に彩香さんが顔を上げたときには泣き止んでいた。
「私、英一さんの期待を裏切らないように頑張るから!」
それどころか、眩しいくらいのキラキラした笑みを浮かべていた。
第68話を読んでいただきありがとうございました。
ようやく明里さんと彩香さんが一つに戻るところまで書けてホッとしています。正直ここまで来るまでにモチベがなくなって書くの辞めると思ってました(笑)
もう、ここまで来たら完結というゴールはすぐそこなので、気合入れて最後まで書ききりたいと思います!




