第65話 決断の時
第65話を読みん来ていただきありがとうございます。
次の日、僕は再び明里さん彩香さんの病室に向かっている。もちろん今日は、どちらに残って欲しいか伝えるためだ。
途中、花屋によって、前回と同じスイートピーを購入した。今日から、彼女たちは新しいスタートを切る。その門出を祝って今回もこの花にした。選ばなかった方に、これとは別にプレゼントを贈ろうかとも考えたけどやめた。こういう状況で選ばなかった方に優しくするのは返って相手を苦しませるだけな気がする。選ばなかった方に過度な優しさを与えないことこそが本当の優しさな気がした。それに優しさで言うなら、選ばなかった方がいなくなってもその子のことをずっと覚えてあげることが一番良い。人格が一つに戻った後しばらくしたら、やがて消えた方の人格は忘れ去られるだろう。そうならないように僕が覚えておきたい。
病室の前に到着して、一度立ち止まる。
「ふう……」
緊張して、鼓動が早くなる。昨日まで必死に考えたうえでの結論だ。だからもう迷いはないけど、それでもやっぱり選ばれなかった方の気持ちを考えると申し訳ない気持ちになる。
けれど、どんなに申し訳なく思っても、どちらか一人しか選べないことは変わらない。それならせめて、なぜそっちを選んだのか納得してもらえる理由を話すのが最大の礼儀じゃないかと思う。それは誰でもない、選択権を貰った僕がやらなければならないことだ。
「よし、行くか」
いつもよりも力を込めてノックをし、病室に入る。今日も出迎えてくれたのは明里さんの方だった。
「いらっしゃい」
明里さんの声も強張っている。それどころか、僕を睨みつける勢いでこちらを見ている。
「あれから一週間の間、悩めるだけ悩んできたよ。結果を聞いてくれますか?」
「はい」
思わず敬語になってしまった。それに合わせて明里さんも敬語で返す。
「……」
「……」
沈黙が場を支配する。言いたくてもなかなか口が動いてくれない。
その間、明里さんは急かすこともなくただ黙って僕の言葉をじっと待ってくれている。『慌てなくて良いから、心の準備が出来てからゆっくり話して』と言われているような気がした。
でもだめだ、言わなければ。
「僕は……」
「はい」
申し訳なさのあまり、目を逸らしそうになった。でも、ちゃんと相手の目を見て伝えなければならない。僕自身が決めた結論だろ、だったら後ろを向くな。
自分に言い聞かせて、僕は明里さんの方をまっすぐ見て、今度こそしっかりと伝えた。
「僕は、彩香さんを選ぼうと思う」
第65話を読んでくださりありがとうございました。




