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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
54/73

第54話 真相2

第54話を読みに来ていただきありがとうございます。


 三十分ほど経って、明里さんはようやく落ち着いてきた。


「ごめんね、取り乱しちゃって」


 申し訳なさそうにそう言う。


「大丈夫、辛い過去を話しているんだから気が動転するのは当たり前だよ。時間はいっぱいあるし、ゆっくり、明里さんのペースで話していいよ」

「うん、もう大丈夫。続き話すね」


 それから明里さんはまた続きを話し始めた。


「その後、自分のせいだと、自分自身を責めすぎた結果、自分でもびっくりするくらい性格が暗くなっていったわ。今だからわかる、これは『人格の変化』ではなくて『性格の変化』よ」


 性格の変化……。つまり、明里さんから彩香さんへと人格が代ったのではなくて、もともとは明るかった彩香さんはそれがきっかけで暗い性格へと変わったということか。


「それからもずっと自分を責め続けて、次第に口数も減って、誰とも話せなくなり、ある日とうとう自分の中で限界が来たわ。このまま自分を責め続ければ、精神が崩壊すると本能で理解したの。

 それで、どうやったのかは覚えてないけど、以前のような生活が出来るように、以前の自分に限りなく近い性格の明里、つまり私を作り出した。その後父親の記憶と映画を観に行った日からその日までの記憶を全て消して、何事もなかったかのように、元の生活に戻れるように操作した」

 

 明里さんはコーヒーを一口飲み、更に付け加えた。


「これが全てよ。もう言うまでもないと思うけど、主人格は彩香、私は彩香の精神を守るために生まれた副人格だったのよ」

「……」


 僕は何も答えられなかった。

 でもそっか、主人格は彩香さんだったのか。

 以前、僕は彼女の二重人格についていくつか仮説を立てたことがあるけど、そのうちの一つ。


『もともと明るい性格だった彩香さんは事故が原因で、性格の変化で暗くなった。その後このまま暗い性格だと友達も出来ずに寂しい思いをすることになるので明里さんという人格を作りだした』


 結局のところ、僕が立てた仮説の中に正解があったのか。

 でもおかしい、何かがひっかかる。何か根本的に僕の二重人格とは何かが違うような……。


「英一君」

「ん? どうかした?」


 僕の思考を明里さんが遮る。


「あのね、最後まで聞いてくれてありがとうね」

「うん、辛いことなのによく頑張ったね、お疲れ様」


 ほんと、記憶を消さないとやっていけないくらい辛いことだったはずなのに、逃げずに最後まで話しきれたのは凄いことだと思う。逆の立場なら僕はそれが出来ただろうか。僕なら途中で逃げていたかもしれない……。


「ありがとう。英一君のおかげで前に進める気がするよ。過去は変えられないけど、未来を精一杯生きるね」


 そう言って、明里さんは笑っている。久しぶりに明里さんの笑顔を見れた気がする。きっと、記憶を取り戻す前以来だ。




 明里さんとの話し合いが終わり、家に帰った。

 夕食を終え、ベッドに寝転がりながら考え事をしている。

 そういえば、結局どっちが残るのか聞くのを忘れていた。記憶を取り戻して、彩香さんが主人格だということは分かったけど、そうなるとやはり彩香さんが残るのかな。

 けど、どうなんだろう。ちょっと彼女たちと僕らの二重人格は似ているようで少し違うからどうなるかは僕にもわからない。

 彼女たちの真相を聞いて、抱いた違和感が少し前に何だったのかが分かった。それは人格の誕生の仕方だったんだ。

 僕の場合は両親を亡くし、それに耐えられなかった僕は、無意識のうちに真二を作り出したのかはわからないけど、とにかく真二が誕生することになる。負の部分は全て真二が請け負い、僕の中から両親の記憶を消された。そして、真二が持っている記憶を僕が見れたら意味がないので、真二の記憶は僕からは共有できなくされた。これらは全て真二がやったことだ。

 しかし、彼女たちはそうじゃない。父親のことについて耐えられなくなった彩香さんは明里さんを作り出した。ここまでは僕らと同じだろう。しかし、明里さんと彩香さん、両方から記憶を消した。しかもそれをしたのは明里さんではなく彩香さんのようだった。二人が記憶を共有しているのは、両方から辛い記憶が消えていて、共有することに不都合がないからなんだろう。でもなぜそれらをしたのは明里さんではなく彩香さんなのだろう。

 確かあのとき明里さんは『以前のような生活が出来るように、以前の自分に限りなく近い性格の明里を作った』と言っていた。

 そういえば、昔彩香さんはずっと明里さんを出していて、彩香さん自身はほとんど出てくることはなかったと言っていたな。もしかして、彩香さんが明里さんを作ったのは彩香さんの精神を守る目的ではなくて、主人格を明里さんにしようとしていたのか? だとしたら全てに納得がいく。

 とにかくこのままじゃすっきりしないし、明日またあの喫茶店で彩香さんから話を聞いてみよう。

 そう思い、明里さんにそのことをメールで伝え、この日は就寝した。

第54話を読んでいただきありがとうございました。

だいぶ富永さんの過去が明らかになってきました。主人公の佐々岡君の過去はそこまで重要ではないので書かなくてもいいのですが、まあもしかしたら気になる方もいるかもしれないので、どこかで書きます。



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