第60話 選択の時?
第60話を読みに来てくださりありがとうございます。
うーん……。ここはどこだろう。見覚えのないところだ。
昨日確か、彩香さんに最後明里さんと彩香さん、どっちが残って欲しいか選んで、と言われたところまでは覚えている。けれどその後の記憶がない。もしかして、真二が出てきたりしたのかな? そうだとその後の記憶がないの頷けるけど。
「英一君」
不意に後ろから僕を呼ぶ声が聞こえる。声のする方を向いてみると一瞬目を疑う光景がそこにはあった。
「ど、どうして明里さんと彩香さんが別の体にいるの?」
そこには、明里さんと彩香さん、それぞれが入っている二人の富永さんが僕の前に立っていた。
「よくわからないけど、朝起きたらこうなっていたの」
「え、どういうこと……」
「私たちにもよくわかっていないの、ほんと気付いたら二人に分離してて……」
明里さんも彩香さんも首をかしげながら不思議そうにそう言う。
でも、少し安堵した。明里さんと彩香さんのどちらを選ぶか決めるなんて正直したくなかったからだ。
「でも良かったよ、これで僕が選ぶことなく二人とも生きていけるね!」
僕が喜んでそう言うと、二人は残念そうにかぶりを振った。
「残念ながら、そんなに都合よくいかないわ。二人が別々の体でいられるのはあとほんの少し、時間が来ると再び一つの体に戻って、そのときは人格も統一されてる」
「そんな……」
僕はがっくりと肩を落として項垂れる。
せっかく選ばなくても済むと思ったのに、結局選ばなくてはならないのか……。
しかし、その時一つの疑問が生じた。
「でも、どうしてそうなるってわかるの?」
僕が聞くと、彼女たちは少し考え込んでから答えた。
「うーん、どうしてと言われると困るんだけど、強いて言うならなんとなく、かしら」
なんとなく……。何か根拠がある訳じゃないのか。でも恐らく彼女たちがそう言っているなら間違いないんだろう。しかしどちらを選ぶべきなのか……。
「ねえ」
「あ、ごめん。どうかした?」
一度考えるのをやめ、彼女たちの方に耳を傾ける。
「今選んで」
「えっ、今何て?」
はっきり聞こえていたが、驚きのあまり、聞き返してしまう。
「今選んで欲しいの、私たちの体が一つに戻る前に」
当然聞き間違いではなかった。明里さん達は今選んで欲しいと言っている。
明里さんを残すのか、彩香さんを残すのか。こんなに短時間で決められるだろうか。いや、そんなすぐに決められるはずがない。僕にも心の整理と準備は必要だ。なので、もう少し待って貰うように明里さん達に言おうとした次の瞬間、僕の口は僕の意志を反して勝手に動いていた。
「じゃあ、明里さんで」
第60話を読んでいただき、ありがとうございました。




