第67話 最後のひと時2
第67話を読みに来ていただきありがとうございます。
「ん? もういいの?」
真二と交代したかと思ったら、数分も経たないうちに意識が戻ってきたので少し驚いた。
「うん、いいの。真二君にはお礼を言いたかっただけだから」
真二の記憶はないから、詳しい話はわからないけど、真二はまだ僕が協力的ではなかった頃から親身になっていろいろ協力していたみたいだし、直接伝えたいことがあったのだろう。
「それより」
明里さんは僕の方に向き直る。
「そろそろ、お別れの時間ね。最後に何か言い残したことがあれば聞くけど、ある?」
お別れ……。分かってはいても、いざ言われると言葉が重くのしかかる。
ある、まだ僕には言っていないことがいくつかある。でも、そのうちの一つは、今となってはもう言えない。今言ってしまったら、明里さんを悲しませて、別れが辛くなるから。
だからそれ以外で彼女に言っておきたいことを伝える。
「明里さん」
「なに?」
「明里さんはさっき僕が明里さんたちを支えたって言ってたけど、それは反対なんだ。明里さん達が二重人格と向き合って、頑張っている姿を見て、僕も頑張らなきゃって思うようになった。明里さんたちこそ、僕たちが前を向くきっかけになってくれたんだ。だからありがとう。おかげで僕らの二重人格ももうじき終わることが出来るよ」
僕は今までで一番感謝の気持ちを込めてそう明里さんに伝えた。
「そっか!」
明里さんはこちらを向きながらにっこりと笑った。
「お互いがお互いの二重人格と向き合うきっかけになってたんだ。正直、私たちのことばかり押し付けて英一君たちの負担になっているんじゃないかって不安だったから、嬉しい」
「そんなことないよ! 明里さん達の二重人格を分析することで、二重人格のことがより詳しくなった。おかげで僕たちが一つに戻るのに、やらなければならないことも分かった」
明里さんは満足した笑みを浮かべている。
それから数分の沈黙が続く。次に明里さんが口を開いたときがきっと、最後の会話になるんだろうなと直感でわかる。
「英一君と出会えてよかった」
明里さんは微笑みを浮かべてそう言った。
「ぼ、僕も! 僕も明里さんと出会えてよかったと思っている」
「ふふっ」と笑って明里さんは僕のところへ近づいてくる。そのままゼロ距離になり、ゆっくりと僕に抱きつく。少し驚いたが、僕も腕を彼女の背中へとまわし、ゆっくりと包み込んだ。
暖かい。明里さんの体温が直に伝わってくる。出来ることならずっとこのままでいたい。
「ねえ、英一君」
そのままの態勢で明里さんは僕を呼ぶ。
「なに?」
「……なんでもない。楽しかった。」
「うん」
「英一君と過ごした時間が今まで生きてきた時間のなかで、一番楽しかった」
「うん、僕もだよ」
「……彩香のこと、大切にしてあげてね」
「……うん」
「出来れば、私のことも忘れないでね……」
「うん……」
「さようなら」
「うん、また、ね」
なんとなく、さよならとは言いたくなかったので咄嗟にそう答えた。
明里さんは僕のもとから離れ、今まで見たなかで一番の笑顔を僕に向けて「大好きだったよ」と言い残して彩香さんと交代していった。
第67話を読んでいただきありがとうございました。
明里さんの気持ちとか表情を想像していると泣きそうになったのに、それを上手く文字で表現できないのが悲しい......。このシーンに限らずまだまだ勉強不足なのは自覚しているので、この作品を書ききったら、感情表現や、地の文を書く練習をしっかりやって、その次の作品を書くときはそのようなことがないように努力します。(いずれ、上手く書けるようになったら戻ってきて、今回のシーンとか書き直すかも)




