第63話 タイムリミット
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富永さんの中に、明里さんと彩香さんはいつまでもいる、か……。
病院から帰宅し、自室のベッドの上に寝転びながら考え事をする。
明里さんの助言のおかげで、選ばなかった方が死ぬわけではないということは分かった。けどだとしてもどちらを選ぶべきなのだろう。
僕が残って欲しいと思っているのは、間違いなく明里さんだ。入学したころから、沢山の思い出があるし、何より一緒にいると落ち着ける。けど、だからと言って簡単に明里さんを選んでしまって良いのだろうか。主人格は彩香さんの方なんだ。彩香さんは彼女の父親が亡くなる前の生活に戻りたいという想いで、無意識のうちに明里さんを作り出してしまった。しかし彩香さん自身以前と比べると、明里さんと同じくらい明るい性格になってきている。だったら、その願いはもう明里さんでなくても彩香さん自身の努力で十分出来るのではと思ってしまう。だからそういう意味では彩香さんが残るべきだとは思う。
「はあ……」
思わずため息が漏れてしまう。
それでも、そう分かっていても、僕は明里さんのことが好きだから、明里さんに残って欲しいと思ってしまうんだよなあ……。僕のこの考えはおかしいのだろうか……。
翌日、僕は学校の夏期講習に来ている。僕のクラスは理系の特進なので、他とは違って、夏休みでもこうして授業に出席しなければならない。夏休みとは……。
窓の外を見ると、運動部らしき人がグラウンドでランニングをしている。こんなに暑いのに熱中症になったりしないのだろうかと思いながら、ぼーっと外を眺めている。
やがて、外を眺めるのも飽きてきたころ、僕はまた明里さんのことを考えていた。明里さんはまだ入院中なので今日も来ていないが、明里さんの席が空席であることに次第に慣れてきている自分がいる。
来月、夏休みが終わって通常授業に戻る頃には、あそこには明里さんか彩香さん、どちらか一人しか座れないんだな、なんてことを考えながら明里さんの席を眺めていた。
今日の夏期講習が終わり、僕は今日もまた、病院へ向かっている。これで三日連続だ。まあ、明里さん自身もやることがなくて暇だと嘆いていたし、嫌がられることはないだろうと考えながら向かっている。
病室に着くと、ちょうど明里さんが外に出ようとしていたところだった。
「ごめん、英一君、せっかく来てくれたのに、今から検査なの」
明里さんは両手を合わせそう言って謝る。
「ああ、いいよ。今日は伝えたいことがあって来ただけだから、それだけ言ってすぐ帰るよ」
「伝えたいこと?」
「ふう……」
一息入れてから話始める。
「昨日一晩考えたよ。僕で良いなら明里さんと彩香さん、どちらを残すか選ばせて欲しい」
「そう言ってくれると思っていたわ」
明里さんはふふっと笑ってそう言った。
「ただ、どちらを残すのかはもう少し考えさせてほしい、一週間以内に必ず決めるから」
一週間、恐らく彼女たちに残された時間を考えると、この期間くらいがタイムリミット、答えを出さないといけない時期だろう。でも、彼女たちは信頼して僕に任せてくれたんだ、どっちにするかはわからないけど、せめて責任をもって、一週間の間しっかり考えて答えを出したい。
「うん、待ってるね」
明里さんはそれだけ言い残して、検査室へと向って行った。
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