表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
64/73

第64話 迷った末に

第64話を読みに来ていただきありがとうございます。

 あれから六日経った。明日には、どっちを残すのか決めないといけない日だが、僕の中で答えはまだでていない。

 頭では分かっているのだ、彩香さんを選ぶべきだということを。でも、いざ彩香さんと決断しようとすると、明里さんと過ごした楽しかった思い出の数々や会話が頭をよぎり、そのたびに躊躇してしまう。僕は一体どうすればいいんだ。明日にはどちらにせよ、明里さんに会いに行かなくてはならない。その時に結局決まりませんでした、という結果だけはなんとしてでも避けたい。そんな結果は僕も明里さんも彩香さんも一番望んでいない結末だろう。

 このまま家の中で考え事をしていても息が詰まりそうだったので、外で散歩をしながら考えようと、僕は外に出る。


 八月の真っただ中なだけあって気温は高く、日差しはジリジリと肌を焼く。

 しばらく歩いていると偶然信也に出会った。


「おう、英一! なんか難しい顔しているけど考え事か?」

「あ、うん。なあ、信也なら好きな人と生きるべき理由がある人のうちどちらかしか助けられないとしたらどっちを選ぶ?」

「なんだそれ? ゲームの話か?」


 信也は少し前に、明里さんと彩香さんの二重人格のことを本人から聞かされていたのを知っている。だから言った瞬間明里さんと彩香さんのことを疑われるんじゃないかと心配したけど、どうやら大丈夫のようだ。

 まあ、そりゃ彼女たちが一つに戻るのに、それを僕が選ぶなんて普通考えないもんな。


「そうそう、久しぶりにやっていたらハマったんだけど、今言ったのと似たような選択肢が出てきたからちょっと考えていたってわけ」


 まあ、この方が自然だし、率直な意見を聞くのはこっちの方が良いだろうと思い、そのままゲームということにした。


「そうだな、そりゃ好きな子を生かすだろ。ゲームくらい好きなことハッピーエンド迎えたいじゃん」


 うん、だめだ。やっぱりゲームと現実では違いすぎる。僕だって明里さんと彩香さんがゲームの登場人物だったとして、今と同じ状況なら迷わず明里さんを選んでしまっているだろう。


「じゃあ、もし現実の出来事だったら?」


 あまり深入りしすぎて、明里さんと彩香さんのことを疑われるのも怖かったけど、それ以上に信也の考えを聞いてみたかった。


「それはお前、時と場合によるだろ。そんな状況があるとは思えないけどよ、もしあるなら」

「もしあるなら?」


 僕が聞いてみると「うーん、微妙。どっちを選んでも正解だと思うけどな」と答えた。


「どっちを選んでも正解?」


 僕は思わず聞き返してしまった。


「おう、生きるべき理由があるやつを選ぶのはまあ、おかしくはないだろうけどさ。かといって好きだからという理由で好きな子を選ぶっていうのが間違いではないだろ? 誰だって好きな人には長生きしてもらいたいものさ」

「うーん、確かに。ありがとう、参考になったよ」


 信也はその後、これから部活があるからと言ってそのまま走って行ってしまった。もしかすると急いでいたのかもしれない、立ち話させてしまって少し悪かったなと思った。

 けど、参考になった、確かに好きだからという理由で残すのは悪いことではない。僕はそう思うようになった。

 

 信也と会ったからか昨年のミニ旅行を思い出していた。そういえばもうすぐ一年くらいだな。あの時また来ようって皆で約束したけど、僕たちのクラスは夏期講習があるし、明里さんは入院しているしで、今年は行けなかったな……。

 でも一年前の僕に今の状況を教えても、きっと信じないだろう。まさか僕が残る方を選ぶなんて考えもしていなかった。

 そう言えば、ちょうどあの旅行の後くらいから奇妙な夢を見始めたんだったな。

 あの時は何であんな夢を見ていたのか、未だに分かっていない。けれど今思えば、毎回場面は違えど、必ず二人の女性と『選んで』という言葉は共通してあった。もしかしたら、最終的に僕が明里さんと彩香さんの残る方を選ぶという予知夢だったのかもしれない。

 そう考えれば考えるほど納得がいく。夢で何回も選択を迫られても、一度も僕は選んでいなかった。きっと、あの時から後で選択するときに苦労するということを示唆していたんじゃないかなと思う。

 まあ、今となっては確かめようがないからただの考察だけど。



 それからまた少し歩いていたら気温が高すぎてしんどくなってきたので、少し公園で休憩することにした。ついでにいろいろ考えたかったし。

 公園に着くと、夏休みだから子供が沢山遊んでいた。僕がベンチに腰かけていると、隣で親子の会話が聞こえた。


「ねえねえ、お母さんは千沙に将来何になって欲しい?」

「ん~? 千沙が元気に育ってくれたらお母さんは何になってくれも嬉しいわ」

「わかった! じゃあ千沙はこれからもずっと元気でいる!」


 そのまま、その子供は元気にどこかへ行ってしまった。きっと友達のところにでも行ったのだろう。

 微笑ましい光景で思わず笑みがこぼれてしまった。僕は両親との記憶は全くないけど、両親が亡くなる前はこうしてどこか遊びに連れて行ってもらったりしたのかな。

 おっと、いけない。自分のことを考えている暇はなかった。明日には答えなといけないのだから、早く考えなきゃ。



 あれから数時間経ち、夕方になった。あの後少ししてから帰宅したので、今は家にいる。

 いろいろ迷ったけどやっと決心がついた。この理由なら明里さんも彩香さんも、そして僕自身も納得いくだろう。散々迷って、迷って、迷いぬいた選択だ。もう後悔はない。

 明日、明里さんと彩香さんに僕の出した結論を伝えに行こう。

第64話を読んでくださりありがとうございました。

次回、ついに残る方が決まります。それが終わったら英一君自身のことと、あと少し真二のことも書いて完結という流れになるかなと思うのでもう少しだけお付き合いください。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ