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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第57話 花

第57話を読みに来ていただきありがとうございます。

 病院に着き、明里さん彩香さんがいる入院病棟へ到着する。

 ノックして病室へ入ると、暇そうにしていた明里さんがいた。


「あ、やっと来てくれた」

「やっと来たって、言われた通りの時間に来たよ」

「時間通りに来れば良いわけじゃないの」


 じゃあどうすれば良いんだよ、と思ったが言うのをやめた。代りに買ってきた花を差し出す。


「はい、これお見舞いの花」


 それを受け取った明里さんは笑みをこぼす。


「ありがとう、これはスイートピーね。花言葉は確か『門出』だったかしら」

「物知りだね、そういえば前にガーベラ持って行った時も花言葉知っていたみたいだったけど、どうしてそんなに花に詳しいの?」


 僕が持ってきた花を花瓶に入れながら聞いてみると、明里さんは不思議そうな顔をして答えてくれた。


「あれ、言ってなかったかしら。私のお母さんお花屋さんの店員なのよ」

「え、そうなの?」


 それは初耳だ。でもそれなら、明里さんが花に詳しいのも納得だ。


「えへへ、嘘」

「え?」

「冗談、お母さんはお花屋さんの店員じゃないわよ」


 明里さんがニヤニヤ笑っている。


「えー、じゃあどうして詳しいの?」

「知りたい?」

「かなり」

「いいわ、どうせ暇だし、教えてあげる」


 そう言って、明里さんは語りだした。


「私はそんなにお花のこと好きじゃないけどね、お母さんが大好きなのよ。私はあまり覚えていないけれど、私が生まれる前も、生まれた後も、よくお父さんとフラワー園に行っていたらしいわね。そんなだから、お父さんがお母さんにプロポーズするときにガーベラを百本贈ったらしいわよ」

「そういえば、本数毎に花言葉があるって言っていたね。百本だとどんな意味があるの?」

「何だと思う?」


 質問を質問で返された。僕は少し考えてから、百本も渡してプロポーズする言葉から想定して「生涯、あなたを愛することを誓いますとか?」と答えた。

 すると、「惜しい! それは四十本の花言葉だよ」と言われた。

 それじゃあ、百本は何か聞くと「百本は『私と結婚してください』って意味があるのよ」そう言われて思わず吹き出してしまった。


「なんだ、そのまんまじゃん」

「でしょでしょ、私も初めて聞かされた時同じこと思った」

 

 僕と明里さんは、おかしくて二人で笑い合った。


「それでよく、花言葉とか聞かされていたから私も詳しくなっていったのよ」

「なるほど、でもどうしてそんなに花が好きなのに、花屋にはならなかったの?」


 疑問に思ったので聞いてみる。


「私も詳しくは知らないけど、大好きなものを仕事にしたくなかったんですって。ほら、仕事すると、どうしてもストレスとか溜まるでしょ? 大好きな花を、大好きな物として見られなくなるかもしれないことが嫌だったって言っていたわ」

「なるほど、確かにそれは嫌だね」


 好きな物を仕事にしないと続かないとか、どこかで読んだことがあるけど、それを聞いた後だと、好きな物を仕事にするのも善し悪しなんだなと思った。


「そういえば、英一君は進路選択の時、結構迷っていたみたいだけど、どうして理系の特進にしたの? 何かやりたいことでも出来た?」


 思わず胸がドキッとした。僕が、理系の特進を選んだのは結局明里さんがいるからだけど、そんなこと本人の前で言えるはずもない。


「黙ってどうしたの?」

「えっと、言わなくちゃダメかな?」

「うん、やりたいことくらい教えてよ」

「明里さんがいるから選んだんだ」


 とっさに嘘を考えたが思いつかず、正直に言えばどういう反応をするのか気になったので本当のことを話してみる。


「えっ」


 明里さんの顔がみるみる紅潮していく。


「もっと、明里さんとの時間を大切にしたかったから、理系の特進を選んだんだよ」


 明里さんはついに顔を真っ赤にして何も言わなくなってしまった。


「なんてね、嘘だよ」


 本当は嘘ではないが、僕も恥ずかしいし、この空気に耐えられなかったのでそう言った。そうすると今度は別の意味で明里さんの顔が赤くなる。


「もー! 一瞬信じて顔赤くなっちゃったじゃない! さっきのときめきどうしてくれるのよ!」

「知らないね、いつも僕をからかってくるお返しだよ」


 そう言うと、明里さんは頬を大きく膨らませながらそっぽを向いてしまった。

 その後、機嫌を損ねた明里さんを元に戻すのにかなり手間どった。

第57話を読んでいただきありがとうございました。

今日でこの小説はついに、最初に目標にしていた10万字を超えました。これもいつも読んでくださる方々のおかげだと感謝しております。



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