第62話 勘違い?
第62話を読みに来ていただきありがとうございます。
「……やっぱり断ろう」
昨日変な夢を見てから、一日中考えた。正直、彩香さんに『どちらが残って欲しいか選んで』と言われたとき、すぐには決められなかったけど、明里さんか彩香さん、どちらかを選ぶ、ただそれだけだと思っていた。
でも、違った。僕は選ばなかった方のことを全く考えていなかった。あの夢で見たものは多少過剰に表現されていたけど、あながち間違いではない。残る方を決めるというとこは逆に言えば、選ばなかった方を間接的に殺すということに僕は全く気付いていなかった。
いや、もしかしたら無意識のうちに考えないようにしていたのかもしれない。なんとなく分かってはいながらも、現実を見たくないから考えないようにしていた。だから選ばれなかった方がどうなるのかを伝えるために夢を見た。あの夢は慎重に選べという警告だったのかもしれない。
そのことを認識してから改めて考え直したけど、僕には選べそうにない。だから、明里さん達には申し訳ないけど、断るしかないのだ。
僕はそう決めて、断るなら早い方が良いと思い、すぐさま明里さん達が入院している病室に向かった。
病室に着くと、今日も暇そうにしていた明里さんが迎えてくれた。
「今日も来てくれたの? わざわざありがとう。病院にいると、やることなくて暇だから嬉しい」
明里さんは僕の方を見ると嬉しそうにそう言う。
「うん、今日はこの前の残って欲しい方を選ぶっていうやつで話したいことがあって」
「え、もう決めたの?」
「あ、違う違う。決めたわけじゃない」
驚きと同時に、顔が強張っていたのが見て取れたので、慌てて訂正する。
「実はね、その話断ろうと思って」
僕は意を決してそう言う。
それを聞くと同時に、明里さんは怪訝そうな表情をしながら「どうして?」と聞かれた。
「……僕には、選んだ後の責任を持てないよ」
歯を食いしばりながらそう答えた。
「責任? そんなものないよ? ただどっちが良いか選ぶだけ、どちらを選んでも問題ないからその後の責任なんて生じないわよ?」
「あるじゃないか!」
思わず大声が出てしまった。明里さんもびっくりしたのか、きょとんとしている。
「あ、ごめん……。つい、大声が出ちゃった……」
「何かあったの? 私でよければ話聞くよ?」
僕は明里さんの厚意に甘えて全てを話した。昨日夢を見たこと。その夢の中に明里さんと彩香さんがいて、今すぐどちらかを選んでと言われたこと。そしたら選んだ方が選ばなかった方を急にナイフで刺したこと。そして最後に、選ばなかった方から人殺しと言われたことなどを。
「そう、そんなことがあったのね……」
明里さんは最後まで黙って僕の話を聞いてくれた。
「うん……。僕選ばれなかった方のことなんて全然考えてなくて……。だからごめん、僕にはそんな残酷な選択は出来ないし、仮に選べてもその後の責任はとれない」
「そっか」
明里さんは怒りも悲しみもせず、ただ無表情にそう言った。
それから数分間の沈黙を挟んでから、明里さんは言葉を続けた。
「ありがとうね。今回のことだけじゃないけど、いつも真剣に私たちのことを考えてくれて。私も彩香もいつも英一君に感謝している」
明里さんはお礼を言った後、更に言葉を連ねた。
「そんな英一君が選べないと言うなら、もちろん無理に選べとは言わないわ。けど、一つ勘違いをしているようだから、これだけは覚えておいて」
明里さんは一息入れてから、また話し出す。
「さっき、英一君は選ばなかった方のことを考えると責任を持てないから選べないと言ったけど、それは大きな間違いよ。別に選ばれなかったからって、死ぬわけじゃないわ。そりゃ、もちろん表に出てくることはなくなるけどさ、それでも私、『富永』の中に私たち『明里』と『彩香』はいつまでもいるわよ。何なら英一君が忘れない限り、英一君の中にも私たちは残り続ける。だからそんなに気負わないで、気楽に考えて」
僕はそのことについて何を言えばいいかわからず、何も発せないでいると。明里さんは更に続けて言った。
「まだ時間はあるから、今のことを頭に置きながらもう一度考えてみてくれない? それでも選べないという結論に至っても責めはしないから」
第62話を読んでいただきありがとうございました。
ようやく、どちらを残すのか選択するところまで来ました。実はこの小説書き始めた段階で、どちらを残すのかはある程度は考えていたので、やっとそこを書けるという心情です。




