第53話 真相1
第53話を読みに来ていただきありがとうございます。
あれから一ヵ月が経ち、七月に入った。今日は明里さんが大切な話があると言われ、僕たちの行きつけの場である喫茶店に来ている。
僕がそこに到着すると、既に明里さんは来ており、怖い表情をして座っていた。
「ごめん、待った?」
「私も今来たばかりだから大丈夫よ」
どうやら、僕が遅れたことに怒っているわけではなさそうだ。
「それで、今日呼んだのは?」
「うん、話そうかなと思って」
彼女は顔を強張らせながらそう言う。
やはり、その話か。
「いいのかい?」
「うん、くよくよしたって過去は変えられないし、前を向こうと思って。その前を向く第一歩として、英一君に聞いてほしいの」
明里さんは決意に満ちた表情を浮かべてそう言う。
「明里さんは強いね。わかった、聞くよ」
明里さんが、決心して辛い過去を話そうとしている。それならばしっかり聞いてあげなければならない。僕はこれまでにないくらい意識を彼女の方へ向け、話を聞いた。
「えーと、私の昔のことをどこまで知っているのか分からないから知っている部分もあると思うけど全部話すね」
「うん、わかった」
「私は昔物凄く明るい性格だったの。何をするにもポジティブで、多分昔の知り合いが今の私たちを見たら驚くほどにね」
明里さんは一息入れてさらに続ける。
「あの頃は毎日が楽しかった。ずっとこの幸せな日々が続くものだと信じてたの。けど、そうはならなかった」
明里さんの表情が暗くなる。ここから恐らくトラウマとなった出来事を話すのだろう。
なかなか続きを話さないまま、数分が経過した。
「大丈夫? とりあえずコーヒー飲んで落ち着きなよ」
「うん」と言って、カップに入っていたホットコーヒーを一気に飲み干してしまった。
「大丈夫、続けるわよ」
それから、彼女たちに起きた出来事をゆっくり聞いてあげた。
以前彼女の母親から聞いた通り、ある日四十度の熱を出して入院した。一日経ったとき熱は引いて、もう問題ないところまで回復した。しかしその時父親が病院に向かう途中に事故に遭って亡くなったと聞かされたらしい。
ここまでは前に母親から聞いたことと同じだったが、どうやらこの話の問題点はそこではなく、それ以前にあったようだ。
なんでも、彼女が熱を出す前日、家族三人で映画を観に行ったらしい。当日、朝から体調が悪かったにもかかわらず、どうしてもその映画が見たかったから、体調が悪いのを隠し、無理して観に行った。その結果、夜くらいから体調が更に悪化して、徐々に体温が上がっていき、高熱となったらしい。
たった一本の映画を見るためだけに、体調不良を隠して出かけ、結果として高熱を出して入院し、そのお見舞いに向かった父親を亡くしてしまった。
自分があのとき、しんどいからと言って映画を別の日に観に行けていたら、こんなことにはならなかったのに。全て自分の責任だと、私がお父さんを殺したようなものだ、と彼女ははらはらと涙を落としながらそう語った。
そのことを彼女の母親が教えてくれなかったのは、どうやら母親にさえもそのことは言えていないらしい。本当に一人で責任を感じてずっと、苦しんでいたようだ。
明里さんは今も取り乱して、泣いている。そんな彼女を見ながら僕は背中をさすって慰めてあげることしか出来なかった。
第53話を読んでいただき、ありがとうございました。
今日で10月も終わりですね。徐々に寒くなってきていますし、皆さん風邪をひかないようにお気を付けください。




