第58話 残るべき人格
第58話を読みに来ていただきありがとうございます。
「ところで、今日は何の用事で呼んだの?」
「ああ、そうだった、雑談に夢中になって、肝心な話をするのを忘れてたわ」
いろいろ雑談している間に、不自然な入れ替わりで彩香さんになり、またそこからもう一度入れ替わって、今出ている明里さんが答える。
「今日呼んだのはね、私たちのこれからについて話そうと思って」
「明里さん達のこれから?」
一瞬で空気が変わる。真剣な話をしようとしていることを肌で感じる。
「うん。まず、英一君は私と彩香、どちらに残って欲しい?」
「そりゃ僕は明里さんに残って欲しいよ。もっと明里さんと沢山楽しいことをしたいしね」
僕は、迷わずそう答える。決して彩香さんが嫌いなわけではない。それでも一緒にいて楽しいのは明里さんの方だ。もっと明里さんと沢山の思い出を作っていきたいと思っている。
「そっか、じゃあもし、好きとか一緒にいたいとかそういう感情抜きにしたらどっちが残るべきだと思う?」
「まあ彩香さんかな。一応主人格は彩香さんらしいからね」
どうしてそんなことを聞くのか分からなかったけど、僕は少し考えた後、そう答えた。
もともとは明里さんに近い性格だったらしいけど、性格が変化しただけで、彩香さん本人だし、残るべきなのは彩香さんなんじゃないかなと僕はそのように考えている。まあ、それでも残って欲しいのは明里さんなんだけど。我ながら矛盾しているなと思わず笑いそうになる。
しかし、笑っている余裕なんてなかった。明里さんの表情が見るからに暗くなった。
「そう、よね……。主人格は彩香の方だもんね……」
選択を間違えたかな。ここは嘘でも明里さんと言っておくべきだっただろうか。でも、この会話は彩香さんも共有している。ここで明里さんと言ったら、結局彩香さんがしょんぼりしてしまうし、正直に言うしかなかったのかな。
「うん、わかった。私から聞きたかったのはそれだけ」
あからさまな作り笑顔を見せてそう言った。
それからお互い無言になって、気まずかったので良い時間だし、帰ることを明里さんに伝え、病室をあとにしようとしたが、呼び止められる。
「待って」
しかし、僕を呼びとめたのは明里さんではなく、彩香さんだった。たった一言しか発していないけど、最近は微妙な音色とイントネーションの違いで、今どちらが出ているのかすぐにわかるようになってきていた。
「えっと、また不自然な入れ替わり?」
「いや、今回は私の意志で出てきたの」
首を横に振りながら彩香さんはそう話す。
「ということは、何かまだ話が?」
「うん、多分このままだと明里が自ら消える選択をすると思うから」
彩香さんが悲しそうな表情を浮かべながらそう言った。
「どういうこと?」
「まあ、すぐにどうこうなる訳ではないから、いったん落ち着いて。順を追って話すから」
そう言いながら、彩香さんは話し始めた。
第58話を読んでいただき、ありがとうございました。
余談ですけど、なぜこの小説をR15に設定しているのか、そろそろわかると思います。




