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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第59話 明里、彩香のお願い

第59話を読みに来ていただきありがとうございます。

「実のところね、検査はもうほとんど終わっているの」

「そうなの? じゃあもうすぐ退院?」

「残念ながら、あと一ヵ月くらい続くわ」


 彩香さんはかぶりを振りながら答える。


「え、でも検査は終わったって」

「人格の統一化」


 僕はその言葉を聞いて全て理解した。段々早くなってきていたけどもう、すぐそこなのか。つまり、人格の統一化が近くまで迫っているから検査は終わっているけど退院せずに、このまま様子を見るということなんだろう。


「記憶を取り戻して、私たちの二重人格のことが明確にわかったことで、状況が更に変化したわ。もともと、お父さんの事故がきっかけで、私の性格が暗くなって、元の生活に戻りたいと明里が誕生した。でも、記憶を失っている間に、英一さんや真二が私を外の世界に引きずりだすようになって、私の性格は再び元に戻りつつある」


 僕は息を呑んで彩香さんの話を聞く。


「以前は、私と明里の性格は全然違うものだったけど、徐々に同じような性格になってきているの。つまり、この調子なら私彩香のままでも元の生活に戻すことは十分できる。だからもう、こうなったら、一つの体の中に二人が住み着く意味はなくなったの」


 そこまで言い終わると、彩香さんは僕の目をまっすぐ見て、頬を緩めた。


「ありがとう英一さん、真二。あなたたちのおかげで、私たちはようやく一つに戻るときが来たの」

「……そっか、おめでとう!」


 ここは喜ぶべきところだ。明里さんも彩香さんも前から一つの人格に戻れることだけを望んで、今日まで生きてきたんだから。それがもうすぐ叶うんだ、僕も喜んであげないと。


「そうか、いよいよ一つに戻れる時が来たんだね。いつ頃になるの? さっきの明里さんの様子からしてやっぱり彩香さんが残るの?」


 僕が無理やり笑顔を作って聞くと、意外にも彩香さんは首を縦には振らなかった。


「実はそのことで、英一君にお願いがあるの」

「お願い?」

「ええ。実はね、私たちどちらが残るのかまだ決まっていないの。お医者さん曰く、もともとはあのとき、明里を作り出して、最後には明里を残すよう準備が進められていたから、今となっては私でも明里でも、私たち次第でどちらを残すことも出来るんだって。より厳密に言えば、最後に残りたいという強い思いを持っている方が残るだろうって言ってた」


 彩香さんは僕の返答を待たずにさらに続ける。


「それでね、私たち二人でどちらが残るか相談したの」

「う、うん。それでどういう結論が出たの?」


 僕は恐る恐る聞いてみた。


「結論は出なかったわ」


 彩香さんは視線を空虚に投げてそう言った。


「じゃあ、どうするの?」

「そこで、英一さんにお願いがあるの。どちらが残るべきか選んでくれない? 今の私たちがいるのは間違いなく英一さんのおかげ。だから、あなたに選んで欲しい。主人格だからという理由で私を選ぼうが、明里が好きだからという理由で明里を選ぼうが、どんな理由で誰を選ぼうが文句はないという結論に至ったの」

第59話を読んでいただきありあとうございました。


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